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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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組織の難しさ

さすがにこのまま無視するのは申し訳ないなと、康太は固まったままのアリスの方を向く。


「で?何しに来たんだよアリス」


「・・・優秀な人材を求めているという声が聞こえたから来た」


もうすでに若干拗ねているアリスを見て康太たちはまたこのパターンかとあきれてしまう。


「それはあれか、仲間になりたいのか」


「・・・アリスは仲間になりたそうにそちらを見ている」


「いつから魔物になったのよあんたは・・・」


どうやら康太たちが話しているのを聞いたか、康太が部隊の隊長になるということを面白く思ったのだろう。


可能なら一緒に楽しみたいと考えているようだったが、康太からすればアリスが一緒に行動するというのは正直微妙なところだった。


「でもアリス、俺の部隊って基本的に支部長の専属っていうか直轄扱いだぞ?たぶんいろいろと面倒なことをやらされるぞ?お前が部隊に入ったら、たぶんいろいろと頼むぞ俺」


康太は今まで極力アリスには力を借りずにやってきた。だが部隊として配属されるからにはアリスにもそれ相応に働いてもらわなければ他に示しがつかない。


働かないものを所属させるだけの余裕がある部隊なのかどうかはさておいて、アリスが部隊にいるだけで他に与える影響は大きいのだ。何かしらの行動をしてもらわないと後々面倒が呼び寄せられるのは間違いない。


「ならばそうだな。門外顧問のような組織内に居ながら部外者であるという、いわゆる相談役のようなポジションを用意すればよい。依頼などの時に行動をとることはないが、有事の際には協力するという立場だ。どうかの?」


「文、そういうのってどうなんだ?」


「あんたが隊長なんだからあんたが決めなさいよね・・・まぁでも、そういう組織における内部監査機関じゃないけど、組織に居ながら組織ではないっていう微妙な立ち位置の人たちはいるわね。奏さんのところにもいるじゃない?」


「いるの?」


「・・・書類に結構書いてあるわよ・・・そっか、あんたそういうのあんまり見てないんだっけ」


康太と違い、文の書類の処理のレベルはすでに実務レベルに達している。奏の部屋にある書類を見て処理しているだけで、文はすでに奏の会社の組織体制を大まかながらではあるが把握しているのだ。


「じゃあ組織的には、アリスの言ってた門外顧問っていうのも別に不思議ではないってことか」


「不思議ではないけど・・・できて少ししか経ってなくて、なおかつ少人数の組織に必要な人員とは思えないわね。一緒になんかやっててくれたほうが助かるわ。ぶっちゃけただ飯ぐらいと同じだもの」


そう言いながら文がアリスの方を見ると、アリスは憤慨したように鼻を鳴らす。


「何を言うか!私が門外顧問になればあれだぞ!いろいろアドバイスしてやるぞ!それこそグーグル先生もびっくりなくらいにいろいろ教えてやるぞ!」


「ネット知識と比べられてもなぁ・・・まぁとりあえずアリスは参加したいと・・・でも頻繁・・・っていうか積極的に依頼とかに参加はしたくないと」


「そういうことだ」


めんどくせぇ。


康太と文、そして倉敷が同時に思った感想がこれである。


アリスが面倒くさいのはいつものことだが、自分のやりたいことをやりたいというのもいつものことなのだが、こうも堂々と言われてしまうと少し難色を示してしまう。


特に康太がトップとなるべき組織で、門外顧問という、トップにも口を出すことができる役職を与えるというのは良くも悪くも強く影響を及ぼす。


「どうだろう文、アリスを部隊に入れて・・・というか部隊の門外顧問にした場合、どんなメリットとデメリットがある?」


「たくさんあるわよ。メリットは言うまでもなく、アリシア・メリノスという最高の魔術師を味方に引き入れることができること。知識、技術、実力、影響力、どれをとってもアリスの右に出る者はいないわ。一対一だろうと、多対一だろうと、アリスに勝てる人間なんて今の世の中にはいないでしょうね」


手放しでほめる文に、アリスは胸を張って渾身のどや顔をしている。私を味方に引き入れたほうが良いぞとその顔面がつぶやいているかのようである。


「けど、同時に強い影響力がありすぎるせいで、組織、この場合では部隊ね。部隊の影響力が過大、あるいは評価が過少になってしまう可能性がある。あと部隊の長である康太よりもアリスの影響力がありすぎて康太が置物になる。ついでに部隊の二分化もあり得るわね。康太に付き従う人と、アリスに付き従う人で分かれてくると思うわ」


「組織に入れるデメリットがすごいでかいな・・・組織の内部分裂を誘発する存在ってことだろ?」


「そうね・・・特に門外顧問なんて口出しできるような立ち位置を与えると・・・クーデターを誘発する可能性も」


「わ、私はそのようなことはしないぞ!」


「アリスはそれをしなくても、アリスを信奉する人間ができた時、そいつらがそれをやる可能性があるってことよ。自分の影響力の強さをもう一度自覚しなさい。あんたはこの世界で一番の魔術師なんだから」


文から一番と言われてアリスは素直にうれしそうにするが、一番であるということは常に良い事ばかりではない。


特に人の集まる組織では、それは顕著に表れてしまう。


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