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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
六話「水と空の嘶き」
188/1515

その欠片

「ビー君、四月末に君が関わった方陣術での事件を覚えているか?」


見るに見かねたのかエアリスが助け舟を出す中康太は記憶を掘り起こしていた。


四月末に関わった事件で方陣術のものというと康太と文が初めて師匠の下を離れて活動したマナを集めた方陣術の事件の事だろう。


長野の某所で起こったその事件の事を康太はまだ覚えていた。なにせ文とのそれを除けば初の実戦だったのだ。忘れろという方が無理な話である。


「覚えてますけど・・・それがどうかしたんですか?」


「このマナの結晶は君たちが最初に潰した方陣術の一角に落ちていたものだ。運よく・・・いや運悪くその場に作られたものでな・・・恐らくは犠牲になった精霊が何かしらの影響を与えたのだと思うが・・・」


あの時、最初の方陣術に埋め込まれてしまった精霊は消滅してしまったのではないかと思われる。文はその存在を確認できなかったのだ。


爆散というほどではないかもしれないがどちらにしろその存在を知覚できなかった時点でどうなったかはお察しである。


そしてその方陣術のあった場所の一角にこのマナの結晶が出来上がっていたのだとか。


だが正直その話を聞いても康太は『へぇそうなんだ』以上の感想を持てなかった。


実際そのマナの結晶があったらどうなるのか、というかどのような効果を持っているのかも定かではないのだ。そんなものを見せられても感動できるはずもない。


「・・・とりあえずなんかすごいレア素材が手に入った的な感覚なんですか?天玉とか逆鱗とかそんな感じ?」


「認識としては間違ってないけどそれよりだいぶレアよ。そもそも私は初めて見たもの。でもすごいわ・・・まさかあの場所にこんなのがあったなんて・・・もっとよく探してみるべきだったかな・・・」


「それに関しては同意する。だがまぁベルが見つけても結局は協会が一度回収していただろうな・・・」


「・・・ていうかそのマナの結晶っていったい何ができるんですか?ただマナだけあっても特に何か起こるとは思えないんですけど」


そう言えばこれについての説明を忘れていたと文とエアリスは咳ばらいをした後でテーブルの上に一枚の紙を取り出しその上に軽く方陣術を描いていく。


「いい?方陣術を使うには基本的に術式とそれを起動させる魔力さえあればいいわ。ぶっちゃけ人間がいなくても正しい魔力さえ注いでれば起動する。ここまではいい?」


「あぁ、正しい魔力を注ぐのに集中力がいるんだろ?なんか波長が違うとかなんとか」


「大体合ってるわ。でもね、その中でこのマナの結晶はちょっと例外的な存在なのよ。そもそもなんで私たち魔術師がマナを魔力に変換してると思う?」


「・・・そりゃ魔術を発動するのに必要な燃料みたいなものだからだろ?」


「そうその通り。でもじゃあ何でマナそのものでは魔術は発動しないのかしら?」


その問いに康太は困ってしまっていた。何故魔術がマナでは発動できないのか、そんなことを聞かれても答えようがない。なにせわからないのだ。


そもそもなぜマナでは魔術が発動できないのかなど考えたこともなかった。マナを取り込み魔力に変換するというのは半ば自動的に行われる反応になってしまっている。その為意識的にマナそのものを取り込んで利用しようという考えは無くなっていた。


マナなど魔力の原材料程度にしか考えていなかったのだ。そこまで考えて康太は思いつく。


「あれじゃね?石油をそのまま使っても機械はちゃんと動かないから灯油とかガソリンとかに変換するとか、そんな感じ?」


「結構いい線いってるわ。まぁ要するに効率が悪いのよ。より適切な形に変えるのがマナから魔力への変換。でもその分マナそのものの力もある程度減衰しちゃう。変換に無駄があるっていったほうがいいかしら」


「・・・まぁそうだろうな・・・それで?その話とこの結晶とどう関係あるんだ?」


マナを魔力に変換する際の理由などは理解できたが、その話がどのように目の前にあるマナの結晶に関係してくるのかが理解できなかった。


そもそもマナが非物理的な存在から物理的な存在になろうとそこまで変わりはないように思えるのだ。


「結晶化というのは要するにその存在の変質でもある。この結晶はいうなればその存在そのものの性質がマナよりも魔力のそれに近くなっているんだ」


「要するに、今まではコンセント的なあれだったけどこうして結晶化することで電池みたいな役割も果たせるってことよ」


「・・・んん・・・?つまりあれか?人間がいちいち魔力を注がなくてもこいつがあれば自動で方陣術を発動できるってことか?」


その通りと文とエアリスは同時に指を立てて見せる。


普段なら方陣術というのは人間が魔力を注がなければならない。その方陣術の性質に合わせた魔力を正しく注ぎ込むことで術は発動し、方陣術に書き込まれた式の通りに発現する。


だがこのマナの結晶があればそれを人間なしでできるようになるという事だ。

もちろん方陣術そのものを描く人物が必要になるだろうが、それでも魔力を注ぎ込むという意味では手順が一つ省略されることになる。


「でもそれって大丈夫なのか?この前はマナ集めまくったら異常気象起こったのに・・・」


「大丈夫だと思うわよ?そもそもこれマナそのものじゃないし、何より量少ないし」


「え?そうなのか?」


「さっきも言ったけどマナが変質することで非物質的なものから物質的なものになってるからね。だからマナの結晶とは言ってるけど、実質的には魔力の結晶って言ったほうが正確かもしれないわね。まぁ実際には似て非なるものだけど」


この結晶がマナの変質した姿だというのも分かったしそれが便利なものだという事も理解した。


以前異常気象を起こしているだけにマナそのものに強烈な力があると思っていたのだが、やはりそれでも量が少なければ大した力は持たないのだろう。


だが康太は疑問に思ったのだ。今目の前にある結晶の大きさはせいぜい一センチあるかないか程度の小さなもの。この大きさでいったいどれだけのマナが変質し結晶化しただろうかと。


それを手に取ってまじまじと見つめてもただのガラスの欠片以上の印象は持てなかった。


今日からちょっと私事により予約投稿します。反応が遅れるかもしれませんがどうかご容赦ください


これからもお楽しみいただければ幸いです

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