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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」
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文の攻略法

「ビーが来ました。外からやってきた魔術師と上の階で交戦中です」


文は襲い掛かってくる魔術師からの攻撃に対処しながら上の階にやってきた康太と、もう一人の魔術師の状態について正確に状況を把握し続けていた。


いつでも康太のフォローをできるようにしたいという気持ちからか、攻撃や防御よりも索敵に意識を割いているように見える。


「もう一人というのはここの敵か、本部の回し者かのどちらかだろうな。ベルはどちらとみている?」


「おそらく本部の方かと。保有魔力がかなり高いですね。私と同じくらいあります」


文の保有魔力も一般的な魔術師の中ではかなり高い水準だ。トップクラスに近い魔力保有量であるという時点でかなり優秀な魔術師であるのは確定だ。


だが文たちが今対峙している魔術師たちはそこまで魔力が多いわけではない。となれば本部の魔術師たちであるという考えになるのは自然だろう。


「本部の魔術師をビーが対処してくれているか。なら私たちはこいつらを早々に片づけるべきだな」


「ですね。ですが一般人たちにそこまで影響を与えないように、建物も壊さないように戦うとなると・・・なかなか難しいですね。相手もそれなりにやりますよ」


文たちは今建物の壁を利用した屋内戦を行っていた。建物の廊下部分を利用しての射撃戦で、それぞれが扉部分を遮蔽物として利用している。


壁の部分に障壁を張り、互いに射線が通らないようにしながら射撃攻撃を放ち続けているのが現状だ。


相手の攻撃の密度はそれなりに高い。そして狙いもある程度正確だ。無策で障壁を展開しながら突っ込んでも、障壁を砕かれ攻撃を受けてしまうことになるだろう。


相手が有象無象の魔術師で、この場所が完全な平地だったのであれば文にとってこの程度の相手は瞬殺なのだが、建物と一般人を盾にしたような戦い方をされ、なおかつ周りにあまり気付かれてはいけないという縛りがあるとそうもいかない。


威力は制限され、射線も限られる。そうなってくると射撃系攻撃がメインの文としては不利な条件がそろってしまっているのだ。


建物に損害を与えてもいいというのならば、強力な電撃を放って相手を一気に倒す事もすぐにできるが、強力な電撃を放てば建物にも何かしらの影響を与えてしまう。砂鉄などを介して相手に電撃を送り届けたいところだが、相手も砂鉄の攻撃を警戒しているのかそれらを通さないように必死に防御を固めていた。


「こういう相手は稀にいる。自分たちが抱えている一般人を体よく盾代わりするような戦い方は実際有効だからな。今の内にこういう連中との戦い方を覚えておいたほうがいいぞ」


「覚えておいたほうがいいといわれても・・・具体的にはどうするんです?」


「それを考えるんだ。私とお前では覚えている魔術も得意としている戦術も違う。戦いの中でどのように立ち回れば相手の戦力を削ることができるか、これはある種の課題だぞ」


春奈は師匠として技術自体は教えるが、その技術の使い方や使うタイミングなどはあまり教えない。

それは先に春奈が言った言葉の通りで、文と春奈の覚えている魔術と得意としている戦術が違うことに起因する。


戦いの好みとでもいえばいいだろうか、春奈が好むそれを文に押し付けてしまっては、文の良さが春奈の得意で押し潰されてしまうと考えたのである。


小百合のように完全に実戦型の訓練をする師匠らしさとは違い、春奈は技術を教え、実戦の中でそれを気づかせる教え方をしているのだ。


全てを教えるようなことは決してしない。自分自身で気づかせることが重要なのだと春奈は理解している。


そして文もその重要性を理解している。だからこそ今こうして考えているのだ。頭を動かし、どうすれば相手の有利を打ち消すことができるだろうかと。


そしてそう考えている中、文は一つのことを感じ取った。


「師匠、今から私が突っ込みます。援護お願いできますか?」


文は自分の持っている鞭を装備しながら、自分の体に身体能力強化の魔術を施す。


文が接近戦をするというのは春奈の教えにはない。康太と一緒にやっている訓練によって得たものであるというのは春奈も理解していた。


「わかった。何か考えがあるんだな?行ってきなさい」


「ありがとうございます。十・・・いえ、十五秒後に行きます」


文と春奈は同時にカウントを進めていき、相手に自分たちの変化を気づかせないように先ほどまでと同じように攻撃をし続ける。


そしてカウントがゼロになった瞬間、文は扉部分から飛び出して廊下を一直線に走る。


春奈はそれに合わせて文の体を覆うように障壁を展開し、同時に射撃系魔術で敵魔術師を牽制していく。


文が完全に的になってしまう、そんなタイミングで唐突に敵魔術師たちを黒い瘴気が覆っていく。そしてその体の中から一気に魔力を吸い上げていた。


一体何が起きたのか、魔術師たちは理解できなかっただろう。唐突に視界が暗くなったかと思えば魔力が何かに吸い取られているのだから。


魔術師は必死に射撃系攻撃によって襲い掛かってきていた文を攻撃しようとするも、いきなり視界をふさがれたことによりパニックになってしまい文の姿を捉えることができていなかった。


かろうじて一人は即座に索敵の魔術を発動し文の位置を正確に把握して攻撃してきていたが、一人の攻撃程度では春奈の障壁は破れない。


文は相手めがけて一気に襲い掛かると鞭を振りかぶり、壁を盾代わりにしている魔術師のもとへ鞭を叩きつけると電撃を放って攻撃していた。


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