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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
最終話「彼の戦う理由」
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他の支部のやばい奴

「いや助かったよブライトビー。君のあの発言のおかげで流れが変わった」


「そりゃよかったです。妙に俺の方に話が振られるんで少し困ってたところですよ」


会議が一通り済んだ時、一度休憩をはさむという意味で康太たちは会議室を出て一息ついていた。


すでに準備は八割がた済んでいる。あとは決行に向けての最終調整が残るのみだ。


もっとも、康太たちがやるべきことはすでに済んでいるために他の支部の動向を探る程度しかやることはない。


アリスがどのような手段に打って出るのかによってもまた変わってくるのだが。


「で、どうするつもりなんだアリス。攻略って言っても、なんか考えはあるのか?」


その場には康太と支部長以外は誰もいない。そんな虚空に康太は言葉を投げかける。


「ふふふ、まぁ楽しみにしているがよいぞ。悪いようにはせん」


そしてさも当然のように答えは返ってきた。今回もまた康太の翻訳要員としてアリスは同席していたのである。


支部長はそのやり取りを見て少しだけあきれてしまっている。もちろん驚いてもいるのだが。


「君ってさ、アリシア・メリノスの気配がわかるのかい?僕全然わからないんだけど。索敵しても何もないよねここ?」


「がっつりみられてないと俺も場所まではわかりませんよ。ただ、アリスが近くに居るなっていうのは何となくわかります」


「私の存在を感知できるのはお前くらいのものだ。まったく厄介な奴になってしまったものよ。驚かし甲斐がない」


康太はデビットを中に入れていた時からアリスが近くに居るとデビットのざわめきからアリスの存在を把握することができた。


デビットと同一化してからは、何となく、感覚でアリスがいるかいないかが把握できるようになっているようだった。


徐々にこの体に慣れてきて、その体の使い方とでもいうべきか、感覚とでもいうべきか、それを理解し始めているのだ。


「で、どうするんだ?実際のところ。隕石でも落とすのか?」


「なかなかにバイオレンスな手だな。まぁそれも考えなかったわけではない」


「やる気だったの・・・?」


「できないわけではないからな。威力の調整がかなり難しいが、やってやれないことはない。今回は別の手段を使う」


「どんな?」


「まぁまぁ、簡単に言ってしまっては面白くないではないか。ただヒントくらいはくれてやる。鍵はベルだ」


「ライリーベルが?」


文は今アリスと一緒に何かをやっているのは康太も知っていた。だから何か手伝わせているのだろうなと思っていたが、どうやらアリスは文に今回の作戦の中核を担わせるつもりでいるらしい。


「奴には私が所有している魔術の一つを教えた。扱いは難しいが、ベルならば問題なく使いこなせるだろう」


「使いこなせるって・・・まだ今回の話が始まって一週間も経ってないよ?」


「問題ない。あいつと相性の良い魔術だ。あと数日もあれば最低限ものにはできる。それに私も補助はする。問題なく扱えるだろうよ」


一体何を教えたのか、康太としては不安になるところである。だが少なくとも攻略が終了した地点から中心地の発動点までを高速移動できるようになり、なおかつ文の相性のいい魔術ということは風か雷属性の魔術だ。


暴風でも起こすのか、それとも相手が起こしているであろう嵐を打ち消すのか、はたまた磁力による高速移動か。


どちらにせよ何をやらかすのかよくわからないというのがこのアリスの恐ろしいところだ。


「一応支部長として聞いておくけどさ・・・本当に大丈夫なの?失敗とかしたら目も当てられないし、君の印象というか・・・そういうのも悪くなるよ?」


「封印指定に何をいまさら。安心しろ。もし万が一にも攻略が間に合わなくて術を発動されそうになったら先にビーが言ったように隕石でも落としてやる」


「ブライトビー、これ絶対失敗できなくなったよ。背水の陣になったよ。失敗したら隕石落とされるってさ」


「真の敵は味方の中にいたのか・・・後ろから・・・というか空から狙われるとか恐ろしすぎるな」


「失礼な。ちゃんと術式だけを破壊するようにする。コロニー落としの再現のようなことはしないと約束しよう」


「でも三か所・・・いや、最悪四カ所同時に隕石が落ちるんでしょ?」


「まぁそうなるな。ピンポイントメテオだ」


「絶対失敗できないな・・・絶対一般人が訝しむな・・・」


まだ一か所に隕石が落ちる程度であればどうにでもなる。そういうこともあるだろうが、密集した四カ所に同時に隕石が落ちるとなると奇跡的な、天文学的な確率になってくるだろう。


実際に起こったんだからしょうがないじゃんなどといえるような状況ではない。科学者にとってなぜそれが起きたのかを検証することが目的であるのだから。


「世界に誇る自然豊かな場所にそんなものを落とすわけにはいかないね・・・ブライトビー、今回の作戦、本当に頑張らないとやばいね。主に南米方面からのクレーム的な意味で」


