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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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人選は悩む

「っていうか師匠だけじゃなくてエアリスさんとかにも来てほしいんだけど、ベル、それって平気か?」


「クラリスさんがいるって知ったら多分行きたくないっていうと思うわよ。っていうかクラリスさんを出すって本気なの?」


「まぁ師匠がオッケーすればの話だけどな。俺が封印指定になるかどうかの瀬戸際なんだ。なるべく戦力は整えたいだろ?」


康太の言葉も別に間違っているわけではない。封印指定になったからといって、康太が今後の生活態度を変えるわけではないにせよ、なるべく封印指定にならないほうがいいのは間違いないのだ。


ならば可能な限り戦力を集めたいと考えるのは自然な考えである。


そこで小百合に登場してもらうとなるとまた少し面倒なことにはなるが。


「あと俺がお願いしてきてくれそうなのが師匠たちくらいしかいないからな。土御門の二人を連れていくのはちょっと・・・いやでも捕縛するなら一応連れて行って損はないのか・・・?」


「単純な戦闘だけじゃない分予知の情報を得られるのはでかいよな。俺は連れて行ってもいいと思うぞ?あいつらも多少なりともついてこられるようになってるだろ」


土御門の双子と一緒に行動したことのある倉敷からの後押しもあるが、問題は支部長が何というかだ。

一応出向という形でこちらにやってきているため、下手に怪我をさせたくはない。


土御門の双子の守り手として誰かがついてくれるというのであればありがたい話ではあるが。


「ジョアさんを二人につけたら?あの人なら守りもこなせるでしょ?」


「それも手だけど・・・姉さんは攻撃手に回ったほうがいい気がするんだよなぁ・・・あるいはアマネさんに声かけるか・・・?」


「あーっとそこまで。残念ながらアマネには別の仕事についてもらってるから無理だよ」


「ならツクヨさんに来てもらうか」


「アマネさんのお弟子さん?まぁ・・・あの二人と一緒に動いたこともあるか・・・」


サニーたちを含めたあのチームを土御門の双子につければ最低限身を守ることは可能だろう。


今後彼らの戦闘能力を上げるいいきっかけにもなるかもしれない。康太が声をかけて集められそうな人材はその程度だ。


人望がないというのはこういう時につらいのである。


「とにかく土御門の双子を連れていくのは良しとして」


「僕まだ全然オッケーしてないけどね。むしろ連れて行ってほしくないんだけど・・・」


「あとはどうするか・・・いつもの通り戦闘は俺とベルとトゥトゥがやるとして・・・姉さんには後詰をお願いするか・・・」


「ちょっと待ちなさいよ、とりあえず予定も確認しないで話を進めるのはやめなさい。せめて本人たちに来てくれるかどうかくらいは聞きなさいよ」


文の言葉にそれもそうだなと、康太はとりあえず小百合に電話をかけてみることにした。


『なんだ』


数回のコール音の後に聞こえてくる不機嫌そうな声にひるむことなく、康太は本題を告げることにする。


