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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
番外編「祝福された少女が望むもの」

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神加の想い

神加の兄、正確には兄弟子、八篠康太。術師名はブライトビー。通称『四枚羽』


ありとあらゆる暴虐の限りを尽くし、殲滅した魔術師グループや組織はもはや数えるのが難しいほどだといわれている。


支部長直轄の部隊の隊長を務めており、部下にもかなり高い戦闘能力を有するものが多く、支部長の命令によって行動する彼らを多くの魔術師たちは『粛清部隊』と呼んだ。


この理由が、支部長が命令するのがかなりの違反行為、あるいは道徳的に逸脱した行為を頻繁に繰り返している者に限られているというのが大きい。


魔術師なのだから道徳云々を言っても仕方がないと思う反面、人として超えてはいけないラインがあるのも事実だ。


そのため、粛清された多くの魔術師たちに同情するものは当初考えられていた以上に少なかった。


とはいえ、粛清された側が仮にそれだけのことをしたとしても、それを容易く実行に移した康太に対するイメージがかなり悪くなったのは言うまでもない。


「でもさー、やられた人たちがやってたこと、神加だって知ってるでしょ?あれだけのことをやってれば支部長がゴーサイン出すのも無理ないって」


「それは・・・そうなんだけど・・・」


粛清されたチームや組織の人間が、いったい何をやっていたのかは神加も知っている。何せ粛清されただけの理由を支部長は毎回支部内で公表するのだ。今まで実績を公表するのと同じように。


そのため多くの者が支部長の決断を支持している。そこまでは良いのだ。単純にそこまでは良かったのだ。


問題は、支部長の予想通りなのか、多くの者がそうなるだろうなと思っていた通りというべきか、たいていその粛清部隊がやりすぎるという点にある。


毎回ではないにせよ、多くの場合がほとんどのものが魔術師としての活動ができなくなるレベルで叩き潰されるのだ。


そのやり口はとことん多彩で、単純に武力で潰すこともあれば、情報戦によって徹底的に相手の逃げ道をなくしていくというものもある。


二度と魔術師として活動できなくなる。それほどまでに追い詰められ、そして殲滅させられる。悪事もできなくなり、人としての最低限の生活しか営めなくなってしまう。それだけのことをする。それ故に『粛清部隊』と多くの者が呼んだ。


「それにさ、結構感謝してる魔術師も多いんだよ?数にものを言わせて幅を利かせてたような連中を倒してくれたりだとかさ、一般人を対象になんかやってて、これ以上はばれるんじゃないかって連中を倒してくれたり」


「それもわかってる、わかってるけどさ・・・」


相変わらず神加は膨れたままだ。その様子を見て詩織は何かを察したのかニヤニヤしながら神加の顔を覗き込む。


「あー、そっか。神加的にはあれかぁ、お兄さんが周りから悪く言われるのが面白くないんでしょ」


「は!?なんでそうなるわけ!?」


先ほどまでずっとプールに向けていた視線を神加は勢いよく詩織に向ける。心底心外だという表情をしているが、その顔がやや赤くなっていることに詩織は気づいていた。


「神加お兄さんのこと大好きだもんねー。悪く言われれば不機嫌になっちゃうのも仕方ないか」


「何よそれ!別にバカ兄貴のこととかどうでもいいし!なんとも思ってないし!」


「えぇ?うっそだぁ。お兄さんの話になると若干声のトーン高いよ?気づいてる?」


自分でも気づいていなかったであろう自分の変調を言われ、神加は顔を赤くさせながら不機嫌そうにしながら再びプールに視線を戻す。


「うぃっひっひ、愛い奴よのう。でもお兄さんと神加って結構歳離れてるよね?それでも好きなの?」


「・・・別に好きじゃないし」


あまりにも的確に自分の気持ちを言い当てられたからか、神加は完全に不機嫌モードになってしまっている。


こうなってしまっては意地でも認めないだろうなと、詩織は呆れながらも話を続けることにした。


「神加とお兄さんが初めて会ったのっていつだっけ?だいぶ前だって聞いてるけど」


「・・・私が小学校に上がるよりも前の話。正直、私もあんまり覚えてない。けど・・・」


初めて康太に会った時のことを神加は今でも覚えている。


自分がどういう状態であるのかもよく理解できていなかった時だ。どこに自分がいて、誰がいて、いつそこにいたのかも理解できていなかった。


その時から神加にはいろんなものが見えていた。そしてその頃から、神加の中には今と同じような同居人が、精霊たちがいた。


その精霊たちが、神加に見えている精霊や、神加の中にいる精霊たちが、そして神加自身が、康太は安全だと、康太は信頼できると、そういったのだ。


確信のようなものを含んだその感覚が、いったいどのような根拠を元にしたものであるのかは神加にもわからない。


だが康太がもっていた雰囲気とでもいえばいいのだろうか、そういったものを感じ取ったのである。


「子供の頃じゃしょうがないか・・・じゃあずっと前からの一目惚れってことか」


「惚れてないし、勝手に話進めないで」


他にも覚えていることはいくつかある。とはいえ今の年齢になっても覚えていることはかなり少ない。

だがそれでも覚えている、強烈なことがある。


康太の姿が変わった時のことを、神加は今でも覚えていた。


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