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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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縛りプレイ

「でも先輩、いいんですか?」


「なにが?」


「俺らが土御門の人間とそこまで訓練するのって、先輩らはまだ直接指導してるからいいかもしれませんけど、俺らはぶっちゃけ部外者でしょう?」


「まぁそうだけど、別にいいんじゃないか?子供じゃあるまいし、喧嘩の相手くらい自分で決められるだろ?」


土御門の人間と協会の支部長直轄部隊の人間がもめごとや戦いを起こしているとなればいろいろと面倒は起きるだろう。


だが康太はそこまで問題になるとは思っていなかった。


というか問題にする方が逆に問題になるだろう。今土御門の二人は自分たちで活動方針や活動内容を決める時期に入ろうとしている。支部長にもそのあたりの許可はすでにもらってある。


今更自分の言ったことを曲げるほど支部長は自分の言葉に責任を持たないような薄情者ではない。


「安心しろよ、お前らに負けるほど俺らは弱くないから。軽くひねってやる」


「あぁん?この前と同じだと思うなよ?今度はぎゃふんといわせてやるよ」


晴と船越は相変わらず仲があまり良くないようで挑発しあっている。何というか似た者同士とでもいうべきなのだろうか。


少なくとも現段階では船越に勝ち目はないように思える。そのあたりどうなのだろうかと康太は文の方に視線を向ける。


「まぁ、普通にやれば晴の圧勝でしょうね。普段からして小百合さんや康太相手に戦ってるんだもの。戦闘の経験値が違いすぎるわよ」


「ほれ見ろ、先輩はよくわかってる」


「先輩どっちの味方ですか!」


「客観的な意見を言っただけよ。でもね晴、覚えておきなさい。経験豊富な魔術師が一番怖い行動っていうのは、何をしてくるかわからない経験の薄い魔術師がやることが多いのよ」


文の言葉は重みがあった。魔術師としての経験が薄い康太がやってきたことを間近で見てきた文からすれば、次の瞬間何をするか分かったものではない康太の行動は恐怖以外のなにものでもない。


それは味方の時でも敵の時でもそうだ。


「それに、あんたは敵を前にして油断できるほど強くなったのかしら?」


「・・・おっしゃる通りです。すいません、生意気を言いました!」


晴は思うところがあったのだろうか、真剣な表情になりながら小さく頭を下げる。


油断が最も恐れるべきものであるということは晴も理解しているようだった。そんな晴を見ながら明は呆れながら小さくため息をついている。


「先輩、私たちが訓練をするのはいいんですけど、どこでやるつもりですか?まさか小百合さんの店じゃないですよね?」


「さすがにそれはちょっとね・・・定期的に場所を借りましょう。そうしたほうがあんたたちのためにもなるわ」


「場所を借りるって・・・どこを?」


「私たちは一応三鳥高校を使うことだってできるのよ?先輩には私が話を通しておくから」


以前も三鳥高校を使って戦闘をしたが、今度も同様、定期的にこの場を借りて本格的な戦闘訓練を行うようだった。


今度こそ勝つという風に意気込んでいる船越と、今度も負けないと意気込んでいる晴。そして二人を見ながらあきれてものも言えなくなっている明と佐々木。両者の陣営でどのような立場になっているのかがよくわかる対比である。


「まぁでも、そのまま戦うっていうんじゃあまりにも土御門チームが有利すぎるから、ちょっと縛りでも加えるか」


「え!?俺ら手加減しなきゃいけないんですか!」


「手加減っていうか、今後のことを考えての訓練の一環だ。これはお前たちのための訓練でもあるんだから」


そう言いながら康太は土御門の二人の肩を掴んで小声で話す。


「お前たちが普段使ってる予知の使用を禁止する」


「え!?マジっすか!」


「それは・・・ちょっと・・・」


今まで予知の力に頼ってきたからこそ小百合の訓練にもついてこられたし、康太と訓練していても何とかなってきた。


だがその予知の力を借りなければどうなるのか、晴と明は想像もできなかった。


「一度やってみろ、いろいろと見えてくるものがあると思うぞ。何よりお前たちの戦い方が変わるかもしれない」


康太はそう言いながら笑う。船越と佐々木はいったい何を封じるのだろうかと首をかしげている。


だが予知を差し引いても晴と明の素質、そして才能面の方が船越、佐々木両名のそれを大きく上回っている。


おそらく技術や実戦経験もそうだろう。


予知を使わずにどこまで戦えるのか、それは土御門の戦いではない。ただの魔術師としての戦いになる。


「随分と厳しいわね」


「まぁまぁ、あいつらが土御門でいる以上は絶対にぶつかる壁だろ。未来を見てても見えないものがある。未来を見てるからこそ見えないものがある。最近そういうのが浮き彫りになってきてたしな」


よく土御門二人と訓練している康太は、最近土御門の二人が伸び悩んでいるのを感じ取っていた。それに対する対策がこの予知封じなのである。



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