「師匠、今度ちょっと人を捕まえなきゃいけないんですけど、手伝ってもらえませんか?」


『・・・人を捕まえるという行動に私が必要だとは思えんな』


「相手が本部幹部のローラローでして、たぶん戦闘は避けられないんですよね。なので戦力を集めてます。後で姉さんにも声をかけるつもりです」


本部の幹部が相手であるということと、戦力が必要だという事実に小百合は何か思うところがあるのかしばらく沈黙する。


どれくらい沈黙が続いただろうか、電話の向こうから悩むような声が聞こえてきたかと思うと、小百合は結論を出す。


『私は今回はいかん』


「面倒だからですか?」


『それもあるが・・・まぁいい。とにかくいかん。真理の方への交渉は自分でしろ。あいつもそろそろ落ち着くころだろうからな、手を貸してくれるかもしれんぞ』


「わかりました。それじゃあ失礼します」


案の定というかやはりというか、小百合には断られてしまった。理由を妙に濁していたのが気になるが、とりあえず続いて真理に声をかけることにする。


『はいもしもし佐伯です』


「お疲れ様です姉さん。康太です。今お電話平気ですか?」


『大丈夫ですよ、どうしましたか?』


康太はとりあえず事の次第を真理に説明すると、真理は自分のスケジュールを確認しているのだろう。

何か紙をめくるような音が聞こえてくると同時に悩むような声が聞こえてくる。


『今度の水曜日さえ外してもらえれば大丈夫ですよ。久しぶりに康太君の成長もみたいですから、ご一緒させてください』


「ありがとうございます!よろしくお願いします!」


康太が通話を切ってガッツポーズをすると、文と倉敷は小さく安堵の息をついた。


「クラリスさん不参加、ジョアさん参加ね」


「おう、戦力一気に倍だ。あとは土御門の二人にも声かけてっと・・・」


康太はとりあえず自分の集められる戦力を集めるために方々へと連絡をかけ始めた。


誘い方自体はまるで遊びに行くかのような気楽さだ。誘われた側からすればかなり緊迫感があるような内容に思えるが、そのあたりは康太が気にしていないため、気にするほうが野暮だというものだろう。


「参加は私、ビー、トゥトゥ、ジョアさん、土御門の双子に・・・うちの師匠にも声かけておく?」


「あぁ、師匠が来ないならエアリスさんが来る可能性は高い。頼むぜ」


「はいはい・・・過剰戦力な気がするけどね」


「まぁそういうなって。アリスは今回どうする?」


「・・・ふむ・・・ようやく私に声をかけたか。せっかくだから封印指定としての力を見せつけてやっても」


「いや、通訳として。来るか?」


「・・・行く」


「よしこれでアリスも参加な。結構な大所帯になりそうだな」


相変わらず通訳としてしか行動させてくれない康太にアリスは少ししょんぼりしていたが、アリスの力を本気で活用しようとするとこの間のように地形そのものが変わりかねないためにあまり多用できないのだ。


康太の場合単純にアリスは働かせるものではないと思っているだけなのだが、そのあたりは置いておくことにする。


「師匠も参加してくれるって。すごいことになりそうね。相手がかわいそうになってくるわ」


「僕でもこの数を一度に敵に回すのは嫌だなぁ・・・ブライトビーだけでも嫌なのに・・・その兄弟子もいるわ、チームメイトはいるわ、その師匠までいるわ・・・一度に現れたら絶望しか感じないね」


