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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
八話「深淵を覗くものの代償」

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部活とサークル

「そう言えば姉さんはなんか部活とかやってないんですか?」


「大学の場合はサークルじゃない?でも何かやってないんですか?」


急に話を振られたことで真理は少し目を丸くしていたが、部活という共通の話題に彼女も入ることができるはずだ。


なにせ大学と言えばそれぞれいろんな活動がされている。それも高校とは違う規模や内容のものが多いだろう。


大学というものを知らない康太たちにとって彼女の私生活がどのようなものなのか気になるのも仕方のないことだろう。


「私は一応サークルには参加していませんよ。今は学業やこの生活でいろんな意味で精いっぱいでして」


「え~もったいない・・・何かやればいいのに」


「そうですよ、姉さん運動神経良いんだし何かやればすぐに上達しますよ」


康太のいうように真理の身体能力はそれなり以上に高い。小百合と本気で渡り合えるくらいの反応速度と技術を持っていることから康太よりも高い身体能力を有しているのではないかと思えるほどだ。


そんな彼女が何もサークルに参加していないというのはかなりもったいないように思えてしまう。


「んー・・・私としては今の生活に満足していますし・・・あ・・・ですが一応水泳などは昔からやっているんですよ?」


「水泳ですか・・・どのくらい泳げるんです?」


「えっと・・・一応スイミングスクールでそれなりに。一時期は選手候補にまでなったことがあるんですよ?」


「へぇ・・・それってすごいじゃないですか。何で辞めちゃったんですか?」


「いえやめたわけではないんですけど・・・そういえば最近泳いでいませんね・・・今度行ってきましょうか」


水泳というと夏しかできない印象があるかもしれないが、現代においては屋内プールというものも多く設置されている。


選手用のプールという形で練習がいつでも行えるようにしているために季節を選ばずに日々泳ぐことも可能だ。


もっともきちんとした体調管理をしないと風邪をひくこと請け合いだが。


「どうせならお二人も行きませんか?せっかく夏なわけですし。近くにプールもありますし」


「いいんですか?でも姉さんの邪魔になるんじゃ」


「遊びに邪魔も何もありませんよ。それに二人には私の華麗な泳ぎを一度見せてあげたくて」


その言葉に二人は『あぁなるほど、自慢したいんだな』と真理の心情を半ば察していた。


真理は普段からしてなかなか常識人だし知識も実力もあるが、魔術以外の所を褒められているところはあまり見ない。


というか康太と一緒にいる時の彼女は基本的に魔術師としてのそれであるためにそれ以外の褒めようがないのだ。


彼女だっていっぱしの女性だ、魔術以外のところでほめられたいことだってあるだろう。


「でもひとまずは試験に集中しなきゃですね・・・こちらはまだ試験中なので遊びの話はまた今度になりそうです」


「あ・・・すいません。ちなみにどんなことやってるんですか?」


「見ても分からないと思いますけど・・・はいどうぞ」


康太と文は真理が使っていたテキストを覗き見る。そこには何を書いているのか、何について書いているのか全く分からない専門用語と理論の羅列が並んでいた。


恐らくわかりやすいように書かれているのだろうがその内容のほとんどを康太たちは理解することができなかった。


「うっわ・・・理系の人ってこれをやるのか・・・自信なくすな・・・」


「ほんと・・・私実は文系だったのかしら・・・」


「専門科目をいきなり理解しろというのが無理な話ですよ。こういうのは段階を踏んで理解していかなければならないんです。足し算もやっていない子供に掛け算を理解しろと言っているようなものです」


文系のそれと違って理系の知識や考え方は積み重ねることによってその深みを増していく。


習ってきた基礎的な数式、そして法則を次々に応用していくことで専門科目の深みへと到達していくのだ。


今の康太たちはまだ基礎的な事柄を頭の中に入れている段階だ。そんな段階で今真理が覚えているような専門科目に手を出そうとしたところで理解など到底及ぶはずがない。


「私の私見ですが康太君は文系、文さんは理系のように思えますね。どちらが良いか悪いかという事ではなく自分のあっている方向に進むのが一番ですよ」


「そうなんですか?ちなみにその見分け方は?」


「・・・私の勘です」


真理の言葉にまるで小百合のような事を言うのだなと康太は複雑な表情をしたが、小百合のそれと違って真理の言葉には妙な説得力があるのは何故だろうか。


やはり人によって言葉の意味合いと印象は大きく異なるという事だろう。


そんなことを思いながら小百合の方を見ると、何を見ているんだ文句でもあるのかと言わんばかりに睨まれた。


何故この人はこんなに攻撃的なのかと康太はため息をついてしまう。


自分の文系理系はさておき、康太としてはこれから始まる夏休みのことについて考えを巡らせることの方が優先される。


高校にはいってからの初めての夏休み。そして魔術師になってからの初めての夏休みだ。心躍り、同時に非常に怖くもある。


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