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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
六話「水と空の嘶き」
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精霊術師のあれこれ

「確かに精霊術師の中にもすごく技術の高い人はいるわ。素質がなくても普通の魔術師以上に術を扱える人もたくさんいる。そう言う意味では精霊術師も魔術師も大差はない。あるのは互いの一般的な認識なのよ」


「一般的な認識・・・ってつまりどういうことだ?」


「つまり、大多数がさっき言った関係であると思ってるってこと。魔術師は精霊術師を見下しているってね」


魔術師の中にも精霊術師にハイレベルな術師がいるのは理解しているものが多く存在する。文だけではなくその師匠であるエアリスも、そして康太の師匠の小百合も兄弟子の真理もそれは同じだ。


だが大多数の魔術師は精霊術師が自らよりも格下であると確信している。それは言ってしまえば悪習のようなものだ。昔から続いているからこそそれが当たり前であると錯覚してしまう。


実際には魔術師よりも術の扱いが上手く、実際に魔術師よりも強い精霊術師などいくらでもいるというのに。


「でもそう言うのって今でも続いてるのか?この時代にそんな昔のことを延々と・・・時代錯誤っぽいぞ?」


「何言ってんのよ。この時代だからこそ強弱がはっきり分かれるんじゃない。いわば学歴とか一流企業か下請け企業かの違いみたいなものよ」


「・・・あー・・・なるほど、そう言う考えなのか・・・」


実際現代社会においては学歴やら勤め先などで大きく違いが出てくるのは間違いない。特に学歴フィルターのような言葉があるようにある程度格付けをするための判断基準になっているのも事実だ。


「だけどさ、実際に良い大学でてたって使えない奴いるだろ?平凡な大学でててすっごく使える人だっているだろうしさ」


「そうよ、その考えは正しいし実際にその通りだと思う。実際私もそう言う人を結構見てきたしね。何事も例外はつきものだし」


例外の存在を理解したうえでなお、文は魔術師としての考えを改めるつもりはないようだった。


自らが精霊術師の中にも格上と言えるだけの存在がいると認めたうえでなお、精霊術師が自分達よりも格下であるという魔術師の考えを肯定している。


「でもね、良くも悪くも常識っていうのは一つや二つの例外じゃ変わらないのよ。偏差値三十弱のバカ高校の人間が東大に現役合格したって、次の年代からその学校の偏差値が七十近くまで上がるとかあり得ると思う?」


「・・・まぁそりゃそうだけど・・・なんか納得できないんだよなぁ・・・」


「納得できないのは理解してるわよ。でも納得できないのをわかったうえで納得するしかないの。それが普通なんだから」


常識というのは良くも悪くも大衆によって変化する。少数は何時だって異端とされ、多数がいつも普通とされる。


精霊術師の中にも魔術師より優れているものがいるのは事実だろう。だが圧倒的にその逆の方が多いのだ。


精霊術師だから絶対自分達よりも格下という認識はできないが、精霊術師だから魔術師よりも下という認識が生まれてしまうのも仕方のないものである。


その考えや認識が一人の人間から生まれたものであればそれを覆すこともできたかもしれない。だがそれを生み出したのはこの世界に存在する多くの魔術師と精霊術師なのだ。


魔術師は精霊術師を自らより下だと思い、精霊術師は自分たちを魔術師よりも下だと思っている。


それらを認めない者もいるかもしれないが、それは非常に少数だ。なにせそれらはほとんど事実だからである。


「ちなみにお前って精霊術師の知り合いとかいるのか?」


「いるわよ?ていうか正確に言えば師匠の知り合いだけどね・・・すごい人よ、複数の属性の精霊を連れてるんだけど技術力とか師匠より上なの。絶対に戦いたくない相手ね」


以前文が言っていたが複数の属性の精霊を連れるのは非常に難しいのだという。


それぞれの属性の特徴があるように精霊にも特徴がある。その為相性の悪い属性の精霊同士も仲が悪くなる傾向があるのだとか。


精霊は微弱なものになればなるほど自我が希薄になっていく。その為理性というものも存在せず感情のみで行動することがあるため仲裁などができないのだ。


だからこそ精霊術師は大抵一つの属性しか使えない。多くても二つの属性しか使えないというのが精霊術師の常識だ。


それこそ精霊術師が魔術師に劣っている理由の一つでもある。


「私もその人に技術とか結構教えてもらったりしたことあるしね。だから精霊術師にそこまでマイナスのイメージはないかも・・・」


「へぇ・・・まぁそんな感じだな、さっきからの話聞いてると」


まぁねと言った後で文は目を細めた。そして小さくため息を吐いた後で康太の方を見る。


「でもね康太、思っていてもそう言う事は言わない方がいいわ」


「そう言う事って・・・精霊術師の中にもすごいやつがいるってことか?」


「それくらいなら言っても問題ないわ。でも魔術師も精霊術師も同じようなものだろとか、そういうことは絶対に言わない方がいい。たぶん・・・いいえ間違いなく両方の神経を逆なでする結果になる」


それがどういう意味を持つのか康太も理解している。頭の良い人間が自分バカだからとか、顔の良い人間が自分は不細工だとか言っていれば周囲の人間は僅かながらにでも不快感を覚えるだろう。


過度の謙遜は侮辱と同じ、康太のいいそうな言葉を先読みして文は康太に忠告したのだ。


決してそんなことを言わないように。


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