表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1394/1515

派手にはいかない

「ところでアリシア・メリノス、今回君はどの程度協力してくれるのかな?ブライトビーたちと行動を共にするということは知っているが」


今回のアリスの動きを把握していない支部長としては、一応アリス自身にその行動内容を確認しておきたかった。


派手に暴れるということであればその分情報操作が必要になるし、逆についていくだけなのであれば静観の構えをとる。


もっともアリスが行くという時点である程度とる対応は決まっているのだが。


「私は今回サポートに回る。せっかくビーがやる気を出して最大戦力を出そうというのだ。私の最も活躍できる分野で動かせてもらおう」


「得意な分野・・・君の場合戦闘能力も高いように思えるが・・・?」


「私は直接戦闘能力はあまり高くはない。だから今回は補助に回るのだ。私が一番活躍できるのはアシストだからな。私のようなか弱い女に戦いなどとできようはずもない」


どの口が言うのだろうかとこの場にいたほとんどのものが思った。地形ごと相手を無力化することだって可能なアリスが、戦いが苦手というだけの根拠が思い当たらなかったのである。


いや、ある意味苦手なのかもわからない。単純に相手がすぐにやられてしまうという意味で戦いにならないという意味かもしれない。


争いは同じレベルでしか発生しないということだろうかと康太たちが考えていると、アリスは康太の背中を叩いた。


「基本はこいつのそばにいるつもりだ。上空から落ちるにしろ、ある程度補助してやらねば発見されかねん。私は主にこいつの保護者役だ」


「さすが人類最高齢アリスさん、保護者っぷりが板についてますね」


「黙れ、私はまだまだ若いのだ。年寄り呼ばわりするな」


自分でたまに年寄りのようなことを言っておきながらこういう時は若作りするのだから性質が悪い。

もっともアリスのことだ、そのあたりはその時の気分でしかないのだろう。


「じゃあ一応戦闘をするつもりはないと・・・よしよし、これで被害は最小限に抑えられるかな?」


「それなら私ではなくビーの方に気を付けてやるべきだと思うが?そもそも私などよりもずっとやばいタイプの人間だろうに」


「失敬な。俺のような温厚な人間を前に何を言うか」


「はいはいそこまで。あんたたち二人が争っても五十歩百歩だから。どっちもどっちだから」


失礼な奴だなと康太とアリスは争いを止めた文を見ながら不満そうな表情をするが、今は置いておくことにする。


話は別の方向にもっていくべきだ。少なくともここでそんなことを話していても仕方がない。


「話を戻そう。今回の攻略、というか捕縛戦において、他の支部の協力をどうするかというのが問題なんだ。一応今回は海外、該当する地域の支部に協力を仰ぐことも不可能じゃない。アリシア・メリノスがアシストに回るならそのあたりの根回しも楽になるしね」


「なるほど、派手に暴れませんって宣言させてそれを材料に交渉しようというのか」


「まぁ似たようなものさ。さすがに中国の二の舞は嫌だからね・・・で、どうかな?他の支部の協力要請」


他の支部の協力が得られるとなればそれはそれで心強い。全員がありがたいと思っている中で唯一春奈だけが難色を示していた。


「協力を要請するのはいいが、その要請によって本部に情報が漏れる可能性は考えているのか?」


「一応本部と関わりがないような人間に申請をしてもらうようにするさ。何よりこの間まで本部を間引いた体制を整えてあったしね」


「それは少し前までの話だろう?今回は敵が明確にいて、本部が危険とわかっている状態ではなく、ビーをどうするかという話になっているんだ。中には本部に味方をする支部の人間がいても不思議はないだろう」


春奈の言葉にそういえばそうかもしれないなと康太と文はうなずく。状況がこの間と同じであったのならばよかったかもしれないが、あいにくと状況はまた少し変化しているのだ。


康太にとってはあまり良くない方向に。


「支部の意思統一ができていた前回と、本部と直接対峙している今回、本部の味方をしようとする支部の人間は必ずいる。そういう状態で他の支部の人間に助けを求めるのは愚策だと私は思うがな」


「それは・・・確かにそうかもしれないけど・・・じゃあ日本支部だけでやるのかい?できないことはないけどなかなか面倒だよ?特に現場での移動手段とか後始末とか・・・」


「それはお前が苦労すればいいだけの話だ。現場での動きは私たちが、現場までの動きはお前が担当すればいい。違うか?支部長」


あえてここで支部長という立場を強調したことで、支部長は何も言えなくなってしまっていた。


支部長という立場からそういった交渉や調整は康太たちよりはずっとしやすい。今回の内容的にも支部長が多少頑張ってくれたほうが康太たちのためになる。


康太の味方をすると公言しているのであれば、多少そういった苦労もしてもらいたいと春奈は考えているようだった。


脅している感が否めないが、そのあたりは仕方のない話だろう。


「わかった・・・わかったよ・・・僕が頑張る・・・君たちは現場で頑張って」


「ありがとうございます。早速ですけど行き帰りのルートだけ確認させてください」


「まって、話が早い。僕まだ何も考えられてないんだけど」


畳みかけるような質問に支部長は参ってしまっていた。とはいえ早いところ話をしたほうがいいのも事実。


支部長は急ピッチで移動ルートを考える羽目になっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