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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
最終話「彼の戦う理由」

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背景によっては

「あぁ、事前の攻撃っていうのは、要するに軍事演習に扮した砲撃の類だよ。事前勧告も出す公的なものだ」


会議が終了した後、康太は事前の攻撃という言葉の意味を支部長に確認していた。

まさか軍と連携しての先制攻撃だとは思っていなかったために康太は目を細めていた。


「軍をそんなに簡単に動かせるものなんですか?」


「もちろん簡単じゃあないさ。場所によってはできないから、これができる場所は限られてくる。まぁ軍の訓練の場所を操作するくらいだ、重要機密の中でもまだましな方だからね。内部の人間を操れば不可能ではない」


「そう考えると魔術師って本当にやばいですね」


「そう、やばいのさ。だからこそ一般人に魔術の存在が露見するのは危険なんだ。統制の取れていない個人に過度な力を与えると、簡単に秩序なんて崩壊する」


魔術協会が魔術を一般人に広めないようにしている理由はいくつかあるが、その中の一つが社会的な秩序の維持というものがある。


現在魔術関係の大半は魔術協会が統括している。国によっては魔術協会とは別の組織もあるが、それらも魔術協会と提携、あるいは協力関係にあることで統制がとれている状態にある。


だがもし、魔術の存在が露呈し、一般人が好き勝手に魔術を使うようになればどうなるか、どのような未来が待ち受けているか。


銃火器を個人に与えるのとはわけが違う。銃火器はまだ目に見えるし、防ぎようもあるかもしれない。


だが魔術は目に見えない場合もあり、何より防げない可能性もある。魔術がはびこる世界になれば、当然混乱が巻き起こるだろう。


今まで抑圧されていた思想や行動が、一気に爆発する可能性だってある。


一種の無政府状態になる可能性が高く、それらを統制するにはかなりの時間を要することになる。


この情報化社会でそれらが起きることは多大な被害をもたらすことは容易に想像できる。情報の伝達速度が恐ろしく上がってしまった現代において、一つの情報がもたらす危険性は跳ね上がってしまったのだ。


魔術の存在を政府が仮に統括したとしても、どうしても流出は避けられない。そんな個人間のやり取りにまで魔術協会が関与するのは難しい。


「日本も自衛隊とかそういうのの中に魔術協会の人間が入ってたりするんですか?あるいは政府の中とか」


「もちろんいるよ。そこまであからさまな干渉はしない。そういうのは協会の取り決めで禁止になってるからね。いろいろと一応ルールを決めてるんだよ」


「確かに、魔術師同士で間接的に政治やらができちゃいますもんね・・・じゃあ魔術の危険に関してのみの関与ですか」


「そうだね。場所や状況にもよるけど、特定の条件がそろった時に特定の行動を起こせるように準備はしてある。そういう法令を作らせたこともあるしね」


「へぇ・・・多少は関与してるんですね」


「表沙汰にはならないけどね。どうしたってそういう準備は必要になるのさ。それに他国と喧嘩するっていう内容じゃなくて、自国、国内だけに限定した法令だから、そこまで問題にはならないんだよ。いや、実際起きたら問題にはなるんだけどね」


支部長は苦笑しながらため息をつく。いろいろと面倒ごとはあったのだろう。もっともそれが現支部長の頃に施行された話なのかはわからない。前支部長から引き継いできたのかもしれない。


だが少なくともこの国に、そしてほかの国にも必要なことであるのは間違いないだろう。


「相手が魔術協会の内情を知っているのであれば、その軍事行動が魔術協会からの攻撃であると気付くんじゃないですかね?」


「勘のいい魔術師なら気づくだろうね。ただ定期的に行われるものに紛れ込ませたりしているから、どれだけの相手が気づくかな」


「気付かれて同時に術式を発動される可能性は?」


「ないとは言い切れないね。だからこそ連続して、演習が始まると同時に攻略を開始する手はずになってるのさ。さすがの相手も砲弾や爆撃の中で索敵やら対策やらはやりにくいだろうから、多少はましになるはずだよ」


「うちらが攻略する場所でそういうのは・・・」


「密林の奥深くに爆撃をするような軍事演習は許可できないでしょどう考えても」


「ですよね」


さすがに今回の攻略場所は康太たちにとって条件が悪すぎた。少なくとも現段階において爆撃やら砲撃やらができるような立地ではないのは間違いない。


康太たちが取れる手段の中にまともにある物理的な手段はすでに限られていた。


「隕石か飛行機を落とすくらいしかできることはないか・・・」


「さらっと恐ろしいこと言うのやめてくれない?クラリスの影響受けすぎでしょ」


「でも先制攻撃としてはちょうどいいんじゃないかなって思うんですよ。旅客機一つチャーターできません?なんかこう、試験飛行的な感じで、一般人乗せないで」


「パイロットのこと考えてくれるかな?一応魔術師の中にもパイロットいるけどさ、緊急脱出を前提とした考えはあんまりさせたくないよ」


「状況が状況ですよ?仕方がないんじゃないですか?」


「君やっぱクラリスに似てきてるよね。そろそろやばいよね。もうちょっと冷静にさ」


「じゃあアリス先生、衛星か隕石を落とす準備をお願いします」


「心得た」


「心得ないで、僕の心の準備何もできてないからやめて。密林に落ちたなんてなったら大変なことになるよ。大惨事だよ。人的被害はないかもしれないけどもさ」


さすがの支部長も何度も何度も航空機や隕石を落とされるのはごめんのようである。


とはいえ何か先制攻撃を攻略点に与えたいのも事実。どうしたものかと康太は悩んでしまっていた。


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