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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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大義名分

受付の魔術師が康太を止めようと名を呼ぶ中、康太の行く先に二人の魔術師が立ちふさがる。


「失礼、ブライトビー。副本部長はあなたとはお会いになれないとおっしゃっています。お引き取りください」


「今来たばかりなのにそう邪険にしないでほしいな。こっちも事情があって来てるんだ。会えないからはいそうですかと帰るわけにはいかないんでね」


「ではその事情とやらをお聞かせください。場合によっては副本部長も意見を変えるかもしれません」


今のところ真っ当な対応だが、それでも魔術師から放たれる敵意を康太は感じ取っていた。


正確に言えば敵意というよりは警戒というところだろうか。


康太と明確な敵対関係になりたくないために、何とか康太をやんわりと帰らせたい、あるいはこの状況を切り抜けたいという感情がひしひしと伝わってくる。


貧乏くじを引かされたような対応だなと康太は苦笑してしまうが、とりあえずそのあたりは置いておくことにする。


康太は懐から書類の入った封筒を取り出して二人に見せる。


「こいつを副本部長に渡しに来た。それだけだ」


「中身は?」


「教えられない」


「・・・ではそれは私たちがお預かりしましょう。副本部長に私たちの方から」


「ダメだ、これは俺が直接渡す」


「・・・私たちが信用できませんか?」


「会ったこともないような魔術師だからな。信用も何もないだろ」


この情報には今回の作戦において重要な内容が記載されている。それをどこの誰かもわからない魔術師に渡すわけにはいかない。


特に本部にはまだ敵のスパイがいるかもしれないのだ。このような情報を扱っているということを相手に知られたくはないのである。


「であればお通しすることはできません。何かもわからないものを届けさせるわけにはいきません」


「知るか。それはそっちの都合だろ?俺は副本部長に会いに行くだけだ」


そう言って二人の魔術師の間を通り抜けようとする康太の肩を魔術師はつかむ。


「通しませんよ、今日はお帰りください」


「俺が来てる時点で急な案件だってことがわからないか。退け」


「退けません。どうか、どうかお引き取りを」


「断る。お前らの都合なんて俺が知るか」


康太は肩を掴んでいる手を払い、強引に先に進もうとする。その瞬間、康太に向けて強い殺気が放たれた。


康太は即座に戦闘態勢に移行し、その場で高く跳躍する。


康太の体がその場からなくなった瞬間、その場所めがけていくつもの魔術が襲い掛かる。


近くに居た魔術師はぎりぎり障壁で防御することができていたが、下手すれば巻き添えになっていただろう。


誰が一緒にいても問題がない程度には相手も切羽詰まっているということだろうかと、康太は訝しむ。


「俺に攻撃するということがどういうことか・・・わかってやってるよな?」


本部エントランスの天井に着地した康太はウィルに体を天井に固定してもらいながら自分を攻撃してきた魔術師を見る。


エントランスの二階部分にいた二人の魔術師だ。康太を止めていた二人を巻き込んでも構わないという意図をもって攻撃してきた。


攻撃されたからには反撃する。やられっぱなしでいるほど康太は甘くはない。


「よせ!攻撃するな!」


康太を止めていた二人の魔術師のうちの片方が攻撃してきた魔術師に叫ぶ。どうやらまだ意思統一がとれていないようだったが、康太を敵に回すとどうなるかということくらいは伝わっているらしい。


「話を聞くようなやつじゃないんだろ!ここで止めなきゃまずいだろ!」


「手を出すなと言われているのを忘れたか!やめろ!」


「がたがたうるせぇ」


康太は天井から飛び降りると、自分に攻撃してきた魔術師めがけて噴出の魔術によって加速した蹴りを放つ。


とっさに障壁の魔術を展開しようとしたが間に合わず、康太の蹴りを防ぐことはできなかった。


大きくバウンドして廊下を転がり、魔術師は咳をしながら何とか立ち上がろうとしていた。


「ブライトビー!やめてくれ!こちらに戦闘の意志はない!」


「先に手を出しておいてよく言う。しかも綺麗な不意打ちだったじゃないか。ちょっと油断してたら当たってたぞ」


当たったところでウィルの鎧を破ることができたとは思えないが、先に攻撃されたという事実が重要だ。


康太がどれだけ危険な魔術師であるかを副本部長の配下である彼らは知っているはず。それを押して攻撃してきたのだ。何かしらの意味があるのだろう。


ただ、康太があまりにも急にやってきたために対応を決定できていなかったというのもあるかもしれない。


副本部長側の出方が確定的になるまで派手に暴れることは避けたかったが、攻撃されてしまっては仕方がない。


大義名分はできたのだから、身を守るために戦えばいいだけの話だ。


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