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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
最終話「彼の戦う理由」
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褒めるべきか否か

「ということで、大規模な急襲作戦を行うようです」


康太はとりあえず小百合の店についたところで小百合と真理に話をしに行っていた。今回の戦闘の要の一つともなる小百合と真理にこの話をするのは当然だろう。


「本部も含めた全支部が参加するとなると・・・相当な数になりますね・・・それだけ本気で攻略するということですか」


「日本支部の担当は南米の北部、攻略地点は四カ所、発動点とその供給点三つですね。発動点を囲うような形で供給点があるため、そのあたりに防衛網が敷かれているというのが支部長の考えです」


「無難な考えでしょう。確かにその配置ならば私もそのようにします。して、今回はどのように人員を配置するのですか?」


人員の配置。それはつまり戦力をどの場所に傾けるのかという話になってくる。


特に小百合、真理、康太、この三人をどの場所に配置するかによって状況は大きく変わってくるだろう。


「俺と姉さん、そして師匠はそれぞれバラバラのところに配置されるようですね。可能な限り三か所同時に攻略しなければいけないので」


「なるほど・・・三か所を攻略しながら、一番早く攻略できたものから発動点の攻略に向かう・・・ということですか。あるいは発動点には別動隊を向かわせるので?」


「そのあたりがちょっと迷ってるところらしいです。アリスがなんかいろいろと思いついたらしくてなんかやってますけど・・・そっちはあんまりあてにしないほうがいいかと思います」


アリスが何かをやっているというところに真理は若干の不安を覚えていたが、そのあたりは世界最高の実力を有しているアリスだ。何とかしてくれるだろうと考えていた。


「であれば私たちが考えるべきは確実にその供給点を破壊することですね。他の人員はどうなるのですか?まさか私たちだけでの攻略というわけでもないのでしょう?」


「支部の精鋭を連れて行けるそうです。あと場合によっては他の支部の協力も得られると思います」


「それはありがたいですね。私たちだけではどうしても人手が足りなくなることもあるでしょう。私たちは突破口を開くことに集中したほうがよさそうですね」


相手が戦力を整えている以上、こちらも確かな戦力で挑まなければ負けるのはこちらだ。


攻める側の方が圧倒的に不利な状況を整えているのはまず間違いない。


相手だってバカではないのだ。そのあたりの防備を整えておくのはむしろ当然といえるだろう。


「で・・・それはいつ始まる?」


先ほどから一言も話していなかった小百合がようやく口を開く。不機嫌そうな表情に声音、あまり今回の攻略に良い印象は受けていないようだった。


「まだ準備段階ではあります。本部と支部の準備が完了次第乗り込むと」


「そうか。それで相手の規模はどの程度だ?世界中に散らばっていると聞いたが?」


「発動点は確認できただけで十七カ所。現時点で集められた情報に沿って見つけられたものなので、まだある可能性は高いです」


「だろうな。となれば、今回のこれは相手の目論見を完全につぶすものにはなり得んか・・・まだまだ相手を潰し続けなければいけないということになるな」


「相手がこれを機にまた潜伏期間に入ってくれれば、その間に情報収集と殲滅を行うこともできます。もちろん相手が自暴自棄になって残った術式を発動するという可能性も否めませんが・・・」


「賭けだな。だがこのまますべての情報がそろうのを待っていたら万全の状態で発動されかねない」


「はい、少しでも相手の準備を遅らせるには、ここで攻めるしかありません」


「まったく、こんなことになるまで放置していたつけが回ってきたな。で、どの程度までやっていいんだ?」


どの程度までやっていいのか。康太はそのことを支部長から聞いていなかった。おそらくある程度は容認されるだろうが、今回戦う場所は完全な森林地帯となる。そんな場所で大規模な破壊を起こせばどのようなことになるか容易に想像できる。


昨今の自然保護の観点から見ても、発見は早くなるだろう。となればあまりに大規模な破壊はするべきではないのではないかと康太は考えていた。


「どの程度かはわかりませんが、ある程度抑える必要はあると思います。この間の中国みたいな状態は避けるべきでしょうね」


「あれは私も予想外だった。まさかあの程度であんなことになってしまうとはな」


そう言いながら小百合は薄く笑っている。絶対に嘘だ。もし予想外であったのなら死者が出ていてもおかしくないのだ。


小百合は狙ってあれを起こした。計算してあれを起こしたのだ。それが直感的なものなのか今までの経験からくるものなのかは不明だが。


「とにかく、あんまり派手な破壊はしないほうがいいです。今回俺と姉さんが別のところに行っちゃいますから、暴れすぎないでくださいよ?」


「安心しろ、最低限の手加減はしてやる。だが面倒くさくなったらその場合は仕方がないと思え」


面倒くさいと一言で言ったが、小百合の場合面倒くさいのではなくそれが適切であると判断した場合破壊する。


決して何も考えずに壊しているわけではないのだ。ある程度何かの根拠があって壊している。


ただその結果後始末が大変なだけなのだ。今回の場合も同じ、結果的に後始末が面倒になるだけで目的は達成する。


変に優秀なのが小百合のいやなところでもある。褒めるところでもあるのだが。


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