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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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傍から見れば事案

目をつむり、一応目隠しをし、魔力をすべて抜いた状態の真理は直立不動の態勢で康太と神加の前に立っていた。


康太と神加はその真理の状態に少しだけどうしたらいいのか戸惑っている。


「どうしましたか?もうすでに訓練は始まっていますよ?」


「始まっていますよと言われても・・・どうすればいいんですか?」


「まずは動いてみてください。私がカウントしている間に動いてもらって、そのカウントがゼロになったら止まってください。そこから私が二人の位置を当てます。あぁ、一応私から離れすぎないでくださいね?」


要するにだるまさんが転んだの目隠し版のようなものだ。しかも真理は目隠しをしたまま二人の位置を当てるという。


索敵も何もできない状態でそんなことが本当にできるのだろうかと不思議に思っている康太と神加だったが、兄弟子である真理が言うのだ、きっと何かコツがあるのだろうと思いながらとりあえず軽く準備運動をしていた。


「それではスタートします。まずは軽く十秒ほど行ってみましょうか」


そういうと真理は十から時間を数え始める。


康太と神加は視線を合わせてから小さくうなずき、なるべく音を立てないように抜き足差し足忍び足の動き方でゆっくりと、そして確実に先ほどいた場所からずれていく。


「ゼロ。では二人共止まってくださいね・・・そことそこにいますね?」


カウントゼロと同時に康太と神加は止まり、真理はその場所を的確に指さした。


一体どのような方法を使っているのか二人は理解できなかったが、種も仕掛けもなく、ただ耳を澄ましているのだという事実に二人は驚かされていた。


「すごいですね、本当に見えていないんですか?」


「もちろん。疑うのであれば煙幕を張っても構いませんよ?魔力がないことも確認できるでしょうし」


真理の言葉の通り、康太は黒い瘴気を展開し全く何も見えないレベルの濃度で真理を覆っていく。


これで視覚的に康太たちの姿を確認することはほぼ不可能だ。索敵で確認した限り魔力もゼロに限りなく近い。魔術を発動しているそぶりもないため、あとは真理の聴覚次第といったところか。


「神加、作戦だ。姉さんから一本取ってやろう」


「うん、どうするの?」


「そろそろ再開しますよ、もう一度十秒で行きます」


康太は神加と小声で相談し、真理のカウントがスタートすると同時に作戦を開始した。


カウントが開始されると同時に、康太は意図的に大きく拍手をし始める。鼻歌交じりに拍手をしながら足踏みなどを駆使してとにかく騒音を届けていた。対して神加は全く音を立てず、ゆっくりと、そして確実に位置を変えていく。


音がある状態とない状態では相手の位置は探りにくいだろうと考えた結果の作戦だ。普段の囮と同じような原理でもある。


「ゼロ。なかなか考えたようですね。康太君はそちら、神加さんはそちらでしょうか?」


多少自信がなかったようだが、真理が指さした先には康太と神加がそれぞれいる。この状態でも感じ取れるのかと、康太と神加は驚いてしまっていた。


「すごいですね姉さん。これでもばっちりわかっちゃうんですか」


「お姉ちゃんすごい!」


「ふふ、師匠に嫌というほど仕込まれましたからね。魔術を介さない索敵の応用のようなものです。いずれお二人もできるようになりますよ。さぁ、今回の目的はあくまで隠密行動ですよ?音を立てないように動いてみてください」


音を立てないようにと言われてもどのように動けばいいのかわからないというのが正直なところではあった。


だがここはひとつ頑張ってみようと、康太は着ている服を可能な限り脱ぎ捨てる。


衣擦れの音などが把握されてしまうのであればそもそも服を着なければよいのだという結論に至ったのである。


それを見て神加も康太を真似て服を脱ぐ。ほぼ下着状態になった康太と神加は再び真理のカウントがスタートすると同時にゆっくりと動き出す。


素足だからか、康太は足場がよくわかった。訓練場の足元はコンクリートが打ちっぱなしの状態になっている場所もある。


そういった場所は度重なる訓練によってわずかに砂状になっているコンクリートの欠片などがあった。


素足でそれらを踏むことで可能な限り音を出さないようにしながら、康太は猫のような動きでゆっくりと位置を変えていく。


神加は神加で相変わらずこっそり動いている。まるでコソ泥のような動きだが、あれが神加の中でこっそり動くということなのだろう。


「ゼロ。二人とも服を脱ぐのはいいですが、風邪は引かないでくださいね?こちらと・・・こちらでしょうか?」


服を脱いだことまでわかるのかと驚きながら、やはり正確に康太と神加の居場所を指さす真理に康太と神加はどうすればいいんだと頭を抱えてしまっていた。


少なくとも今できる最小の音で行動していたのに真理には気づかれてしまっていた。


「お前たち何をやっているんだ・・・?何かの儀式か?」


「・・・康太・・・あんた何やってんのよ」


この状態でダメならどうしようもないだろうと康太と神加が悩んでいると、下着姿で黒い瘴気に包まれた真理の周りで頭を抱えている康太たちの姿を見つけたアリスと文がけげんな表情で話しかけてくる。


傍から見れば不審者と思われても仕方がない状況なのだが、本人たちはいたって真面目であるために、何をしているといわれても訓練としか言いようがなかった。


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