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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
最終話「彼の戦う理由」
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悪評は仲良くみんなで

「いやだがまだ・・・!まだだ!まだ俺には支部内で実験を粛々と行っているという実績がある・・・!地道に実績を積んでいけば・・・!」


「まぁその地道な実績もね、どっかでやばい行動すれば一発でやばい奴認定されるわけですわ。何百回善行を積もうと一回二回の悪行ですべて無駄になるというものなのだよ」


「やめろぉ!お前やめろよ!俺が今まで積み上げたものを喜々として崩壊させようとするんじゃねえよ!」


「違うな、間違っているぞ倉敷君。いつだって行動するのは君自身なのだ。善行を成すのも悪行を成すのも君自身なのだ。たとえそれが仕方のない行動だったとしても、たとえそれが命の危機に瀕しての行動だったとしても、それを成すのは君なのだ。第三者からは君がやったという結果しか見えないんだ」


往々にして、第三者は結果しか見ないものだ。仮に途中で誰かを助けるためだったとしても、世界を救うためだったとしても、その結果凄惨な光景が広がっていれば、結局のところ人々はそこに目を向ける。


良いところよりも悪いところに目を向けてしまうのは人間の悪癖といえるだろう。特に成功している人間の失敗には目が行くものだ。


倉敷のように精霊術師として成功を掴んでいる人間の足を引っ張りたくなる人間は多いだろう。

倉敷が自分の悪評のひどさに打ちひしがれていると、落胆するその肩に康太は優しく手を添えた。


「倉敷よ、そんな君に良い手段を教えよう。君の悪評が広まらなくなる方法だ。これしか君の評判を変えることはできないだろう。


「そ、そんな方法があるのか?お前が言っても説得力皆無なんだけど」


「なめるな。この方法は俺にはできなかったが、俺の姉さんがとっている方法だ。目撃者がいるから悪評が広まるのだ。目撃者すべて消してしまえばいいだけなんだよ」


「そ、そうか・・・!なるほど・・・いや待て、目撃者全部消すとか穏やかじゃないだろ。最悪悪評がさらに広まるぞ」


真理が行っているという方法なだけに倉敷は一瞬納得しかけたが、一瞬で我に返るとその方法があまりにも危険であることに気付く。


真理のように徹底してそういった工作を行えるのならばともかく、倉敷がそういうことをしようとした場合辺り一面を水の底に沈めるクラスの大技が必要になってくる。


さすがにそこまでのことができるとは思えなかった。


「何を言うのかね倉敷君。君以外に生き残りがいない、そういう状況にしてしまえばだれも君のことを悪く言うことはできないさ・・・やっちまえよ・・・楽になるぜ?」


「お前一気に悪役ポジションについたけどそれでいいのか?しかもすっげぇ小悪党ポジションだぞその言い草」


「へへ、そんなことありやせんよ兄貴。兄貴ならできますって、やっちゃってくださいよ兄貴」


「今度は子分ポジションかよ。お前大魔王みたいな戦闘能力持ってるくせにそんなポジションでいいのかよ」


「中ボスよりは早々にやられるやつの方が俺には合ってる気がするんだよな・・・俺の後ろにはさらに強い人たちが控えてるわけだし」


康太の周りを見渡した時、康太の戦闘能力は協会内ではトップクラスでありながらも、決して最強とはいいがたい。


少なくとも康太の周りには数人以上、康太よりも戦闘能力が高いものがいるのだ。


大魔王のような戦闘能力と倉敷は言ったが、実際のところその戦闘能力を上から順に並べると康太の立ち位置は良くても四天王クラスになってしまう。


大魔王、魔王、四天王、中ボス、下っ端。この順で並べると、どうしても四天王から中ボス程度が康太の立ち位置だ。


四天王の中で最弱クラスになるのが康太の戦闘能力である。


「お前が下っ端とか絶望しかねえわ。っていうか話戻すけど、俺ってそんなにやばい奴認定されてるわけ?」


「まぁ俺と一緒に戦場を駆け回ってるわけだし?それなり以上レベルでやばい奴認定はされてるんじゃねえの?少なくとも本部ではそんな感じっぽいぞ」


「それって誰情報だよ」


「マウ・フォウさん。俺らの評判をちょっと調べてもらったんだよ」


「マジでか・・・マジでか・・・!あの人の調査だとマジの内容じゃんか・・・!っていうかやばくね?俺いつの間にお前ら陣営に加えられてるの」


「俺らが毎回のようにお前を誘った甲斐があったってことだな。ようやくお前も俺たち側に入ったわけだ」


「ざけんな・・・!もう挽回は無理かな?」


「だから言ってんじゃん。とりあえず皆殺しにしちゃえばお前のことを悪くいうやつはいなくなるってさ」


「皆殺しにしたら間違いなく俺犯人呼ばわりされるよね?さらにやべえ奴認定されるよね?なんでお前そんなバイオレンスな考え方しかできないの?」


「何がバイオレンスだ。俺の師匠だったら一緒に都市一つくらい滅ぼしとけくらい言うぞ。それくらい言ってからバイオレンスって言ってくれ」


「お前の師匠はもう違う人種なんだって学習しろよ。あの人を比較対象に持ってきた時点でお前もうダメだろ」


そうかなぁなどと康太は首をかしげているが、自分の思考がだいぶ小百合よりになってることに気付けていなかった。


一年ほど前の出会ったばかりの康太がこの自分を目にしたら一体なんというだろうかと倉敷は頭を痛めていた。


