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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
最終話「彼の戦う理由」
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評価点と評判の違い

「あぁそうだ・・・この間の護衛、ありがとうね。急な話だっていうのに引き受けてくれて助かったよ」


「いえいえ構いませんよ。俺も決して無関係な話ではありませんでしたし。本部に対して仕事してますアピールもしておいて損はないですから」


「確かにそうかもしれないね。アピールに意味があるかどうかは正直微妙なところだけれども」


康太の背景として支部長直轄の部隊の隊長を担っていることになっている。そのため本部に支部長が向かうのに護衛をするというのは実に自然な流れだ。


書面上の話であるとはいえ、本部にそれを理由にして封印指定にしないことを上申したために多少なりとも仕事はしているという実績を残さなければ後からどんなことを言われるか分かったものではない。


門の作成という意味でも、部隊を認めさせるという意味でも、簡単な任務から進めることにこそ意味があると康太は考えていた。


所謂下積み時代というやつだ。支部長はすでにその段階は超えていると考えているためにアピールに対しての意味に関してはあまり意味はないと考えているが、そのあたりはやっておいて損はないという精神だ。


「でもこの間のことでわかったけど、君っておとなしくすることもできるんだよね。クラリスのことと今までの暴れっぷりから忘れてたけど」


「失礼な。何度も言ってるじゃないですか。俺は基本的には争いはしない方向で話を進めたい派なんですよ。余計な敵は作りたくないですもん」


「いやぁ、いつも君そう言いながら派手に暴れるじゃない?てっきりそういうふりなのかと思ってたよ。でもそうか、暴れる場を与えなければまともなんだよね」


康太は暴れる理由がなければ暴れることはない。逆に言えば暴れる理由があれば当然のようにどのような場でも戦闘を行うということなのだが。


それはこの間の裁判もどきでも同じだ。あの場に本部の魔術師がいくらいようと、康太は戦闘態勢に入った。


それは自分の身を守るためでもあり、智代の身を守るためでもあった。


戦闘をただの手段としか思っていないために、戦闘をすることに何の戸惑いもなければ迷いもない。

小百合の弟子としてしっかりと教育をされてきた結果といえるだろう。


「君ももう少しさ、まともな依頼って言ったらおかしいかもしれないけど、そういう依頼も受けたらいいんじゃないのかな?もう君の評判を変えることは難しいかもしれないけど、地道にコツコツやっていけば味方は増やせるかもしれないよ?」


「そうですね、そういう依頼が俺に来ればいいんですけどね。っていうかあれですよ?俺結構地道に依頼こなしてきてたはずなんですけどね?そのあたりどうなんですかね?評価点的な」


「君の評価点は高いよ。結構高いよ。やってることがすごいからね。今回の一連の事件に関していえば貢献的には支部内でもかなり高い。君より高い人ももちろんいるけど、それでもこの一年で君の評価点は恐ろしいほどに上がってる。今は上位から数えたほうが早いんじゃないかな?」


支部長は康太の評価点がいったいいくつになっているのかを数えようといろいろと書類を取り出している。


ある程度の時期になったら評価点がいったいいくつになっていて、支部内で順位がつけられ、何位になっているのかがわかるようになる。


もっとも康太の場合魔術師になってからまだ一年半しか経っていない。そのため今までコツコツ評価をためてきた人間にはまだかなわない。


だがすでに過半数の魔術師を超えているらしい。一年半で随分と濃度の濃い魔術師生活を送ってきたのだ。無理もないのかもしれない。


「でもそれってどうなんです?本気でやったら一年半で超えられちゃう評価って・・・ちゃんと他の魔術師たちって活動してるんですか?」


「活動はしているさ。でも、その活動内容は別に支部の依頼や、支部に対する貢献や支部に関わることだけじゃない。魔術師同士のコミュニティ、自分の研究、修業に後進の育成、やることは多いけど、別に支部の評価につながることだけが魔術師の活動じゃないのさ」


「まぁ、それはそうでしょうけど・・・専属魔術師たちは?あの人たちの活動って基本的には支部に関わることばかりでしょう?」


「あぁ、彼らは大きな活動を何も活動しなくても支部への評価点が入る代わりに、一定期間で一定量の評価しかもらえない形になってるんだよ。もちろん多大な貢献をすればボーナスって形で評価を出すこともあるけど」


そういう形になっていたのかと、康太は今更ながら魔術師の評価基準については何も知らなかったのだなと自分の無知を少しだけ恥じていた。


自分が所属している組織のことについても知らないというのはある意味問題だ。


評価点をためることがある一定の時期は目的になっていたが、その時期を過ぎたらもはややってくる面倒ごとをとにかく片づけることに終始していた。


特に今回の一連の事件、敵の組織の影が見え隠れしてからは面倒ごとが次々押し寄せていたためにそういったことを考える余裕もなかった。


敵拠点を叩くために毎日のように戦っていたこともある。それを考えると康太の評価が高くなってしまうのも仕方のない話なのかもわからない。


「俺の評価が高くなっても、俺の評判が変わるわけじゃないですからね・・・そのあたりが難しいところです」


「そうだねぇ・・・クラリスも今までの貢献のおかげで評価点はそれなりに高いけど、評判はあれだからなぁ・・・」


「師匠と一緒にされるとすごく複雑ですけど、まぁそうですね、そうですよね。もうあきらめたほうがいいかなぁ・・・」


康太の評価が高くなろうと評判が変わることはない。康太はすでに支部からも本部からも危険人物として見られてしまっている。


その辺りを覆すにはちょっとやそっとのことではどうしようもないのだ。


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