「まぁまぁ、相手がどんな戦力を持っているかもわからないわけですから。それに師匠がいないから戦力的には最大ではないですよ?」


「これで最大じゃないっていうのが恐ろしいんだよ・・・サリエラが来ていたらそれはそれで恐ろしいけど・・・彼女には声かけないのかい?」


「あの人は私生活が忙しいんで。いや、普通の仕事だから私生活ってわけではないのかな・・・?」


会社にいることが私生活になっているために、奏にとっての私生活との境界線があいまいになってるのは事実だ。


彼女が最後に休んだのはいったいいつなのだろうかと気になるところではある。今度また仕事を手伝いに行ってやらなければならないなと康太と文は心に決めていた。


「というか、思えばジョアさんと一緒に動くのはずいぶんと久しぶりかしらね」


「そうだな、姉さん最近忙しかったし。そろそろ魔術師として復活してもらわないと」


「早く復活して僕の負担を減らしてほしいんだよね。彼女がいるといないとではクラリスの被害がだいぶ違うからさ」


小百合の後始末係として活動していた真理がいれば、小百合が引き起こす被害をかなり減らすことができるようになる。


もちろんすべてなくすことができるわけではないが、それでも十分すぎるほどに支部長からすればありがたいのだ。


「とりあえずは相手の居場所がわかるまではどうしようもないけど・・・あとは連絡体制と移動手段を・・・あぁそうだ、支部長、また飛行機とばしてくれますか?」


「簡単に言ってくれるね本当に。飛行機とばすのだってただじゃないんだよ?」


「わかってますよ。だからお願いしてるんじゃないですか。飛行機とばしてください。あとは俺らで片づけるんで」


「君だんだん僕に遠慮なくなってきてるよね?いやまぁいいけど?飛ばせばいいんでしょ飛ばせば。ただし落とさないでよ?」


「それは時と場合によりけりということで一つ」


「ダメだよ。絶対落とさないでよ?」


「大丈夫ですよ支部長。私と師匠がいる時点で落とさせません。ビー一人ならうまく止めて見せます」


文の一言に支部長は大きく安堵の息を吐く。文がストッパーとしていてくれるという事実と、引率者に近い形で春奈もいてくれるという事実が支部長の胃に癒しを与えていた。


少なくともこの二人がいれば康太を止めることは可能だろう。


「まぁ今回は姉さんも一緒なわけだけどな。俺と姉さんが落としたほうがいいって判断したらそうするからな?」


「それは・・・」


康太一人ならば文と春奈が言いくるめれば何とかなるかもしれないが、もし康太と真理が一緒になって飛行機を落としたほうがいいなどと言い出せば面倒なことになるのは間違いない。


少なくとも文だけでは止められない。二人が一緒になった時春奈と一緒でも止められるかどうかわからない。


「トゥトゥ、その時はお願い」


「えぇ・・・俺っすか。勘弁してくれませんかね。俺、あの人に逆らえる気がしないんだけど」


倉敷は最初に小百合の店に行った時に真理に組み伏せられながら回復されるという謎の状態に陥ったこともある。


その時以来真理に対しては苦手意識があるのかもしれない。


もっともそんなことを気にして放置していれば間違いなく飛行機が落ちることになるのだが、そのあたりは倉敷もわかっているだけに困ってしまっていた。


「アリスも止めてよ?さすがに飛行機が落ちたら大変なことになるわよ」


「だが魔術の隠匿という意味では大きな破壊をしてもばれにくくはなるぞ。理にかなった行動ではある」


「やめて、お願いだから止めて。あんただけが最後の頼りなんだから」


通訳以外で頼られることが久しぶりだからか、アリスは胸を張って嬉しそうにしている。


単純な奴だと思いながら康太は胸を張るアリスを見て苦笑してしまっていた。




















ローラローの潜伏先がわかるまで、康太たちは待機を余儀なくされていた。


仕方がないとはいえ、封印指定にされる瀬戸際なのだ。妙な行動をとって本部に嫌な印象を与えるのは良くない。


だがだからといって何もしないというのも暇で仕方がなかった。


そのため、康太はとりあえず部隊の隊員の選出を行うことにした。


なし崩しの形ではあるが、康太は支部長直轄の部隊を任されることになってしまったのだ。ならばその隊員を集める必要がある。そこでとりあえず康太と文の拠点で文と倉敷に意見を聞くことにしていた。


