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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
五話「修業と連休のさなかに」
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報告

康太のゴールデンウィークは総じていえば充実したものであったと言える。


その充実の中には当然面倒事が含まれるが、密度の濃い数日間であったのは間違いない。


結局、一日目は移動、二日目に商談と魔術師との接触、三日目に魔術師との戦闘があり四日目は康太の治療に専念し、五日目には帰宅するというなかなかのハードスケジュールなゴールデンウィークになってしまった。


本来なら商談をした後は適当に遊ぶことも予定されていたのだが、結局今回のゴールデンウィークはほとんど魔術師としての戦いをするだけで終わってしまったことになる。


学生として正しいかどうかはさておき、魔術師としてはなかなか密度の高い時間を過ごせたのは言うまでもない。


ゴールデンウィークが終わるその日、康太たちは自分たちが住む町に戻ってくると同時に魔術協会の方に顔を出していた。


目的は言わずもがな、今回の件に関する報告である。


かなりの数の一般人に手を出した魔術師が捕縛されたという事もあって協会内ではそれなりにうわさが広がっているようだった。


今回の一件に小百合が関わったという事、そしてその弟子の二人が魔術師を直接捕縛したこともすでに知られているようだった。


その理由はすぐにわかった。なにせ魔術協会の内部の一角に張り出されている掲示板にまたも名前が掲載されていたからである。


今回掲載されているのはブライトビーとジョア・T・アモンの二つの名前だった。


そしてその助けとなった名前としてデブリス・クラリスとライリーベルの名前も一応記載されている。だが今回の立役者は康太と真理の両名であるらしい。


デブリス・クラリスの弟子二人が事が大きくなる前に解決に導いた。どうやら協会としてはそのような形で二人の評価をあげるつもりのようだった。


「なんかこれってちょっとこじつけっぽくないですか?事件解決っていうよりは未然に防いだだけなのに・・・」


「確かにそうかもしれませんね。もしかしたら支部長がちょっと気を利かせてくれたのかもしれませんよ?」


評価をあげることに関しては支部長は康太に協力すると約束してくれていた。ないことを吹聴することはできないがやったことを少し大げさに公表することは可能だと。


つまりはそう言う事なのだろう。あの時小百合の弟子であると大々的に発言してしまったことをまだ申し訳なく思っているのだ。


康太が関わった事件、そして康太が解決に導いた、あるいは協力したものはすぐにこの掲示板に載ると思っていいだろう。


評価が上がっていくのはありがたい限りだが、あまり露骨すぎるのもどうかと思えてならなかった。


康太たちが支部長室に向かうとすでにそこには日本支部支部長が待っていた。机の上にはたくさんの書類が乗っていてかなり忙しそうにしているのがわかる。


「・・・あぁクラリス、ようやく来たのか」


「なんだその物言いは、人がわざわざ足を運んでやったんだ、ありがたいと思え」


「・・・そうだね、その通りだ。君が何も問題を起こさずにやってきてくれただけまだましというものだ」


協会にやってくるたびに面倒事を起こしているのか、それとも面倒を起こすから協会に足を運んでいるのかどちらかはわからないが支部長としては小百合がこの場にやってきたことは複雑な気分のようだった。


「話はすでに聞いているよ・・・今回は助かった。もしあのまま話が大きくなっていたらかなり厄介なことになっていたかもしれないからね」


「被害者の処理は済んだのか?」


「滞りなくね・・・ただちょっと捕まえられていた期間が長かったから面倒だったけど魔術の存在をにおわせる痕跡はすべて排除した」


今回の事件は主に康太たちが被害にあったことよりも一般人に被害が及んだというのが問題だったのだ。


一般人への被害が広がれば当然その存在が露見する可能性も高くなる。その為事件が表面化する前に解決できたのは僥倖だと言えるだろう。


もし小百合が件の魔術師に敵視されていなかったら面倒なことになっていたかもしれない。


「それであの支部長・・・また俺の名前が張り出されてるんですけど・・・あれ良かったんですか?」


「ん?あぁ評価の話かい?いいんだよあれくらい。今回の事件はそれをするだけの価値があるものだったという事さ。もっとも多少色は付けたけどね」


やはり支部長の計らいだったのかと思いながら康太は真理の方に視線を向ける。実際あの魔術師と交戦したのは康太と真理だ。それを考えると間違った話ではないのだろうがあの魔術師を釣ったのは小百合だ。


