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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
六話「水と空の嘶き」
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定例会

康太と文はそんな雑談を踏まえながら三鳥高校にやってきた。雨という事もありほとんどの生徒はすでに帰宅しているようで残っているのは教職員のみとなっていた。


康太たちはさっさと敷地内に入り今回の会合の待ち合わせ場所となっている教室前へとやってくる。


その中にはすでに数人の魔術師たちが待っていた。教室の中にいたのは三人、どうやらまだ後二人ほど来るようで康太たちは教室の中の一角を陣取って待つことにした。


「俺らが他の人より早く来るって珍しいな」


「そうね・・・まぁ雨も降ってるしなんか関係あるんじゃない?」


今までは集合場所にやってくるとすでに全員集まっている状態だった。今回のような事は珍しいかもしれない。


少なくとも康太たちの方が早いというのは実は初めての事だ。


その場で待っていると二人の魔術師が遅れてやってくる。これですべてのメンバーがそろったことになる。


康太たちは三年の、この中で一番上の立場にある魔術師の方に視線を向けた。


「では定時連絡会を始める。各員近況の報告を頼む」


近況報告と言っても基本的に魔術師が自らの手の内を明かすようなことはしない。その為基本的に自らの近況と最近あったことを話す程度だ。


最近では康太と文が接触した事件の話をしたのが一番大きな話題だっただろうか。


基本的にこの学校の中にいる魔術師はあまり事件に出くわさないのか、そこまで物事を話したくないだけなのかほとんど近況を話さない。


この定時連絡会の意味を疑いたくなるところだ。


康太たちの番になってもそれは変わらない。基本的にこの学校でどのように過ごしているかなどを話すだけの場になってしまっている。


魔術的な状況と言われても協会にお使いに行った程度の内容しか話すことはできないのだ。


だが当然というかなんというか、こちらに対して妙な視線があるのはどうも慣れない。


こちらへの注目度が高いという意味では喜ぶべきなのかもしれないが正直見られ続けるというのも嫌なものだ。


全員の近況報告が終わったところで三年生の魔術師が全員を見渡した後で小さく息を吐く。


そしてその視線は康太と文の方に向いていた。


「ところでライリーベル、ブライトビー・・・君たちは最近随分と大人しいが、何か面倒事などは抱えていないだろうね?」


面倒事を抱えていないか


そう言われても正直康太たちは返す言葉などない。むしろ面倒事など抱えたくないほどなのだから。


だが確かに三年生のこの言葉も少しは納得できるものがある。なにせ四月、そして五月の頭と基本的に康太と文は面倒事を片付けていたのだ。この一ヶ月近く何もなかったのが不思議なくらいである。


「幸いにして面倒になるようなものはありません。少なくとも今のところは」


今のところはと強調しながら文はその場にいた全員の魔術師を睨みつける。


お前達が何か企んでいるのは承知しているのだぞという意味をその瞳に込めたつもりだったが、魔術師たちは平然としていた。


「そうかそれは何よりだ。君たちは良くも悪くも有名だからね。どこかの誰かに狙われるようなことがなければこちらとしても助かるというものだ」


妙にわざとらしいその口調にさすがの康太でも違和感を覚えた。何故そんなことを言うのか、その言葉に一体どのような意味があるのか、その場ではわからなかったが文のいうように何かしら企んでいるとみて間違いないだろう。


その口ぶりから察するに二人のうちのどちらかが狙われるようなことがあるのだろうか。


「そうですね、幸いにも先輩方は特にこれと言って目立った活躍もありませんし、私達の方に意識が集まってしまうのも仕方のないことかもしれませんね」


「・・・おいベル・・・それは・・・」


さすがに言い過ぎではないかと康太が止めようとしたが文はそれを視線で遮った。


文がわざわざ挑発めいたことを言おうとしているのだ、何かしらの意味があると思っていいだろう。


さすがに周囲の視線が強くなって居心地が悪くなってくるが、文は言いたいことをはっきり言うタイプだ。


特に周りがこちらに対して敵意を向けている、あるいはそれらしい何かを企んでいるのであればこちらとしても敵意を隠したところで無意味。


どうやら文は徹底的に先輩魔術師たちとやりあう腹積もりのようだった。


それに巻き込まれる康太としてはせめて相談くらい欲しかったが、普段は自分が文に迷惑をかけている立場だ。このくらいは十分許容範囲である。


何より小百合に鍛えられているせいもあってかこの程度では動じなくなってしまったのだ。


例え先輩たちが何を企んでいても小百合の修業や面倒事に比べれば楽なものに思えてしまうのである。


マイナス方面に鍛えられすぎているというのも考え物だなと康太は苦笑していた。


周囲の魔術師からの視線が強くなる中、康太と文は周囲を見渡していた。もしこの場でやりあうことになっても反応できるようにだけ気構えはしていたがどうやらそう言う事を起こすつもりはないようだった。


「君の言う通り私たちはまだ学生という事もあって大々的に活動はしていない。むしろ君たちのような存在の方がすごすぎるんだ。だからこそ覚えておくといい。有名になればそれだけよく敵を作る。そう、そこの彼の師匠のようにね」


ひょっとして皮肉で言っているのか、それとも本心から言っているのか、どちらにせよ師匠である小百合のことを言っているのは間違いないだろう。


返す言葉がないなと康太は苦笑してしまうが、自分の師匠のことを引き合いに出すという事がどういう意味を持つのか、この魔術師は理解しているのだろうかと目を細めた。


もしこれで自分を敵にするつもりなのであれば、そう考えて康太はその場にいた全員に視線を移していった。


ちょっと諸事情により予約投稿します


反応が遅れるかもしれませんがどうかご容赦ください。


これからもお楽しみいただければ幸いです

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