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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
最終話「彼の戦う理由」
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無理な要望

魔術協会の攻勢の準備が急ピッチで進む中、康太は土御門の双子と話していた。


話というのは他でもない。今回の大規模攻略作戦のことを二人が耳にしたからである。


「先輩!俺らも参加させてくださいよ!」


「そうです!私たちがいれば作戦の成功率はかなり高くなるはずです!」


こういう反応になるのは半ばわかっていた。わかりきっていたことだ。


この二人が今回のことを聞けばこのような反応をすることくらい予想できたことだ。考えればすぐにわかることだ。


康太からすれば連れて行ってやってもいいじゃないかなどと思っても、支部長クラスの人間がどうしてもそれを嫌がるのだ。


土御門の双子が出向である以上、危険な目に遭わせるわけにはいかない。何度も何度も同じような議論を重ね、もはや耳にタコができている状態である。


「お前らさ、毎回毎回同じこと言われても全然懲りないのな。今回も間違いなく連れて行ってくれないと思うぞ?」


「でも今回はかなりやばい案件なんでしょ?魔術協会の存続にかかわる問題なんでしょ?それなら未来を知れる俺たちがいるのはかなりでかいですよ」


「それならあんたたちじゃなくて、あんたたちの家に正式に依頼するでしょうよ。わざわざあんたたちを矢面に立たせるだけの理由もないわ」


「いいえ、支部と関わりがあって信頼関係を築いていることは重要なはずです。敵のスパイって可能性もあるんでしょう?なら私たちが適任です」


いつの間にか随分と舌が回るようになったなと文は内心舌打ちする。とはいえ二人の言うことも納得できる。


今回に関しては本当に時間との勝負で、しかも先にそれを知ることができるだけで世界の命運を変えるといってもいいほどの内容だ。


そこに未来の情報があるというのはかなり大きな利点である。


土御門との関係が悪化することを考慮しても、それだけの価値があるといえるだろう。


小百合との訓練で二人は確かに徐々にではあるが力をつけてきている。二人だけで依頼に出かけることもまだ数える程度だがあり、船越達との訓練を行うことで多少なりとも戦闘経験も増えてきた。


魔術師として卵からひよこ程度には成長しているのは間違いない。予知の力を合わせれば一人前といってもいい腕前はもっている。


問題は、支部長がどのような反応をするかだ。


「支部長は絶対ノーっていうよな?」


「うちの支部長はノーっていうでしょうね。けど他の支部長や本部長たちを味方につければノーとは言いにくくなるわ」


「なるほど、外堀から埋めていくわけか」


「うちの支部長はあぁ見えて結構頑固だけど、それだけのメリットがあれば首を縦に振るわよ。もっともうちの支部長は常識人だからね・・・いくらなんでも子供を連れていくのはって思うかも」


「子供って言っても俺らと一歳しか違わないじゃんか」


「・・・そうだったわ。私たちも子供だったわ」


康太たちだって支部長たちからすればまだまだ子供といえるだけの年齢だ。康太自身まだ自分が大人だと思ったことはない。それは文も同じだ。


そのため子供であるという理由は使えない。となれば土御門との関係を盾にするというのが一番考えられる。


「っていうかさ、お前らは作戦に参加したいって言ってるけど、どのレベルで参加したいんだよ。全面的な攻勢か?それともその支援か?」


「えっと・・・」


「それは・・・」


そこまでは考えていなかったのだろうか、作戦に参加したいという気持ちが強く出すぎていてそこまで思い当たらなかったのだろう。


この辺りはまだ未熟さが目立つ。もう少し目的とそれに至るための過程をしっかりと考えてからきてほしいものだと康太と文はため息をつく。


「支援って話なら不可能ではないと思うぞ?お前らの予知は特定の条件下での未来視。それなら俺の一定時間後の未来を見るってことを繰り返して指示を送るってことも可能ってわけだ。他のチームメイトも然り」


「まぁ・・・それはそうですけど・・・」


「直接戦うだけが作戦じゃないわ。戦う前に情報を手に入れる。それが未来の情報であればそれだけでも貴重なものよ。それだけであんたたちはかなり作戦に貢献してるって言えるのよ?」


「まぁ・・・それはわかりますけど・・・」


康太と文の言葉を受けても、晴と明は納得していないようだった。その気持ちがわからないでもないために康太と文はどうしたものかなと困ってしまっていた。


大規模な攻勢作戦。相手の拠点や術式をすべて破壊、殲滅するための作戦だ。後方での支援ももちろん重要ではあるが、この作戦での花形はやはり前線で戦う魔術師たちだろう。


土御門の二人も、可能ならばそちらで戦いたいと思っているのだろう。


この二人だって強くなってきている。今まで強くなろうと努力してきている。


康太も文もそれを見てきているために、二人を完全に邪険にすることができていない。


とはいえ、多少無謀のように思えてしまうのも事実だ。


さてどうしたものかと、康太が腕を組んで悩みだす中、漫画を読みながら宙を浮いているアリスがこちらへやってきていた。


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