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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
七話「破壊の源を与えたものたち」
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コネの力

「でも実際今師匠ってフリーターなわけでしょ?ってことは一日中暇なんですか?」


「暇なものか、働かなくていい分他にやることはいくらでもある。最近は資格を取ることが趣味になっているな」


働く気はないというのに資格を取って一体どうするのだろうかと康太と文は疑問に思っていたが、ある種の自己研鑽というのは小百合の趣味であるらしい。


魔術師というのは誰かに強制されてなるものではない。その為自らを高めることに喜びを感じるような人種でなければ上に行くことはできない。


そう言う意味では康太も文も小百合も真理も、共通して自己研鑽という形での努力が好きな人間なのだ。


「資格って・・・例えば?」


「税理士調理師、後経理関係もいくつかとっているな・・・運転免許もほとんどとった。あと取っていないのは大型船舶くらいか・・・これでもかなり資格に関しては詳しいぞ。なにせ師匠から叩き込まれたからな」


恐らく小百合の師匠も資格を取ることを半ば趣味のようにしていたのだろう。資格というのは所有していて困るものではない。その為あらゆる資格を保有していた方が後々有利になると考えたのだろう。


それが職に関係しないあたり本当に趣味と化しているが、それは言わない方がいいのだろうか。


「でもそれなのに学校の勉強は教えられないんですか?なんか得意な科目とかは?」


「社会に出て役に立たん勉強など何の意味がある。あれは要領よく課題をこなす人間を選別するための作業のようなものだ。実際私は社会に出て学校の勉強などほとんど役に立たなかったぞ」


実際に役に立つのはコミュニケーション能力とその場の閃きだと言いながら吐き捨てるように茶を飲み干す。


今現在その勉強をやっている人間が目の前にいるというのになんという言い草だろうかと康太と文は眉をひそめてしまうが、実際社会に出ると必要になるのは人とのコミュニケーションだ。


どんな職場、どんな仕事だろうと人と関わらずに働ける場所などかなり限定的だ。ないと言ってもいいくらいである。


最低限の常識的な知識さえあればよほどの専門職でない限りは生きていける。小百合のいう通りただ単に要領のよい人間の厳選作業と言ってもいいだろう。


「でもそれじゃ大学行く意味なんてないじゃないですか、何のために大学行くんですか?」


「専門的な・・・理系の大学なら行く意味はあるだろうな。真理のように専門的な科目を教わるというのはなかなかできる事じゃない。文系に関してはほとんど意味はない。教育学部などは除きはっきり言ってあんなものは就職予備校のようなものだ」


学生として遊べる期間を延ばすための場所だなと言いながら小百合は笑っている。彼女が文系か理系かはわからないが随分な言いようだ。だが実際文系の大学が一体何をやっているのかなどイメージできない。


それこそ理系の専門学部や学科などであればその専門科目を徹底的に勉強するということでイメージもできる。


だが文系の学校が何をやっているのかはいまいちイメージできなかった。


「でもじゃあ何で大学なんてあるんですか?文系の大学って存在意義がかなり不明瞭ですよ?」


「そこは先にあげたように選別作業だ。どれだけ名の通った大学に行けて、そこを卒業できるか。今の社会はそう言った格付けを重視している節があるからな、何事にも順序を付けたがるんだよ」


順序、序列。


就職を経験したものならば聞いたことくらいはあるだろう『学歴フィルター』というのがまさにそれに当たる。


ある程度のレベル以上の大学を卒業している、あるいは卒業見込みの人間しか採用どころかある程度のラインまで面接を進める事すらしてくれないというものだ。


どの企業がどのレベルまでそれを行っているかは不明だが、学歴というのは案外正直なものなのだ。


今までどのような人生を送ってきたか、そしてどのような過程を踏んで今ここにいるのか大雑把ながら理解できてしまう。


レベルの高い学校に行っている人間はそれだけ努力してきた者で、レベルの低い学校を卒業したものは努力を怠ってきた者。


もちろんすべての人間がその枠にあてはまるわけではないが、多くの人間が就職を求める中である種の判断基準にはなってしまうのだ。


努力できる人間を会社は欲する。そしてその中でコミュニケーション能力があり、それなり以上に役に立ちそうな人間を選別するのが面接などの作業だ。


効率的に採用という行程を進めるためには学歴フィルターというものはなかなか理に適っているシステムなのである。


「お前達がどのような道に進みたいかはわからんが、とりあえずレベルの高い学校に行っておいて損はないだろうな。それができればある程度はその場のノリで何とかなるものだ。あとは個人的なかかわりを持つ人間を増やしておけ。コネは何よりも強いぞ」


コネで銀行に入社した人間が言うと重みが違うなと思いながら康太と文は勉強に向かっていた。


実際にこの勉強が社会に出て役に立つのではない。社会に出るために役に立つのだ。


そう考えると多少はやる気も出るというものである。


最後のコネ云々の話を聞いてだいぶやる気を削がれてしまったがそれはそれだ。

自分達は学生なのだから勉強しなければ。そう言い聞かせて康太と文は勉強に励むことにした。


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