それを考えると康太と真理だけが大々的に評価されるというのは少々気が引ける。


「まぁ評価されておいて損はないよ。それだけ敵を減らせる。君のお師匠様みたいにどんどん敵を増やすようなことをしなければ今回のような苦労は少なくなるさ」


「・・・ほほう、そうかそうか確かにそうかもしれないな。なら今度私の敵を自称する奴らを全員ここに集めてやろうか?」


「・・・すまなかった、勘弁してくれよクラリス。君がその気になったらここが戦場になってしまう」


小百合が特定の時期にこの場所にやってくるという情報を流せば、小百合を敵としている魔術師たちはこぞってやってくるだろう。そんなことになったらまたこの場所が戦場に早変わりしてしまう。


最悪の脅しだなとその場にいた全員は呆れてしまっていた。


こうして康太たちの長く濃密なゴールデンウィークは終わりを告げる。


今回の事で康太はまた一つ評価をあげ、自分に足りないものをまた一つ把握することができた。


康太が一人前の魔術師になれるまではまだまだ時間がかかりそうである。


今回で五話終了、なのでおまけを少し


現段階における康太の修得魔術解説

『分解』無属性 魔力消費『極小~中』


人の手によって構築された物体を分解できる。無生物を対象とし、接合されている部分がより強固であればあるほど、また分解対象が多ければ多い程魔力消費が大きくなる。対象の構造を理解しているほど分解効率が上がり消費魔力を抑えられる。


精度が上がることによって魔力効率が上がる。射程範囲は見える範囲。ある程度構造を把握していたり、他の魔術と併用することで視界外の物体も分解可能。


『再現』無属性 魔力消費『極小~中』


使用者の行った動作を念動力に近い魔術によって再現する。再現されるものは射程距離やその効果は再現するオリジナルと同等である。なおその方向や場所に関してはある程度操作できる。


なお使用者が『原動力』となっている動作であれば再現可能の為、武器を振うなどといった動作によって武器そのものの再現が可能となる。ただし銃や爆弾など使用者を原動力としていない道具においては再現できない。


再現する動作の時間に比例して魔力消費が大きくなる。精度を上げることで操作性や魔力消費を抑えられる。射程は再現する動作によって異なる。


オリジナルの動作一回につき、一度しか再現は発動できない。


『蓄積』無属性 魔力消費『極小~小』


使用者が与えた物理エネルギーを物体に蓄積しておくことができる。蓄積範囲を指定し、その中に物理的な力がかかった時にその力を蓄積する。そしてその蓄積されたエネルギーを解放することによって蓄積していた物理エネルギーを一度に蓄積していた対象に与えることができる。


発動行程において『蓄積』と『解放』という作業が必要となる。なお魔力消費は蓄積時、物体にかけた物理エネルギーの時間に比例する。


精度を上げることで魔力消費を抑えることができ、より多くの対象に物理エネルギーを蓄積できるようになる。


『身体能力強化』無属性 魔力消費『小~大』


使用者の身体能力を一時的に強化する魔術。無属性の身体能力強化はすべての能力を全体的に強化するバランス型。高い身体能力を求めれば求める程、そして発動時間を長くすればするほど魔力を消費する。


精度を上げることでより高い身体能力強化と魔力効率を得ることができる。


なお現段階において康太はまだ身体能力強化を完全な形で会得していないためにバランスを崩した状態でしか発動できなかった。


今後も章をある程度迎えるごとに康太が覚えている魔術を載せていこうと思います

何か要望があれば感想にてお知らせください


これからもお楽しみいただければ幸いです


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