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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二話「魔術師としての第一歩」
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術師名

「とりあえず魔術師としての登録を済ませるんですよね?術師名は決めてあるんですか?」


「問題ない、もう決めてある。」


ジョアに先導されながら小百合と康太は魔術協会の支部の中を歩いていた。扉をいくつか経由し、いくつかの廊下を歩きながら聞きなれない単語に康太は首をかしげている。


術師名


単純に考えるなら術師の名前という事だろうか。


「あの、術師名って何ですか?」


「・・・師匠・・・また勝手に決めたんですか・・・?」


「安心しろ、お前の時よりは頭をひねって考えた」


康太の反応にジョアは明らかに呆れたような声を出している。そして小さくため息を吐いた後康太の方を向いて説明をすることにしたようだった。


「えと、術師名とはその言葉の通り、術師の名を表すものです。私のジョアと同じように術師はこういう場では本名を名乗らず、術師名を名乗るのが普通なんですよ」


ジョアという名前が本名ではないということを知って康太は少し驚くが、それ以上にそんな話は全く聞いていなかった。


しかもさっき小百合はすでに決めてあると言っていた。一体どんな名前にされるのかわかったものではない。


「あの師匠・・・俺の名前っていったいどんなのになるんですか・・・?」


「安心しろ、私にしてはしっかり考えてやったぞ。こいつの器用貧乏よりずっとましな名前だ。」


器用貧乏


その言葉にジョアは大きくため息をつきながら小百合を睨んでいる。


「この名前・・・気に入ってるは気に入ってますけど・・・もうちょっと考えて付けてほしかったですよ。」


「気に入っているなら何よりだ、私もつけてやったかいがあるというものだ。」


二人の会話を聞きながら康太は不思議そうに二人を眺めている。だが一つ気になることがあった。この女性が器用貧乏とはどういう意味だろうか。


「あの、何でジョアが器用貧乏なんですか?」


「ん・・・こいつを育てていた時、こいつはいろんなことができるとわかってな。名前を考えている時に器用貧乏という言葉を思いついた。そしてその英訳を名前にしたんだよ」


器用貧乏、英語に直すとJack of all trades and master of none


それぞれの単語の頭文字をとってJOA・T・AMON。なるほど器用貧乏のまんまという事である。


名前をそのまま英語で表すというあたりどういうセンスだと言いたくなるが、それなりに名前っぽくなっているだけに性質が悪い。


「最初その名前を受け取った時は嬉しかったんだけどね・・・その名前の意味を聞いたときはもう愕然としましたよ・・・」


「それは・・・その・・・ご愁傷様です・・・」


ジョアの落胆ぶりに康太は見ていられなくて何とか慰めようとするのだが、彼女の落ち込みぶりは半端ではなかった。一見まともそうな名前だけにその衝撃は大きかっただろう。


康太だって器用貧乏なんて名前をつけられたらさすがにへこむ。


「・・・師匠・・・もしかしてポンコツとかそんな名前はつけませんよね?」


「当たり前だ、お前は私をなんだと思っている?弟子にそんなひどい名前を付けるはずがないだろう?」


器用貧乏なんて名前を付けた人間が言ってもまるで説得力がないなと思いながら康太はジョアの方を向いていた。そしてジョアも何か思うところがあったのか康太の方を向いている。


そしてジョアは何かを思いついたのか、メモを取り出して何かを書き始める。


「ここに私の連絡先が書いてあります。もしこの人が大変なことをしでかしたらすぐに私に連絡してください。兄弟子として力になります」


そう言って連絡先を渡されると、康太はこの人は本当にまともな人なのだなと実感し、何より自分を助けてくれるつもりなのだと思い感極まってしまった。


こんな破天荒な人の弟子だからどんな人なのかと心配していたが、予想を上回るまともさに少しだけ安心してしまっていた。


「ありがとうございます・・・えと・・・ジョアさん・・・?」


「本名じゃないですけど・・・そうですね・・・えと・・・姉のように呼んでくれて構いませんよ?」


「・・・じゃあ姉さん、よろしくお願いします」


康太に姉さんと呼ばれジョアは嬉しかったのか、笑いながら頭を掻いている。その様子を見て小百合はため息をついていた。


「ジョア、お前が年下趣味なのは知っているが中学生に手を出すのはさすがにどうかと思うぞ?」


「は、はぁ!?そんなんじゃないですよ!ていうかこの子中学生なんですか?」


「はい、中三です」


まさかの年齢にジョアは驚いているようだったが、それはそれでと小さくつぶやいた後に首を大きく横に振っていた。


一体何を言っているのか康太は聞くことはできなかったが小百合は聞こえたのだろう、大きくため息をついてしまっていた。


「とりあえずこの先で魔術が本当に発動できるか試験を受けることになる。準備はいいな?」


「あ・・・はい!いつでもいいです!」


魔術の試験。魔術師を名乗る上では必須になるであろう条件である魔術の発動。これができなければ魔術師とは認められないのだ。康太は気合を入れながら小百合の後についていくことにする。


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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かったです [気になる点] >兄弟子として力になります こだわりがあるのかわからないので一応こちらでお聞きするのですが、一番弟子が女性なら発言は姉弟子として、にならないでしょう…
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