「てかさぁ・・・実際のところ悪評が広まってるっていうけどさ、お前なんてもっとひどいんじゃねえの?」


「俺?俺なんて悪評どころじゃないぞ?もはや害悪やら災害レベルだぞ」


「あ、やっぱそんな噂になってんだ」


マウ・フォウに調べてもらった中で一番酷い評判というか評価を受けていたのは当然のように康太だった。


もちろんその上には小百合がいるのだが、康太たちのチームの中で最もひどい印象を受けているのは康太であるらしい。


マウ・フォウに調べてもらった結果が、まさかアリスよりもひどいことになっているとは思わなかっただけに康太は少しだけショックを受けていた。


「お前にわかるか、現在進行形で封印指定のアリスよりもひどい評価を受けてた俺の気持ちが。封印指定よりもひどいってやばいだろ」


「まぁ、あいつは確かに封印指定だけど普段はすごくおとなしいし、実は結構すごい奴だからな。お前の場合、確かにすごい奴だけどそれよりも前にやばい奴って印象が強くなっちゃうから・・・」


「くそ!俺がいったい何をしたっていうんだ!」


「お前がそれ本気で言ってるなら俺はお前の正気を疑うわ。むしろやらかしてないと思ってんのか?」


倉敷の冷静な突っ込みに、確かにその通りだなと康太は冷静になって自分の今までやってきたことを振り返ってみる。


「いやまぁ確かにね?封印指定体に取り込んだりさ、拷問したりさ、よくわかんない軟体魔術味方にしたりさ、拷問したりさ、体が神様と人間の中間になったりさ、拷問したりさ、いろいろやってるけどさ」


「拷問しすぎなんだよなぁ・・・」


「でもさ、それも仕方のない事だろ?しかもこれとウィルに関してはほとんど俺悪くないよね?むしろ俺被害者だろ」


そう言って康太は体から黒い瘴気を出したり、一瞬、手だけを電撃と同化させたりしてみる。


確かにそういわれると康太が封印指定百七十二号を取り込んでしまったのは運が悪かっただけだし、ウィルに関しても依頼の過程で犯人を見つけてしまっただけだし、康太がこんな体になってしまったのは任務中の不慮の事故のようなものだ。


運が悪いといってしまえばそこまでだが、それでは済まない意図的な何かが感じられるのも事実である。


「まぁ確かにそうかもしれないけどさ、そう考えるとだよ、お前事故的な何かで妙なことになる以外って大体拷問ばっかしてるじゃん?むしろそっちの方がやばい奴認定されてる原因じゃね?」


倉敷の言葉に康太は今気づいたかのようにはっとした表情になる。


まさかそんなと康太は驚いているが、倉敷からすれば至極当然のことのように思える。


情報収集のためとはいえ、負けたら拷問をかけられる可能性があるような魔術師を相手に喧嘩をしようとは思えないし、何より近づこうとも思えない。


支部内でよく康太が使っている拷問部屋が妙な曰くをつけられてしまっているのと同じだ。


「あとさ、お前戦う時って鎧姿だろ?」


「そうだな。あの方が戦いやすい。防御面でも攻撃面でもウィルには世話になりっぱなしだからな」


最初こそ一般的な魔術師装束、仮面と外套で戦っていた康太だが、ウィルが仲間になってからは鎧状態で戦うことの方が多かった


防御においても攻撃においても、ウィルがいることによって康太の取れる選択肢が多くなったのは間違いない。


「あの状態でいるってさ、魔術師からはすごいプレッシャーなんじゃねえの?普通の魔術師と違って、あれ見ただけでお前ってわかるじゃん?」


「まぁ・・・鎧着て戦ってるのって俺くらいだからな」


普通の魔術師は鎧など着ない。というか着たところで邪魔になるだけだ。康太の場合ウィルという特殊な物体(?)がいるから鎧状態でも問題なく戦えているというだけの話だ。他の魔術師に真似をしろと言っても無理の一言である。


「普通の魔術師と違うことしてるから悪目立ちしてるって可能性はないのか?そういうのって結構あることだぞ?」


「まぁそれも否定はできないけどさ・・・でも仕方なくね?そのほうが戦いやすいんだからさ」


「槍持って剣も使って鎧着て戦うとか特徴の塊だろ?ちなみにマウ・フォウさんの調べだとお前ってどういう通り名で呼ばれてるわけ?」


「・・・槍使いとか、鎧とか、最近だと四枚羽ってのも追加されたな・・・」


「で、支部では理不尽の象徴だろ?もう呼ばれ方だけでもやばい奴って感じするよな。あ、ちなみに俺は?俺は何て呼ばれてんの?」


「お前はかっこいいぞ。水龍とか濁流って呼ばれてる」


「マジか、悪くないじゃん」


倉敷の場合は水を高速で操り、その上に乗ったり水そのもので攻撃することが多いため、そういった呼び名が通っているらしい。


倉敷からしても悪くない呼び方なだけに悪い気はしなかった。


「鐘子は?あいつなんて結構いろいろ呼ばれてんじゃないの?悪い意味で」


「いやそれがあんまり悪い噂は聞かないんだよ。堅実でレベルの高い魔術師で俺の相方ってだけで、どっちかっていうと悪名よりもいい意味で名前が売れてる」


「なんだよそれ、不公平じゃん。あいつの悪名も広めようぜ」


「いいね、今度ちょっとやってみるか」


いつの間にか味方の足を引っ張ることを考えている康太と倉敷、この会話が誰にも聞かれていないのが幸いであろうか。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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