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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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いざ本部へ

「よっし!それじゃあ行ってくるか!」


支部長の部屋で提案された本部への情報提供。康太はとりあえず本部に足を運ぶべく装備を身に着けて出発していた。


どのような装備を身に着けているのか、もはや言うまでもないだろう。戦闘用の魔術師装束である。


そして本部に同行するのは通訳代わりのアリスだ。彼女がいるかいないかで言葉の問題が大きく変わる。

一般的な高校生レベルの語学力しかない康太にとってはありがたかった。


そしてそれを見送るのは文と倉敷だ。文は当然として一応倉敷も同盟相手が本部に赴くということもあって顔を出しに来たのである。


ただ本部に行くだけならまだしも、これから康太がやろうとしているのはある意味襲撃に近い。


情報を提供するというだけなのだが、間違いなく何かが起きるだろうことはこの二人にも容易に想像できた。


「行ってくるのはいいけど、気をつけなさいよ?一応あんた副本部長と敵対してる状態なんだから」


「わかってるって。とりあえずこっちから手は出さないつもりだ。攻撃されたら反撃するけど」


副本部長が堂々と敵対宣言をしたことで、副本部長の手駒の魔術師たちは康太を見たら攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。


しかも自分たちの上司である副本部長のもとに向かおうとしているとあっては、間違いなく止めに入る。

もっとも、止められて「はいそうですか」と止まるような康太ではないが。


「頼むからそのまま本部と全面戦争とかはやめてくれよ?少しは自重してくれよ?これ以上敵を増やすのは勘弁」


「大丈夫だって、これから世界征服しようとしてるやつらを捕まえるんだぞ?今更悪の組織が増えようと気にしないだろ?」


「一応組織的には味方のはずなんだけどなぁ・・・」


魔術協会という組織に所属している以上、本部は味方であるはずなのになぜこうなってしまったのだろうかと倉敷はため息が止まらない。


「ビーのことは任せるがよい。私がうまいことリップサービスをしておいてやろう」


「煽るなよ?絶対煽るなよ?いいか絶対だぞ?」


「ふむ・・・フリだな?」


「フリじゃねえからな!本部の人たちにはごますっとけ!いいな!お前だけが頼りだぞ!」


「それならビーを何とかしたほうが早いぞ・・・」


「何とかするより早くこいつ暴れるだろ。お前がうまくフォローするんだよ」


「何というか説得力が半端ないの」


今まで康太が行動してきた内容を知っているからこその倉敷の言葉にアリスは納得してしまっていた。


これ以上本部で敵を作らないためにはアリスがどれだけ平和的な翻訳をできるかどうかにかかっている。


日本語の微妙なニュアンスの内容も、いかに相手に好意的に伝えられるかどうかで印象は大きく変わってくる。


アリスはある意味大役を担っているのだ。


「んじゃとりあえず行ってくるから、俺に何かあったら犯人は副本部長だ。あとは任せたぞ!」


「お前を何とかできるやつがいるなら俺らが出て行っても同じだっての。いいからとっとと行ってこい」


「ダイイングメッセージはちゃんと残してよね。私たちにわかる感じのやつでお願いするわ」


「安心しろ、死体はしっかり持ち帰る」


二人ともまったく康太のことを心配していないが、それはそれで自分のことを信頼しているからなのだろうかと康太は自分に言い聞かせる。


少しだけ泣きそうになるのをこらえながら、康太は協会の門を通過して本部に足を運ぶ。


康太が本部にやってきたことで多くの魔術師が康太の姿を見て僅かに動揺する。封印指定になりかけている魔術師、戦闘能力が高い魔術師の筆頭でもある康太が戦闘用の魔術師装束を身に着けて本部にやってきている。その意味が分からないほど本部の魔術師たちは鈍くはなかった。


少しずつ確実に康太を取り巻く人間は少なくなっていく。康太とはなるべく関わりを持ちたくないという考えなのだろう。ここまで嫌われていると少し傷つくなと、康太は考えながら本部のエントランスにある受付に向けて歩く。


「副本部長に会いに来ました。通りますね」


受付の魔術師に有無を言わせずそういう康太に、受付の魔術師は少し動揺していたがそのあたりはさすがは本部の受付を担う魔術師。すぐに冷静さを取り戻して康太に応対していた。


「申し訳ありませんブライトビー、副本部長より、あなたとの面会を控えさせていただくとの打診がありました。どうかお引き取りください」


あえて今忙しいからという理由をつけずに、お前とは会えないとはっきり言うあたり副本部長は康太の性格を理解している。


ならばと康太は笑う。


「じゃあ、勝手に行かせてもらいますね」


副本部長の部屋の場所を康太は知っている。であれば許されるまでもなく勝手に会いに行くだけだと、康太は受付を後にしていた。


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