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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
最終話「彼の戦う理由」
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やらかした二人

「・・・やってくれたよね、本当にさ・・・!やるとは思ってたけどさぁ」


「いやぁそれほどでも」


「わかっていたならいちいち言うな煩わしい」


作戦が終わった後、康太たちは支部長の部屋に呼び出されていた。


問題なく拠点攻略を終えた康太たちだったが、当然巨大な破壊を起こした小百合と康太は支部長に問題視されてしまったのである。


小百合は一直線に伸びる巨大な破壊痕を。康太は巨大なクレーターを一つ作り出したため、今日本支部の後始末を専門とする部隊が全力で修復作業を行っているところである。


こうなるとあらかじめ予測できていたからか、支部長は康太たちが出発した時点で後始末を行える魔術師たちを手配し現地に向かわせていた。


そして大破壊が行われたという報告を受け次第、現地での活動を開始させたのである。


そのおかげもあってかなり迅速な修復作業が行われたのは言うまでもない。この事態を予想していたのはさすがというべきだろう。予想していてなお、それを強行させた支部長のとった手段が正しいのかどうかは議論が必要だろうが。


「ちゃんと正攻法で攻略してくれたのはジョアのところだけだよ・・・多少の負傷者は出たけど、それでも十分仕事をしてくれた」


「いえ、私などは大したことはしていません。土御門のお二人が予想以上にいい働きをしてくれました。アマネさんの防御を最大限活かすこともできましたし、彼らがいなければこの結果はなかったでしょう」


あくまで謙虚に、自分の手柄ではなく土御門の二人と防御を担当していたアマネの功績が大きいという方向にもっていきたいようだった。


今回攻略の時にわずかに目立ってしまったために、その噂を少なくしたいのだろう。こうした根回しがあるからこそ、今まで真理はあまり活動でも目立ってこなかったのだなと康太は理解していた。


「で、他のところはどうなんです?」


「まだ攻略中のところもあるけど、大半は無事に終了しているよ。続々と完了報告が上がってる。あとは向こうがどう出るかだね」


「どう出るか?」


「うん、今回の攻略作戦で、僕たち魔術協会は相手が発動しようとしている術式の大半を破壊することに成功した。相手にとっては途方もない痛手だ。しかもそれを護衛している魔術師たちも全員捕縛している。人手も少なくなり、拠点も奪われ、最後の手段の術式も破壊された」


「となれば、降伏する可能性も高いな」


「降伏?協会に負けました宣言するってことですか?」


「そうだ。相手の最大の作戦が失敗した以上、こちらの敵でいる必要性は低い。となれば、どこかしらで手打ちにする可能性はある」


相手がどのような組織でどのような結果を求めていたのかは知らないが、協会と敵対する理由、禁じられている術式の発動や、魔術の露呈の可能性のある実験などの行為が行えなくなるというのであれば、協会と敵対するだけの理由を失うことになる。


そうなれば、相手は降伏し、協会の味方として立ち回る可能性だってあるということを春奈は言っているのだ。


土御門のように、協会とは別の組織でありながら協会と協力関係にあるという形にするのか、その組織を下部組織として認めるのか・・・そのあたりは本部も交えて話さないといけないけどね」


「・・・そんなこと認められるんですか?今まであれだけかき回してきたのに」


「でもね、徹底的にやるって言っても相手の数も少なくなって、末端の末端にまで探すとなると骨が折れるよ。主要の敵は大概倒し、残っていたとしても幹部が一人か二人、あとは有象無象。背後にある資金源なんかも着々と潰せてる。そうなった時点であっちの勝ち目はないんだ」


「そうなれば私なら雲隠れするな。今までの拠点をすべて捨て、新しい拠点をいくつも築いてほとぼりが冷めるのを待つ。そうなればまた追うのは難しくなる・・・相手としても、そこまで徹底抗戦するよりも、まずは降伏して力を蓄える方がましだと考えるだろうな」


確かに協会が全力で潰しにかかっている状態から逃れなければ、またすぐに警戒され、即座に殲滅されかねない。


それならば、多少監視が尽きながらもまずは力をつけることを優先したほうがいい。


何十年もこの機会を待っていた組織だ。また何十年もかけて準備をし、再び同じようなことをする方がまだましなのかもしれない。


こちらとしても散り散りになる相手を完全に根絶やしにするのは困難だ。ならば一時的にでも味方であることを許し、完全に監視体制に置くことの方が有益であると判断する可能性は非常に高い。


「ですが師匠、相手の戦力をすべて把握することができない以上、また地下に潜られる可能性も高いですよね?」


「そのあたりは一人一人調査する。自白剤に誘導を重ねれば、全員の知り得る知識を統合して相手の全勢力を把握することはできるだろう。それを条件にすれば、相手だって飲まざるを得ない。徹底的につぶされるか、自分の手の内をすべて晒してでも生き延びるか・・・魔術師ならばどちらを選ぶか、そういう話だ」


どのようなことをしても生き残る、そして再び日の目を見るその日まで耐え忍ぶ。魔術師としての活動はその人物によって違うが、今回の敵組織から言えば世界を自分たちのものにすることこそが重要なことだったのだ。


おそらく一度では終わらない。また実験を重ね、新しい術式を開発し、また問題を起こすだろう。


今回の事件を多くの者が忘れた頃に、再び同じように動き出すだろう。


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