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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
最終話「彼の戦う理由」

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本部の総意

「やはり来ていたか」


本部長の演説が終わり、各支部が拠点に戻っていく中、康太たちに話しかける者がいた。


それは副本部長だった。供回りの魔術師を引き連れて康太たちのもとにやってくる。


供回りの一人に康太は見覚えがあった。春奈に蹴られて気を失った甲羅の魔術師だ。


「どうも副本部長。彼は今回も僕の護衛として来てもらいましたよ」


「どこにいてもその視線は突き刺さる。喧嘩を売られているのかと思った」


「あいにくと殺気は振りまいていませんよ。今回は味方ですから」


前回のように全面的に敵対宣言をされていた状況とは異なり、今回は最低限味方であることは確約されている。


一応康太は魔術協会の一員なのだ。厄介な存在ではあるものの、封印指定ではないのだから敵でもない。本来は味方のはずなのだ。


康太と副本部長のやり取りからはそのようには見えないかもしれないが。


「今後も、是非そうあってほしいものだ・・・今回の騒動の後、私からいくつか依頼を出したいと思っている」


「依頼?あいにくですけど、今回の依頼が終わったら少し休みますよ?あと支部長の部隊の隊長なんで、支部長の方が依頼の優先権は上です」


「わかっている。私が言っているのは、今回の作戦の後、おそらくは敵組織は細かく分裂し、ゲリラ化・・・小規模な活動を繰り返す組織になるだろう、そうしてまた大きな組織になるまでひそかに活動し続ける」


「まぁそうでしょうね。今までずっと隠れてきて、おそらくそれなりに隠れ家や逃げ道も確保しているはず・・・でもなぜそれをブライトビーに?本部の人間でも十分こなすことは可能でしょう?」


「単体の戦闘能力が優れているというのが最たる理由だが、本部に関してはまだ支部からの信頼を回復しきれていない。今後、各方面の戦闘能力の高い魔術師に各地における小規模な駆逐作業を頼むことになるだろう」


「駆逐とはまた、なかなか過激ですね」


「本部長もいっていただろう?あれは一種の悪性腫瘍だ。おそらく一人二人の発案ではなく、何人もの人間が賛同して、世代を超えて構築されている。少しでも取り逃せば、また同じようなことが起きるだろう。ここで根絶しなければ、同じことの繰り返しだ」


副本部長の考えは理解できる。実際、完全に消しきることができなければ何度でも同じことが起きるのだろう。


世代を超えて、仲間を増やして、裏で暗躍して、再び動き出す。


本部としては同じことを繰り返さないように、完全にここで終わらせるつもりのようだった。


康太だけではなく、違う支部の戦闘能力が高い魔術師にも同じように依頼を出すのだという。


全支部の精鋭を使っての、文字通り駆逐、殲滅。それが完遂されれば、魔術協会の管理体制はより万全なものになる。


とはいえ、こういったことはなかなかうまくはいかないものだ。散らばって隠れているものを探すというのは決して簡単ではない。


大本を叩く段階で一緒に逃げ場もなくしておく必要がある。もっとも今回攻略する場所も、相手のすべてではないことは容易に想像できる。だからこそ副本部長は終わった後の話をしているのだ。


「副本部長は、どれくらいかかると踏んでいますか?あまりブライトビーを連れまわされるのは僕としても困るんですが」


「要所要所で依頼は出すが・・・おそらく十年単位必要になるだろうな。勢力を削られた小さな組織となった存在を探すのは苦労する。大々的に動いている今の段階で情報を集めてはいるが・・・それでも散り散りとなった状態での捜索は困難を極めるだろう」


十年単位。それこそ今の幹部連が生きている間に完遂することができないことも視野に入れているということだ。


その作戦の一部を康太に任せるということがどういうことなのか、康太も理解していた。


「俺の寿命がなかった場合、その依頼を継続させるつもりですか?」


「・・・どうだろうな。その時になってみないとわからないが、少なくとも私としては寿命がないとわかった段階で、封印指定にするべきだと考えている。もっとも協会にとって有用であるのであれば、その限りではないかもしれんがな」


あくまで協会にとっての利益を優先する。その答えに康太はため息をつく。


「依頼を受けるかどうかはともかく、そいつらを殲滅するっていうのは、まぁ俺自身やるべきことだと思いますから、まぁいいでしょう。でも副本部長、目の前のこともまだ終わっていないのに、先の話をするのは少々性急じゃないですか?」


「確かにその通りだ。まずは目の前のことに集中してほしい。これからの話をするのはそれからでも問題はない」


副本部長は小さくため息をついてから支部長の方に視線をやり、そしてその視線を康太に移す。


「次があったら、その時はこの間の借りを返させてもらうとしよう」


「借りなんてありましたかね?俺は覚えていませんが」


副本部長の隣にいる、甲羅の魔術師を見ながら康太は笑う。明らかに不快そうにした副本部長たちを笑いながら、康太はとぼけたように肩をすくめた。


「まぁ、次は敵同士にならないことを祈りますよ。あんたを敵に回すのは結構面倒くさい、それに・・・」


「それに・・・なんだ?」


「俺は結構あんたが嫌いじゃない。敵にはしたくないですね」


そう言いながら康太と支部長は行動を開始するべく本部を後にした。未来を決定づける戦いがこれから始まろうとしていた。


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