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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
番外編「祝福された少女が望むもの」
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精霊たち

教室の中では何人もの生徒が挨拶をしたり雑談したりしている。


その中に神加の姿もあった。友人たちと談笑している姿は普通の学生にしか見えない。魔術師にも、危険人物にも見えない。


だが彼女が見えている世界は、一般人のそれとは決定的に異なっていた。


談笑している女子生徒のすぐ隣には、丸みを帯びた風船の形をし、燃えている謎の生物、そして相槌を打っている女子生徒の頭の上には丸くなって眠っているネコがいる。その猫の毛はわずかに湿っており、滴る水は宙に浮いてネコの周りを飛翔している。


そしてこの教室の中にもいくつものわけのわからない生き物の姿や、妙な生き物が存在している。


精霊と呼ばれるそれらを、神加は昔からずっと見てきた。見ない日はないほど、毎日のように。


この光景は通常は魔術師にも見えるものではない。その証拠に神加以外にこの光景が見えているといったものはいなかった。


師匠である小百合も、兄弟子である真理や康太も、こういった光景が見えるという話は聞いたことがない。


神加の目は特別なのだと、かつて誰かが言っていた。


長年大量の精霊を身に宿し、そして精霊の中でもかなり上等な存在を身に宿し続けているせいか身についてしまった一種の特性とでもいえばいいだろうか。


神加にとっては当たり前のこの光景は、大多数の人物にとっては当たり前ではない。そのことに気付くのに時間はそこまで必要なかった。


幼い頃から、神加は比較できる対象が身近にいた。これを見えるようにふるまってはいけないと教えてくれる幼馴染もいた。


幼馴染といっていいのか微妙なところではあるが。


「でさー、結局喧嘩しちゃって、まだラインの返事もしてないんだよねー」


「それ早めにやっとかないとそのままフェードアウトされんじゃない?いつの間にか別れたことにされたり?」


「あるかもね。でもそれって相手の方が悪いでしょ?あたしなら絶対謝らない」


「神加は結構頑固なところあるからねー。ってか確かに相手の方が悪いんだけどさ、それでもこのまま終わるのはなーって感じで」


「下手に出ると次もまたって感じになるからね。そのあたりはタイミングが大事じゃない?無視したままだとあれだからちょくちょく返信しときなって」


話の内容自体は他愛のない話で、教室の中で聞いている者はそこまで多くはない。ほとんどのものは別々の会話内容に夢中になっている。


教室内の雰囲気は決して悪くはない。


だがそんな中、神加の周りの、そして神加の中にいる精霊たちがわずかにざわめきだす。

そして神加自身も、ざわつくものを感じ取っていた。


『ミカ、誰かが魔術を発動したぞ』


『結界の魔術だなぁ。誰かが仕掛けるつもりなのかもしれないぜぇ?』


『日中ですよ?さすがに仕掛けるようなことはないかと思いますが・・・人払いというだけの話では?』


『範囲はどれくらいかな?あたしじゃそこまでわからないから・・・』


誰かが魔術を発動した。それを神加は肌で感じ取っていた。間近で、しかも自分にも何か干渉してくるような魔術であるからこそ感じ取ることができたが、そこまで精度もよくなく、誰かが何かを発動した程度しか認識できていない。


そこで神加は周りにいる飛び回っている精霊たちに目を付けた。


「ごめんちょっと電話きた、話してくる」


「はいよー」


「ってらー」


友人二人に携帯に耳を当てながら出ていくと、近くに居た精霊に話しかける。


「ねぇ、みんな、お願いがあるんだけど」


神加が声をかけた瞬間、神加の周りにたくさんの精霊たちが集まってくる。教室、廊下、ありとあらゆる場所にいた精霊たちがゆっくりとだが確実に神加のもとに集まってきている。


その密度が限界を超えることはないが、先ほどに比べると視界を占める精霊の率が一気に上昇した。


『なに?なに?どした、の?』


『なにかあった?』


『なに、すれば、いい?』


『て、つだう、よ』


神加の体内にいる精霊に比べると言葉もたどたどしく、その声も高い、子供のような精霊たちばかりだ。


だがそれでもこれだけの数がいれば探すのに事足りる。こちらも索敵の魔術を使用してもよいのだが、相手が魔術を発動したからこちらも魔術を発動するというのはあまり格好いい行為ではないと神加は考えていた。


「誰かが人よけの術を張ったみたいなの、どこにいるか、どんな人か教えてくれないかな?」


『いー、よ』


『さがせー』


『まかせ、て』


『わー』


精霊たちが散っていき、そして数十秒後にいくらかの精霊たちが勢い良く戻ってきた。彼らは物質にとらわれるような動きはしない。壁だろうと地面だろうとすり抜ける。その中で対象を見つけた精霊が戻ってきたのだ。


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