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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
六話「水と空の嘶き」
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魔術師の恋ばな

「というわけでお前って彼氏いるのか?」


「どういうわけなのよ・・・とりあえずいないけど・・・」


その日部活が終わってから康太は文を誘って小百合の店に向かおうとしていた。その途中で昼に青山と島村とした話を切り出したのである。


彼氏がいないという点ではあの二人は喜ぶべきなのだろうが、ある意味希望を与える行為は絶望を与えるより酷いのではないかと思えてしまう。


そもそも一般人相手だと文がまともな恋愛をできるとは思えないのだ。


「お前って彼氏とかいなかったのか?そんだけかわいいんだから一人や二人いてもおかしくないだろ」


「褒めてくれるのは嬉しいけどね、実際私が誰かと付き合うとしたら私達と同じような術師になるでしょうね。少なくとも一般人では無理よ」


「あー・・・やっぱそうなるか。今まで同級生ではいなかったんだっけ?」


「えぇ・・・だから同級生ではあんたが初めてよ」


そう言われると少々複雑な気分になるのは康太だけだろうか。誰かの初めてというのは多少なりとも優越感があるのは男ならではというべきだろうか。


「普通の男と付き合ってもいいんじゃねえの?暗示の魔術で操り放題だし」


「あのね・・・付き合うとかなら対等の存在じゃなきゃいろいろダメでしょ?何より相手に気を遣いすぎて私が疲れちゃうわよ」


一緒にいて安心できる存在であり、なおかつ対等であり、文が好意を寄せられるような人間こそ彼女と付き合うことができるようなのだがなかなか難しい注文かも知れない。


そもそも相手がそもそも魔術師でなければいけないという時点でハードルが高い。この世界に一体どれだけ康太と同年代の魔術師がいる事だろうか。


少なくとも各学年に一人二人はいるという事で同年代の魔術師は数千人はいるだろうが、その中に彼女のお眼鏡にかなうほどの猛者がいるかどうか。


「ちなみにお前って理想は高いタイプか?」


「そうでもないわよ?でも私より背が高い方がいいわね。いろいろ憧れてることだってあるし」


「憧れって、例えば?」


「お姫様だっこね。一度でいいからされてみたいわ」


「・・・やってやろうか?」


「あんたじゃなくて好きな人によ。体を持ち上げられるってなんかすごくいいじゃない?やっぱり男の人っていいなぁって感じになるし」


「はぁ・・・そんなもんなのか」


康太としてはお姫様だっこと言われても正直ピンと来ないが、案外乙女チックな考えをするのだなと文の方を見ながら意外な一面に少しだけ驚いていた。


文の事だからてっきり相手を徹底的に管理するとか言い出しそうなものだったのだが、実際は普通の女の子のそれと変わらないように思える。


少なくとも康太の実姉よりずっと乙女な考え方だ。


「でも背が高くて魔術師でお姫様抱っこできて・・・そのくらいか?」


「まぁそうね・・・あとはとことんバカじゃなきゃいいわ。ある程度話してて話が通じる人の方がいいもの」


「なるほど、チャラ男はいやか」


「いやね。昔から街を歩いてると軽そうなやつに絡まれるのよ・・・毎回あしらってたけどさすがにあぁいうのは近づきたくもないわ。可能な限り死滅してほしい」


「そこまで言うか・・・まぁ気持ちはわからんでもないが」


文のように容姿が整っていれば街に出ればナンパもされるだろう。それこそ大学生からただのフリーターまで引く手あまたのはずだ。


もっともそんなに簡単になびくほど文は軽い女ではないが。


恐らく昔から文は街に出れば多くの男に声を掛けられていたのだろう。それなりに男特有の嫌な面なども見てきたはずだ。そのあしらったというのが魔術的なものなのかそれともただ単に口で叩きのめしたのかは分からないが声をかけた男たちも不憫だっただろう。


可愛い子に声を掛けたらその子は魔術師だったのだ。はっきり言って不運以外の何物でもない。


「でもさ、声かけてきた連中でもかっこいい人とかいただろ?そう言う人はダメなのか?」


「顔だけ良くてもね・・・正直顔っていうよりもその人の本質を見たいのよ。顔だけいい人間なんていくらでもいるんだから」


「あー・・・確かにそれ思うわ・・・本当そうだよな」


「・・・何で私を見て言うのよ・・・」


「いやだって・・・ねぇ・・・」


文は顔だけは非常にいい。絶世の美女と言ってもいいくらいなのだが如何せん性格が強すぎる気がするのだ。


もう少しおしとやかなら康太も普通に好意を寄せるようになったのかもしれないが、彼女はやや性格がきつすぎる。


もちろん理不尽なことは言わないし感情的になることも少ない。理論的に物事を考えることができる点では非常に良い性格と言えるだろうが外見に対して性格が足を引っ張っている感は否めない。


きっと付き合ったら尻に敷かれることになるのだろうなと思うこと請け合いである。


「なんかそれ私の性格が悪いって言われてる気がするけど?」


「いや性格が悪いとまでは言わない。間違いなくお前はいい女だ。でも勝気すぎる。男だとちょっと大人しいくらいの方が好きかも知れん」


「ふぅん・・・それってあんたの意見?」


「俺はどっちかっていうと強気でもいいな。でもおしとやかなのも結構好みだ」


「結局女なら誰でもいいんじゃないの?」


「失礼な!ちゃんと顔とスタイルも見てるぞ!」


それ自信満々に言う事じゃないわよと文は呆れながら康太の話に付き合っていた。


こういう話が嫌いではないのかこの後も恋人談議に花を咲かせることになる。


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