「支部長の胃がねじ切れる前に解決できるように頑張りますよ。まぁ師匠たちもいますから」


「あっちはあっちでクレームの原因になりそうだけどね」


「・・・やっぱ味方に敵が多いですね」


日本支部の中にはクレームの原因になっている魔術師が多すぎる。支部長の胃がねじ切れるのも時間の問題だろう。


もっとも、ねじ切れても治して業務に励むのだろうが。


「でも支部長、俺らがやばいのはいつものことですけど、他の支部も結構面倒くさそうじゃないですか。大丈夫ですかね?」


「ん?大丈夫じゃない?他の支部にも武闘派の魔術師って結構いるし」


「あ、やっぱうちらだけじゃなくてちゃんといるんですね」


日本支部を中心に活動しているせいもあって、康太は他支部の武闘派魔術師たちとあまり行動したことはない。


というかそういった魔術師たちと遭遇する機会がない。


この間PPという魔術師と会ったくらいだ。


「ん、じゃあ軽く紹介してみようか。さっきの面倒くさい場所を攻略する支部で武闘派の人間は・・・えっと」


支部長は記憶を呼び起こしながら先ほど日本支部と同じように面倒くさい場所を攻略する支部の武闘派メンバーを思い出していく。


「まずロシア。ロシアはバレン・リーゼを始めとした一家が強いかな」


「一家、ですか?」


「あぁ、君たちで言うところのクラリスを始めとした血族って感じ。その周辺、弟子、師匠、兄弟子とかそういう感じね」


どうやらほかの支部でもある一定の血族の魔術師たちが突出して強いのは変わらないようだった。


どこも同じような体系を組んでいるということだろうか。


「彼らは徹底した飽和攻撃を得意としていてね。高い素質を前面からぶつけてくる。射撃だけじゃなくて、近接戦にもそれは適応される。銃器も問題なく扱えるから物理的にも、結構やばいタイプの魔術師だ」


魔術に混じって物理的な銃撃などが入ってくると防御的には確かに難しい。現象を止める用の障壁と、物理攻撃を止める用の障壁ではそもそも構造が異なることもあるため、どうしても防ぎきれない可能性がある。


「次、オーストラリア支部はアイゼン・ハンスが有名だね。彼は君と同じで近接戦を得意としている。同じように一族皆強い。彼らは近接系の魔術師で、近寄られたらおしまいって感じらしいよ」


「へぇ・・・そりゃすごい」


「君のところも同じだけどね。次、フランス、フランスはパピヨン一家が強いね。彼らは動物、植物に関する知識が秀でていて、それに関しての毒や薬学に特化している。さっき護衛として来ていたPPも、パピヨン一家の一人だよ」


「へぇ・・・あいつもそうだったのか」


気配から強いということはわかっていたが、強い一家の一人だったとは思わなかったために、康太は少しだけ意外そうにしていた。


だが考えてみれば、康太も同じようなものなのだ。このように護衛に来ていても不思議はないのである。


「あとはカナダのキーバー・グース一家。彼らは相手を弱めるのが上手い。どんな効果も、どんな効力もたちまち弱体化させるのが得意だ」


「弱体化・・・そういうのもあるんですね」


「もちろん。相手にするとなかなかに厄介だよ。全体的に攻撃力も高いから、当然相手にすると面倒くさい」


相手のありとあらゆるものを弱体化するのが得意ということであれば、攻撃も防御も優位をとれるということでもある。


相手は弱体化しているというのにこちらは問題なく戦える。確かに面倒な相手だ。高い攻撃力を持つ味方を援護する役としても活躍できるだろう。


「さて、続いて日本、デブリス・クラリスを始めとする一家は強いね」


「その説明要ります?」


「一応この流れで説明させてよ。特に強いのは近接系、そして破壊に関してはかなり強い。近接は回避に重点を置いたタイプで、攻撃力が無駄に高い。近寄られたらおしまいだ。離れてもたまにえぐい攻撃が来るから注意が必要。一緒の現場になったら味方であることを祈ろう」


「解説がものすごく作為的ですね・・・嫌味ですか?」


「事実じゃないか。最も高い戦闘能力というと、アリシア・メリノスなんかも含めたいところなんだけど・・・番外枠になりそうだよね」


「あいにく私は一族がいないからな。将来また弟子をとる予定はあるが、それもまだ先の話よ」


「へぇ、それは初耳だ。誰かめぼしい魔術師でもいたのかい?」


「いや、まぁそういう話ではない。今の協会にはめぼしい奴はいない。これから先の話だ。あまり気にしてくれるな」


アリスが弟子をとるという言葉に支部長は少し興味をひかれているようだったが、少なくとも今すぐという話でもないためか、話はそこで終わりになっていた。


支部長もまさか康太と文の間にできた子供の話であるとは思っていないだろう。康太からすれば少し複雑な気分でもあった。


「まぁそんな感じで、他の支部にも強い人っていうのはいるんだよ」


「よく今まで会わなかったもんですね・・・あってても不思議じゃないと思うんですけど」


「会わないようにこっちで調整してたんだよ。君らただでさえ灰汁が強いから、会ったら交戦する可能性もあったからね。他の支部と合同で活動するときはかなり気を使ってたんだよ?」


今までほかの支部と一緒に行動することは何度かあった。その時になぜ他の支部の強い人間と当たることがなかったのかという答えがこれだ。


確かに小百合などと一緒にした日には巻き添えを食らう可能性も高い。そういう意味では支部長のこの対策は正しかったといえるだろう。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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