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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
六話「水と空の嘶き」
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その文字

「・・・うっわ・・・酷いなこれ・・・」


「ね?酷いでしょ?」


康太と文は小百合の店に到着するとまず方陣術の文章を康太にも見えるように以前にもやったのと同じように黒い粉末を振りかけていた。


その結果浮かび上がる文字を見て康太は先程までの文と同じように眉間にしわを寄せてしまっていた。


なにせその字は字を覚えたての子供が書いたそれか、康太が利き手ではない手で書いた字のそれに酷似していたからである。もしかしたらそれよりも汚いかもしれない。


かろうじて書いてあることを解読することはできるがすらすらと読むことができない時点である程度お察しである。


文があれだけ字が汚いことを言及していたことの意味を理解した康太は手紙を読みながら自分も字だけはきれいにしようと心に決めていた。


「でもこれで相手の技量もある程度分かった。問題はあんたがこれからどうするかよ?戦うんでしょ?」


「もちろん。お前の時みたいに先手を打たれないようにしないとな」


相手が戦いの場所を用意している時点で相手の方が先手を打つチャンスが増えてしまう。その為康太は相手よりも先に先手を打てるように行動しなければならない。


もしかしたら多少魔力を無駄遣いするかもしれないがそうなったら校舎の中を移動し続けて魔力の補給をしながら戦うしかない。


文の時には悠長に待ちすぎて先手を打たれたが今度はこちらから仕掛けるくらいの気持ちでいなければやられるのはこちらだ。自分の手の内を明かすことなく相手の術式を可能な限り多く把握するためにも不意打ちは必須と言ってもいい。


「二人とも、今日は夜も雨が降りそうですから雨具の準備をしていったほうがいいと思いますよ?」


「うぇ・・・雨か・・・どうしよ、かっぱでも着ていくべきか?」


「やめときなさい、無駄に動きにくくなるだけよ。途中まで傘を持っていってそこからは濡れるのは我慢したほうがいいわ」


「お前は魔術で防げるけどさ・・・俺の場合ほとんど防げないんだけど」


「なによ、障壁系の防御魔術覚えたんでしょ?」


「そんな無駄打ちしたくないっての。ただでさえ魔力残量気にしなきゃいけないんだから」


文のように魔力をすぐに回復できるようなタイプの魔術師であれば障壁を傘代わりにすることもできたのだろうが康太は一度魔力を消費するとその補充にかなり時間が必要になってしまう。


可能な限り魔力消費を少なくしたいためにそう言った無駄遣いは避けるべきなのだ。


「まぁ途中までは私が一緒に行ってあげますから。師匠はどうします?今回はついてきますか?」


「いや、今回は康太自身の問題だ、保護者が顔を出すような事じゃない。ついでに言うと真理、お前もついていくのはやめておけ。変に過保護になりすぎるとこいつのためにならん」


「え?でもさすがに危険じゃ・・・」


「これはこいつが魔術師として行うべきことだ、私達が顔を出せばこいつは『私の弟子』として戦わなければならなくなる。ようやく相手がいっぱしの魔術師扱いしてくれるんだ、今回はこいつらだけ行かせろ」


真理が危惧していることも分からなくはない。康太はまだまだ未熟者だ。その未熟者が精霊術師と戦うのだからある程度は危険を想定しておいて損はないだろう。


万が一の時のために助けに入ることができるように真理が近くに控えておいた方がいいとも思えたのだが小百合はそれを許さなかった。


いつまでも未熟でいさせるわけにはいかない。いつまでも小百合や真理がいなければ行動できないような温室育ちでは困るのだ。


相変わらず小百合の指導はスパルタだなと思いながらも康太は特に気にしていなかった。


なにせ康太はすでに魔術師として小百合や真理の保護下にない場所での行動をこなしているのだ。


一回だけとはいえその経験は大きい。どのように動くべきか、どのように行動するべきかはすでに頭に入っている。


単独行動する場合気にしなければいけないのは相手との間合いだ。危険になった時に離脱できる距離を保たなければならない。


攻めるにしろ守るにしろ、自分の得意な距離を守らなければならないだろう。

康太の場合であれば近づくのは必須だが、その中でもある程度最低限の距離は保たなければならない。


相手の出方にもよるが今回もまともな術師戦をするつもりは毛頭なかった。


相手に接近して一気に決めるだけの気概を持っていったほうがいいだろう。

既に再現のストックも、蓄積による武器の準備も万端だ。


後は相手がどのような魔術を使うのかを判断すればいいだけである。


既に各属性における対応の方法に関しては考えてある。各属性を扱えるだけの人材は自分の近くにいるのだ。火、水、風、雷、土、光の属性であれば少なくとも初見でもある程度は対応することができるだろう。


問題は相手の実力がどれくらいあるかという点だけだ。


「康太君、そう言う事らしいので今回はついていけそうにありません。ご家族の暗示の方は任せておいてください。頑張るんですよ?」


「ありがとうございます。とりあえずぼっこぼこにできるように頑張ります」


「ぼっこぼこにする必要があるかは微妙なところだけどね・・・」


今回の康太の戦いがどのような理由で行われるのか、恐らく康太自身あまり理解していないだろう。ぶっちゃけ喧嘩を売られたから買うという非常にシンプルな答えだ。


その尻拭いを任されている文としては考えることが山積みなのだがそこは頑張ってもらうほかない。


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