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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」
1409/1515

引き上げ

「到着したわ。ウィルが障壁に張り付いてる」


「一種のホラー的な感じだよな。で、どうするんだ?」


「どうするもこうするも、ぶち破るんだよ。トゥトゥ、合わせろよ?」


康太はウィルの中に仕込んであった武器、鉄球や鉄の杭などを障壁に向けさせると、ほぼゼロ距離状態にさせてから蓄積の魔術を解放させる。


障壁に亀裂が入り、破られると同時にウィルがその中に入り込み、障壁の内側へと侵入する。そしてウィルに続くように大量の水が障壁を食い破るように押し寄せていった。


当然相手も追加の障壁を展開するが、それよりも早くウィルは障壁の内側へと入り込み、扉をいつでも開けるように準備していた。


「いいぞウィル、トゥトゥ、ウィルが扉を開けるのと同時に障壁を破る。一気に水を部屋の中に入れちまえ」


「了解。一気に行くぞ」


ウィルが扉を開けると同時に障壁を再び鉄球などを使って破ると、倉敷の操る水が一気に押し寄せる。


押し寄せた水の勢いでウィルの体も流されてしまうが、その流れに乗ってそのまま中にいた魔術師たちへと急接近し、一気に捕縛することに成功していた。


「よし捕まえた!しばらくして相手の意識がなくなったら引き上げるか。アリス、拘束した奴の中にローラローはいるか?」


「いるぞ。どうやら問題なく捕まえることはできたようだな」


「よかったよかった。これで本部にも顔を出せるな。あとは帰り道に襲われないかだけど・・・」


「それに関しては支部長が手を回してくれてるわ。本部に手が出せないようにしてくれているみたい。警戒は必要だけどね」


「さすが支部長だ。戻ったら礼を言わないとな。あとは・・・こいつをどうするかだな」


康太の仮面をつけた魔術師を見ながら康太は唸る。一応気絶させただけとはいえ、本部の魔術師と戦闘をしたことには変わりない。


きちんと副本部長のもとに届けてやるのが親切だろうかと思いながら、康太は首をかしげる。


「とりあえず全員引き上げますか。トゥトゥ、ここの水の後片付けって任せて大丈夫か?」


「問題ねえよ。ちょっと時間かかるかもしれないけど」


「オッケー。あとはここにいる一般人どうするか・・・毒もっちゃったし・・・放置っていうのも申し訳ないし」


地下を埋め尽くした水であれば倉敷の実力ならそれほど問題にはならないだろうが、問題は一般人をどうするかということだ。


このまま放置していたら死人が出る可能性もある。ある程度事態を緩和しておかなければ後々面倒なことになりかねない。


「それでしたら私が対応しておきましょう。ビーたちは戻っていて構いませんよ」


「いいんですか姉さん。でも結構な数いますよ?」


「大丈夫ですよ。師匠の後始末に比べれば楽なものです」


「すいません、お願いします」


人体に精通した真理であれば、多少の毒程度であれば問題なく対処できるのだろう。それでもこの人数を問題なく処理できるというのはさすが真理というべきだろうか。


さすがは我が兄弟子と康太は誇らしかったが、同時に文たちは恐ろしさも感じていた。


「帰り道はいいとして、あとは副本部長がどのような反応を示すかといったところか・・・この魔術師を倒したというのは向こうにも伝わるだろうし・・・明確な敵対関係を築いてしまうことになるが・・・」


「それに関しては問題ないですよ。今回の件が始まった時点で副本部長には敵対宣言されてますから」


「そういえばそんなことを言っていたがそれでいいのか・・・?いや、それでいいというのなら・・・まぁいいんだが・・・何というか・・・」


春奈としては返す言葉がないのか、額に手を当てて悩み始めてしまっていた。正面から敵対宣言をされているという時点でかなり険悪な関係になっているのは致し方ない話だ。


今回の目的を果たすために互いに競争するという意味で敵対関係になったということもそうかもしれないが、康太を封印指定にするべきであるという副本部長の方針は変わらない。そういう意味でも副本部長は康太と敵対していたいのだ。


もっとも康太としては副本部長と敵対するつもりはないため、副本部長の独り相撲になる可能性もあるのだが。


その辺りは副本部長も理解しているだろう。康太にいちいち策を巡らせるよりも正面からこういう関係でいようと思うと告げたほうが副本部長的には楽なのだ。


もちろん康太にとってもそのほうが圧倒的に楽なのだが。


「帰りはマウ・フォウさんが迎えに来てくれる予定です。警戒しながら移動をしましょう」


「わかった。あの人には本当に頭が上がらないな」


「全員乗れるのか?」


「問題なく乗れるサイズの車だといっていました。多少無理にでも乗りましょう。魔術師連中は全員荷物として詰め込んでも問題ないでしょうし」


文もだんだん慣れてきたよなぁと康太はしみじみと思いながらとりあえず転がっている魔術師たちを捕縛しに向かっていた。


しばらくして、水の中に沈んだ魔術師たちが全員窒息してから地上階に引き上げ、とりあえず死なないように最低限の処置を施しながら縛り上げていき、この場所に於ける状況は終了することとなった。


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