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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
最終話「彼の戦う理由」
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気になること

「さて・・・では対策会議はこの辺りにして、次は攻略に対する会議に移りたいと思う。現在準備が終了している支部が八割、残りの二割の報告だが、あと一日、長くとも二日あれば準備が完了という形になっている」


長くともあと二日。ここまで支部長の読みが完璧に通るとさすがの康太も苦笑してしまう。


さすがは日本支部支部長というべきかと康太が考えている中、全員の視線が本部長の方へと向く。


「よって、作戦決行を二日後としたいと思う。一部の支部はかなりギリギリのスケジュールとなるかもしれないが、各自準備を急いでもらいたい。攻略作戦に参加する支部、その支援を行う支部、それぞれが連携を取り合ってこそ今回の作戦は成功すると確信している。全員最善を尽くしてくれることを祈る」


本部長の言葉にこの場の空気がさらに引き締まるのを感じていた。


二日後、二日後には攻略作戦が開始される。全世界を対象にした敵戦力の掃討作戦。簡単な話ではないが、この世界そのものが危険にさらされている以上動かないわけにはいかないと考える支部がほとんどだ。


そんな中で一名、世界のことなんかよりも別の理由で戦いに行こうとしている者がいることにほとんどのものは気づいていない。


気付いているのはほんのわずかだ。この場にいないものも含め、この場にいるものも含め。


「攻略作戦に当たり、各方面から必要物資などの報告が上がってきている。これらは各支部に一度送らせてもらうが、いくつかのものは用意しきれないものもあった。また支部に直接送ることができないものに関しては、該当支部が作戦の拠点とする場所に送るものとする。詳しくは目録を参照してくれ」


各方面で必要なものや欲しいものなどを列挙して本部に提出していたのは知っていた。それらをどのように扱うかはその支部とその魔術師次第だ。


日本支部がどのようなものを要請していたのかは康太も知らないが、支部長のことだから実用的なものを用意しているのだろうと考えていた。


配られた目録に目を通している支部長が小さくため息をついている中、康太はその資料を一瞬ではあるが覗き見ていた。


その中には銃火器の類が記載されている。日本などでは手に入りにくい武器の類を要請したことで攻略を容易にするつもりか、あるいは別の意図があるのか。


康太からすれば銃火器の類はそこまで脅威にならないため気にしないが、通常の魔術師からすれば銃火器は十分に脅威足り得る武器だ。


あるだけでも相手を威嚇できるのは間違いないだろう。それを使う人間が誰なのかは不明だが。


「さて、では次の話だ。各点の攻略における攻略点の事前調査を行った結果を報告しようと思う。もっとも事前調査といっても無人機を使った上空からの撮影だ」


そう言いながら本部長はスクリーンに各地点の航空写真を映し出していく。


その中には康太たちが攻略する南米の写真もあった。やはりというべきか、木々に覆われているせいもあってほとんど地形的なことはわからない。しかも写真そのものがだいぶぶれてしまっていた。だがそれでも何かがあると康太は感じ取っていた。


「現地の天候だが、やはり慢性的に強い風が吹いていた。航空機による接近はかなり困難と言わざるを得ないだろう。もっとも高度を上げればその影響も少ない。高度五千から六千程度からの移動であれば比較的安全に移動できると思われる」


「だが同時に、下が完全に雲に覆われてしまっている場合もあり得るため、攻略に使用するのは正直不向きであるといわざるを得ない。人海戦術を用いての降下を使えば多少は戦力を送り届けることはできるだろう。各自対策をすることを勧める」


高度五千から六千というとかなりの高さだ。それだけの高さから落下するとなると地表部分はもはやどの程度の大きさのものであるのかもわかりにくくなってくる。


空中での移動に慣れている魔術師でないと目的地にたどり着くのも難しいだろう。


向こうが大勢の魔術師を投入し天候を操っているのだから、こちらも同じ様に天候を操ればいいのかもしれないが、落下しながら天候を操るというのは並大抵のことではない。


落下できる時間は一分から二分程度。その間に着地のための術も発動しなければいけないのだから、高い集中を維持していなければ自滅しかねない。


かと言って風の吹き荒れる地上近辺を飛ぶというのも危険だ。風にあおられて墜落する可能性だって高い。


「相手が防御態勢に入ってるということは、こちらの接近を察知できているということでしょうか?または既に発動の準備に入っているか・・・」


「おそらくは前者だと思われる。攻略地点の衛星写真を入手したのだが、該当する時間には嵐などは発生していなかった。つまり奴らは何らかの手段で一定空域に接近する航空機の類を感知しているということだ」


「感知されないほどの高高度は確認できていますか?」


「こちらが用意できている機体の中では最高高度での接近を試みたが、やはり接近を感知されていた。ほとんどの攻略点でそれらが確認できたため、おそらくは人による索敵把握ではなく方陣術による自動感知か自動警報の類であることが考えられる」


相手はすでに警戒体制に移行している。その事実が各支部の緊張をさらに強めていた。


いつ攻めてきてもいいように体制を整えているということは、それだけの抵抗が予想されるうえに、いつでも発動できるように準備を整えている可能性が高い。


どの程度の準備が進んでいるかは不明だが、それでも時間がないのは間違いなかった。


二日という性急な決行も、あながち間違いではないように思える。むしろこの二日の間に相手が術を発動しないとも限らないのだ。


こればかりは神に祈るしかない。


「攻略点への事前の攻撃という意味で、いくつかの支部は手段を用意していると思う。あくまで牽制という意味での攻撃だ、そのあたりを留意してもらいたい」


事前の攻撃、牽制という言葉に康太は内心首をかしげていた。攻略なのだから一度に攻撃したほうがいいのではないかと考えていたが、どうやらそういうわけでもないらしい。


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