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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」
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猶予は

帰りの道中本部の人間にも敵にも襲われることはなく、康太たちは問題なく協会の門へとたどり着き、本部へと到着していた。


ローラローを始め、何人もの魔術師を捕縛し、引きずりながらやってきた康太たちを見て本部の人間はかなり驚いていたが、そんなことに驚いているような状況ではないと察したのか、多くの者が本部長や副本部長を呼びに走っていた。


そして本部長と副本部長が到着すると、康太はローラローを足蹴にしながら本部に差し出した。


「どうぞ、お望みのローラローです。生かして捕らえてきましたよ」


「・・・さすがというべきか・・・仕事が早いな」


「全員は捕らえられていませんがね。そのあたりの後始末はお願いしますよ。ローラローとその一派を捕まえたくらいです。副本部長も多少動いてくれていたようですが」


そう言って副本部長の部下と思われる魔術師を投げ捨てる。


気絶した状態の甲羅の魔術師は副本部長の前に転がされてわずかにうめく。副本部長はわずかに顔をしかめているが、それよりもまずは康太の進退の方が重要だった。


「それで、お望み通りしっかりとローラローとその取り巻きを捕まえてきましたが、俺は封印指定にされなくて済むんですか?」


「・・・約束は約束だ。君の寿命の如何について判明するまで、君を封印指定にするのは保留するように計らおう」


つまり康太の寿命がないと判明したらその時は封印指定にするということだが、康太からすれば今はその言葉が聞けただけでも十分だった。


少なくともあと数十年はとりあえず普通の魔術師でいられるのだから。


「ありがとうございます、その言葉忘れないでくださいね」


「わかっている。言葉をたがえるつもりはない」


「あと副本部長、手駒を攻撃しちゃってすいませんでした。てっきり敵側の魔術師かと思っちゃいました。名乗りも上げなかったので」


「・・・それは悪かったな。部下たちにしっかりと教育しておこう」


名乗りを上げなかったのは事実だが、康太からすれば体のいい言い訳でしかなかった。


少なくとも相手からすれば康太と戦う気満々だったために康太が攻撃してしまうのも無理からぬことだが、現場を見ていない副本部長としてはきっと康太が有無を言わさずに攻撃したのだと考えていた。


「それじゃ俺たちはこれで引き上げますよ。ローラローの尋問などは任せます。また何かあったら連絡してください」


「あぁそうさせてもらおう。今度大規模な襲撃作戦を行うつもりだ。君にもぜひ参加してもらいたいところだ」


「また襲撃ですか・・・今度はどこを?」


「相手の拠点、そして術式を発動していると思われる場所だ。すでにその一か所に偵察としてうちの勢力を回している」


「あぁ・・・例の星の精霊化?神格化?の術式ですか」


康太が被害に遭った魔術をこの星そのものにかける術式。どうやら度重なる情報収集によってその場所を特定するに至ったらしい。


それが発動するだけでもかなりの被害を起こす可能性があるために、協会としてはそれが発動する前に潰したいと考えているのだろう。


その考えは当然だ。康太だってさすがにこの星が住めないように変わってしまうのを見たくはない。


「大陸に一か所、多いところでは二カ所確認されている。各支部とも連携してその場所を叩く予定になっている。君にも参戦してもらいたい」


「それは・・・まぁ・・・構いませんけど・・・なんかこうやる気がなぁ・・・」


康太からすればこれ以上この件に自分が関わる必要性が感じられなくなっているのも事実だ。


例え戦闘能力が高くとも、自分よりも戦闘能力が高い魔術師は他にもいる。はっきり言って康太がわざわざ出る必要性を感じないのだ。


支部と本部の協力ということであればなおさら、康太が行動することの意味は薄くなっていくだろう。

その辺りを康太は迷っていた。


目的とでもいえばいいか、つい先日幸彦の敵を討ったばかりで、目的がなくなり活動意欲そのものがなくなりつつあるのが現状である。


「そういうな。君がいるかいないかで大きく状況は変わるんだ。君が参加してくれないとこちらが困る」


そう言われても康太からすればやる気が出ないことに変わりはなかった。


文としても康太に無理強いするのは忍びない。春奈もそこまでやる気がないのであれば無理に参加する必要もないと考えていた。


「まぁそのあたりは情報をもらってから考えますよ。戦力が足りないのであれば一考します。とりあえず疲れたので今回は帰りますね」


「感謝する。それではまた」


本部長としては康太とまた会うことになるということを確信しているのだろう。今度の大規模攻略作戦。おそらく今回の作戦で相手の目的を潰すことができるようになるのだろうが、それにしても康太のモチベーションが上がらないのであれば仕方のない話だ。


「とりあえず支部長のところ戻るか。お礼も言わなきゃいけないし」


「今回も結構助けてもらったしね。相変わらず苦労してそうだけど」


「そのあたりはあいつの仕事だ。気にすることはない」


康太たちは本部を後にして日本支部へと戻ることにした。


とりあえず封印指定にならずに済んだという報告をするために。


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