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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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進む未来の話を

そんなことを話しているとアリスからの返信が康太の携帯に届く。内容は門の作成の条件とその対価とそれをやるうえでのモチベーションについての内容だった。


さすがにこれほどの仕事となるとアイス程度で動くつもりはないらしい。最新のゲーム機一式と、有名ゲームソフト、そしてネット環境を用意しろという条件を提示してきた。


逆に言えばその程度でいいのかと康太は少しアリスの仕事単価に疑問を呈したくなるが、そのあたりは置いておくことにする。


「アリス的には門を作ること自体は不可能ではないらしいです。あとは報酬次第だと」


「あぁそうだろうね。彼女が門を作れないはずがない。でもそういえば拠点を作るって話だけど、どんな拠点にするんだい?」


どんな拠点にするか。そう言われても正直どうすればいいのかわからないというのが正直なところであった。


完全に趣味に走っていいものか、ここは一応部隊の上役である支部長に話を聞いておいたほうがいいだろう。


「俺的にはこう、ザ秘密基地!みたいな感じの拠点を作りたいなって思ってるんですけど、ダメですかね?」


「ダメとは言わないけど・・・表現が抽象的すぎてオーケーしにくいなぁ・・・具体的にほら、一軒家とかビルとか地下とか、そういう感じの表現をしてくれると助かるんだけど」


「そうですね・・・どっかの山の内部をくりぬいてそこに地下基地を・・・」


「現実的に作れる構想を頼むよ。必要な設備とかを考えていくとそのあたりの規模はある程度想定できるんじゃないかな?」


実際問題できるかできないかと言われると、山の内側をくりぬいて地下空間を作成するのは現実的ではない。


それならまだビルなどの一般的な建物の方が作りやすいだろう。


実際に作るとなれば人手もいる。街の中に作るとそれだけ目立つかもしれないが、そのあたりを擬態可能な建物であればどうとでもいいわけはできる。


重要なのは一般人の目につかないことと、そこにあっても不思議ではないと思うこと、何より部隊の拠点として必要な設備を入れられるだけの広さなどを確保できることだ。


「そうですね・・・建物の中に必要な設備としてはまず作戦会議室、武器装備保管庫、ロッカールーム、武器道具作成用の工房、仮眠室、訓練室、談話室、隊長室、あとは・・・」


康太はとりあえず文と倉敷とで話し合った必要そうな設備を口に出していく。


それだけの数の設備が必要となると一軒家レベルの建築物では広さが足りないだろう。


となれば複数階建てのビルが最低限必要になってくる。


だが何の理由もなく建てられるビルなど不審でしかない。そういう意味では大きな矛盾を抱えている。


「地上階だけじゃなくて地下を多くするっていうのも手かな。上部二階から三階建てのビル、上の方は会議室とか隊長室、応接室、談話室、仮眠室にしておいて地下階に工房、武器保管庫、訓練室とかを置くっていうのがセオリーかな?でもそうするとどこに作るんだい?田舎にしてもいきなりビルが建てばそれなりに目立つよ?」


何か理由があって作られる建物であればしっかりと周辺住民にも説明できるためそこまで気にする必要もないかもしれないが、特に理由もなく、店舗がいきなり作られてただの廃ビルになるというのであれば明らかにおかしい建築物として目立ってしまう。


田舎でも都会でもそのあたりは同じことだった。


「今ある建物を改造とかは」


「大々的な地下階を作るってなるとなかなか難しいと思うよ?特に訓練室だったら二階層ぶち抜きで作ったほうがいいだろうし、壁とかは防壁にしておかないと万が一が怖いからね。大々的な工事になるよ」


