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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
七話「破壊の源を与えたものたち」

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三連休は終わり

「それでは師匠、幸彦兄さん、また今度」


「えぇ、貴女も風邪とか引かないように気を付けなさい?帰ったら電話の一つもしなさいよ?」


「わかっています、向こうに戻ったら一報入れましょう」


玄関先で当たり障りのない挨拶を終えた小百合はそう言いながら早々に運転席へと座っていく。本当に早く帰りたいんだなと思いながら康太と真理はその様子を眺めていた。


「智代さん、幸彦さん、また今度」


「お世話になりました。また休みになったら顔を出しに来ます」


「えぇ、いつでもいらっしゃい。康太君も真理ちゃんも体には気を付けてね」


「時々だけど店の方に顔を出すよ。奏姉さんのことで何かあったら連絡してくれ」


「ありがとうございます。その時は頼りにさせてもらいますね」


智代と幸彦の言葉に康太と真理は小さく安堵しながらそれぞれ小さく笑みを浮かべた。


康太と真理の手に触れた後、智代は笑みを浮かべて車の方に意識を向ける。運転席では小百合が既にエンジンを温めて康太と真理を待っていた。そしてその視線は時折智代の方に向いている。


「本当にあの子はもう・・・相変わらずなんだから」


「え?」


「なんでもないわ、ほら、あなたたちの師匠が待ってるわよ?」


智代にそう言われ康太と真理は一度礼をしてから小百合の待つ車の方に駆けていった。


「乗ったな、それじゃあ行くぞ」


「はい、大丈夫です」


康太と真理は後部座席に乗り込むと智代と幸彦のいる玄関の方に視線を向けてから手を振る。


二人もそれに応えそれぞれ笑みを浮かべながら手を振っていた。


小百合はミラー越しにその二人の様子を確認すると小さく目を伏せるように会釈してから車を発進させた。


智代の家から出た車は早々に道を走り出し、この三日間の終わりを告げていた。


「本当に相変わらず素直じゃないわねあの子は」


三人を乗せた車が見えなくなった後、智代はつぶやくようにそう言いながらため息をついていた。


昔から変わっていない。体は大きくなっても性格自体は全く変わっていない。嬉しくもあり残念でもある。何とも不思議な感覚だった。


「ははは、あれがさーちゃんの可愛いところなんですよ」


「あの子もいい歳でしょうに、もう少し大人の対応ができないものかしら。あれじゃ真理ちゃんと康太君が可哀そうよ」


「まぁあの子たちも結構慣れてる感じありますけどね。さーちゃんもしっかりお師匠様してるってことでしょう」


「幸彦、貴方はいろいろ甘すぎよ。それに早く弟子の一人でも取りなさい。いつまでのらりくらりしているつもり?」


「う・・・それはまぁいいじゃないですか・・・」


小百合たちがいなくなった後、智代と幸彦は家の中に戻りながらそんな話をしていた。


昔話に花を咲かせながら、現状の不満や改善点などを告げながら、そして小百合たちのこれからに不安や期待を芽生えさせながら。


一方康太たちは智代に持たされた土産物などを見ながらこの三日間の濃い時間を思い返していた。


三日間とはいえ出会った人ややったことはかなり多い。一体どれくらいこうしていたのかわからなくなるほどに。


「師匠、飲み物買いたいんでコンビニ寄ってもらっていいですか?」


「あぁわかった。ついでにトイレなども済ませておけ、また車でずっと走るんだ」


「あぁ・・・もう三連休終わりか・・・短かったなぁ・・・」


「まぁ実際全然休んでませんしね、そう思うのも仕方ないですよ」


去年までの連休ならそれこそほとんどを遊んですごしただろうに、今の康太たちはほとんど休まずに行動し続けていた。


良いことなのかどうかは判断できないが、濃密すぎる時間は体感時間を短くしてしまうものなのである。


休みというよりも仕事を終えた後の様な倦怠感が康太を襲っていた。


「明日からまた学校か・・・気が滅入る・・・」


「でももうすぐ夏休みじゃないですか、その前にテストもありますよ?」


「あー・・・!そうだった・・・文に勉強見てもらわなきゃ・・・」


「真理、お前はどうなんだ?大学でも試験があるだろう」


「問題ないです、あらかじめ勉強は済ませてありますから」


康太たちは魔術師といえど学生だ。学期末には当然のようにテストが存在する。その宿命からは逃れられないのである。


魔術師という事を盾にして回避することはできそうにない。もしかしたら他の人間にはできないようなカンニングができるかもしれないが、生憎康太はそう言った魔術をまだ覚えていなかった。


「一応言っておくが、補習などはないようにしろよ?夏休みになったらいろいろと鍛えてやるからな」


「わかってますよ・・・ていうか俺も夏には部活の大会とかあるんでその時は外してくださいよ?」


さすがに康太も数回しかない部活の大会をさぼるつもりはない。大会に参加して自分がどのような時間を過ごしたのか確認したいというのもある。


七月の三連休が過ぎ、テストを終えれば夏休み。学生にとって長く楽しみでありあっという間に終わる長期休暇だ。


待ち遠しいと同時に康太はこの三日間のことを思い返していた。我ながら濃密な時間を過ごしたものだと思いながら。


日曜日なので二回投稿なんですけど話をまたいでしまったので二分割


これからもお楽しみいただければ幸いです

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― 新着の感想 ―
中学ん時陸上部だったけど無駄に記録会があった気がする。長い距離をちょうどいいペースで走り続けるは嫌いじゃないけどタイム測るために死ぬ気で走るのは嫌いだったから大会って聞いてやる気出るの羨ましいな。マジ…
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