「んー・・・土御門の双子はダメなんだよな?」


「あの二人は出向って形で来てるからな。うちの・・・魔術協会の人間じゃないとダメだな」


あの二人ならば実力的には申し分ないのだが、いろいろと組織間で気にしなければいけないことが多いために却下された。


当然といえば当然かもしれないが。


「それじゃあ・・・真理さんとかは?」


「俺が隊長なんだぞ?姉さんを俺の部下にするっていうのはなぁ・・・」


「じゃあ同じ理由で春奈さんもダメだな。っていうかそれだと戦力がた落ちじゃね?」


「仕方ないだろ、俺がトップって時点でお察しなんだから」


康太が組織の長になる以上、康太よりも上の人間が隊員になっていると指揮系統の乱れが生じる可能性がある。


指揮系統の乱れを考慮しても真理を部隊に入れることによって得られるメリットは計り知れないが、それでも康太は真理を自分の部下にするのは嫌だった。


「じゃあこの間一緒に行動したサニーさんたちは?ツクヨさんとかもいるなら結構頼りになるぜ?」


「確かに。打診しておく価値ありだな」


「確か私がいない間に一緒に行動した人だっけ?アマネさんのお弟子さんもいるとか?」


「そうそう、なかなかいい防御をするらしいんだよ。たぶん経験積めば結構いい線行くと思うんだよな」


倉敷はその防御を実際に見ていないためなんとも言えないが、一緒に行動したサニーに関しては良い魔術の使い方ができていた。


実戦を知っている動きなだけに合わせるのが簡単だったというのは倉敷にとっては好印象である。

普段合わせにくい康太と一緒に行動しているからその考えは強く残っていた。


「他には?誰か心当たりとかいるか?」


「そうねぇ・・・あ、トール君とかどう?」


トール・オール。康太たちの高校に通う一年生魔術師。本名船越だ。かつて康太に戦いを挑んで瞬殺された人物である。


今は地道ながらも協会で依頼を重ね、修業をしながら少しずつ強くなっているというのを聞いたことがある。


「なるほど、今後鍛えていけばいい戦力になるかもしれないな。後で声をかけてみよう。他には?」


康太たちが今まで遭遇してきた中で、康太たちのことを好意的にとらえている魔術師はかなり少ない。


だからこそ選出できる人物はかなり限られる。さらに言えば日本支部所属であることが好ましいのだ。

支部を超えて、あるいは本部をやめてまで部下になってくれとは言えない。


「あ、テータさんはどうよ。あの人の戦闘能力は知らないけど、あの人武器とか防具作ってくれるじゃん?そういう人は必要だぞ?」


「お、いいね、支援部隊的な感じか。後で声かけておこう」


「それならマウ・フォウさんもいてくれると嬉しいわね。あの人の調査能力は貴重よ?」


「いいねいいねどんどん出てくる。マウ・フォウさんに関しては実力高すぎて本部に徴用されそうだけど・・・まぁ声をかけるだけならタダだな」


部隊というのは何も戦いだけをすればいいというわけではない。部隊としての運用は平時から異常時に至るまで、部隊一つでありとあらゆることが完結していることが好ましい。


事務処理もそうだが装備の新調、情報の収集、移動、援護など、挙げれば必要な人材はいくらでもいる。


康太が今まで遭遇してきた魔術師の中で、それらを持っている者は数多くいる。その中で康太を好意的に見ている人物は限られるが。


「あとは・・・交渉の場に来てくれる人がいてくれると助かるわね。毎回私だけだとつらいものがあるわ」


「交渉系か・・・正直あんまり心当たりはないな・・・」


「あと索敵とかが得意な人間もいたほうがいいだろ。鐘子もそういうの得意だけど、何でもかんでも任せると処理パンクするぞ?」


「そうね、ある程度何でもこなせるオールラウンダーが欲しいけど・・・」


そんなことを話していると部屋の扉が勢いよく開き、奇妙なポーズをとっているアリスがやってくる。


「今私の話をしたかね?オールラウンダーといえば私を置いて他にいないだろう?」


いつから話を聞いていたのだろうかと康太たちは目を細めるが、とりあえずアリスのことは放置して話を先に進めることにした。


「でも実際難しいぞ?口も達者で索敵もできて?そうなってくるとかなりきつい。ステラさんが近いけど・・・」


「でもそういう人を後最低でも一人、可能なら二人は用意しておきたいわよ?状況に応じて策も考えられる人じゃないと」


「でもそういう優秀な人ってそうそういないだろ。そういう人は大抵もうどっかに所属しちゃってるだろうし」


康太たちがアリスを無視して話を進めている中、アリスは妙なポーズのまま動きを止めてわずかに体を震わせていた。


誤字報告を十件分受けたので三回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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