「作るにしてもなかなか難しいか・・・問題はどこに作るか、どの規模にするか辺りですか」


「あとはライフラインをどうするかだね。つなぐのであれば協会の方でつてがあるから何とかできるけど」


協会の魔術師が所属している電力、ガス、水道会社などであれば拠点にそういったライフラインを引くことは難しくない。


場所によってはかなり大規模な工事になるかもしれないが、ある程度建物さえできてしまっていれば問題はないだろう。


「俺ら何回か敵の拠点を攻略したじゃないですか?それを流用するのはどうですか?」


「あー・・・確かにいくつかそれらしいのはあったね。別荘とか倉庫とか・・・それを使うのかい?」


「一時的にでもあればいいかなと。仮の拠点として」


「仮の拠点って言っても、君が攻略したところって大体半壊してるじゃないか。それなら新しく作ったほうがいいと思うよ?」


「田舎か都会か・・・田舎の方がばれにくいけど住民は気にするかぁ・・・」


「都会なら別になんかの建物ができてもそこまで気にされないけれど、いろんな意味で厳しくはなるだろうね。一般人の目につけば何らかの調べ物が入ることも珍しくはないよ」


「いくつか考えていることがあって、それならそのあたりはごまかせるかなって思ったんですけど・・・」


「へぇ、どんな?」


康太はとりあえず現状考えている案を提示する。


とはいえまだ誰の許可もとれていないし、この案にかかわってくる人物の許可もとれていない。

そのため支部長に話すのも少しためらっていたほどだ。


だが先ほどのリストを渡した以上、無関係とは言えないためにそれが現実的に可能かどうかを話しておく必要がある。


それが可能であるのであれば、本格的に動くのも不可能ではない。










「なるほど・・・でもそれは本人にも確認を取らないといけないね」


「そうなんですよね。でも今何やってるのかこっちでも把握できなくて・・・」


「その連絡は僕の方から取っておくよ。もしかしたら快諾してくれるかもしれないし、そのあたりは聞いてみないことには分からないね」


康太と支部長の相談の中にはもちろん拠点だけではなく部隊員としての勧誘という意味での話も進められている。


こればかりは本人の意向も聞いてみないことには何とも言えないのだ。


「じゃあ拠点と勧誘の件は進めておくとして・・・あれかな、君の部隊が本格的に動き出したら僕のお願いは大まか聞いてくれるんだよね?」


「・・・内容によりますが」


一応支部長の直轄部隊の人間という扱いで隊員を募集するのだ。それなりに腕の立つ人間及び、信頼のおける人間がやってくることは間違いない。


そしてその結果支部長の命令を聞かなければいけないのも理解していることだろう。


「じゃあいくつかお願いしたい案件があるんだよね。急ぎじゃないんだけどさ。それなりに人数がいないと難しいと思って放置してたんだけど」


「師匠がらみですか?」


「当たらずとも遠からずってところかな。昔クラリスがつぶした組織だったんだけど、それが徐々に復活してきててさ、もう一度綺麗にしてほしいんだよ」


「それって急ぎですか?」


「いやいや、まだ放置してて全然平気。だから今回の敵の件とかが全部片付いて、本格的にこの部隊が動き出してからの初仕事になるかな。それまでにこっちも情報は収集しておくようにするけど」


小百合が昔潰した組織ということもあってそれなりに面倒くさい組織であるのは間違いないだろうが、何より驚いたのは小百合がつぶしたにもかかわらず再び復活しかけているという事実だ。


小百合のことだから完全に叩き潰したのだろうが、そこから復活できるというあたりなかなか根性のある連中が集まっている可能性がある。


「ちなみにその時って師匠だけが攻略したんですか?」


「いいや、当時・・・まだクラリスたちが学生の頃だからエアリスも一緒だったよ。それに加えて他に何人か一緒に行動して潰した感じだね」


「師匠だけじゃなくてエアリスさんも・・・ってことは支部長がまだ前任者の時代ですか」


「そういうことだね。ぶっちゃけ負の遺産って感じが強いんだけど・・・まぁそのあたりは置いておくよ。それを君たちにまた潰してもらいたいんだ」


「潰すのは構いませんけど・・・どんな組織なんです?」


「簡単だよ、魔術協会以外の魔術組織。しかもあんまりよろしくないことばっかりやってる感じだね・・・以前はいくつかの民間企業や政界に暗示の魔術とかを使って取り入ろうとしていた動きがあったんでそれを口実に潰したんだよ」


「規模は?」


「当時は百五十人くらいの規模だったかな?クラリスたちが頑張って全滅させてくれたんだけど・・・たぶんその弟子か子供世代がまた集まってるって感じなのかな?」


「もうすでに怪しい動きを?」


「いや、微妙だね。ただトップの名前が同じで、名乗ってる組織名も同じとなれば、怪しいと思うのも無理ないと思わないかい?」


支部長の言うことももっともだし、部隊としての初仕事が荒事というのもある程度覚悟はしていた。


そのためそれらが不可能だとは言わないが、最盛期に百五十人程の規模を有した魔術師集団を相手にするとなるとなかなか骨が折れそうである。


問題はその組織がどの程度まで回復しているのか、そしてどの程度まで勢力を拡大しているのかという点である。


その辺りの調査は支部長に任せるほかない。


「まぁこの話は少し覚えておいてくれればいい程度だと思ってほしいな。クラリスに聞いてみれば当時の話とか聞けると思うよ?」


「わかりました。暇があれば師匠に聞いてみますよ。あとはローラローの居場所がわかるまでは動けませんね」


拠点作成にしても部隊の編成にしても、ある程度できることをやってしまったためにこれ以上動くことができない形になってしまった。


後は自分たち個人個人で部隊に勧誘したい魔術師に声をかける程度のことしかできそうにない。


「支部長的に部隊に入れてほしい人員っていますか?」


「唐突だね。んーそうだなぁ・・・連絡要員的な意味で何人か専属魔術師は入れてほしいかなぁ・・・」


「戦闘能力高いのでお願いしますよ」


「君と比べられると困るけど・・・わかった、多少良さそうなのを見繕っておくよ。あとは君たちの方でしっかりと鍛えてくれると嬉しいかな」


「ほう、いいんですか?滅茶苦茶鍛えますよ?」


「・・・ごめん前言撤回。ほどほどに鍛えてあげてくれるかな?」


専属魔術師の命の危険を感じたのか、それとも単純に強くなりすぎる専属魔術師のことを考えたのか、支部長は首を振りながらため息をつく。


専属魔術師のレベルが上がることも強くなることもありがたいのだろうが、康太たちに鍛えられるというのはいろんな意味で危険である。


戻ってきたらモヒカン頭になっていたなどということがないように適度に鍛えなければならないようだった。


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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