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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
五話「修業と連休のさなかに」
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できること

「それで小百合さん、今回の件に私たちが関わるのはいいんですけど・・・明日からはどう動くんですか?」


「そんなもの決まっている。今回の相手を叩き潰す」


「いや、それはわかってますけど・・・具体的にはどうやって?」


小百合が今回の相手を叩き潰したいのはこの場にいる誰もが知っている。今知りたいのは何をしたいかではなくどうやってそれをするかである。


今のところ相手がどこにいるかもわかっていない。手がかりもほとんどない状態だ。そんな中目的の魔術師を見つけるだけでもそうとう時間がかかるだろう。


「そのあたりも考えてある。真理、明日協会に行ってこの辺りに潜伏している魔術師を洗い出せ。私はこいつらと一緒に町を歩いて大まかな所在を把握する」


「それが一番手っ取り早いでしょうね・・・わかりました。明日は別行動になりそうですね。康太君達の身の安全は守ってくださいよ?」


「わかっている。最低限配慮はしてやる」


所在を調べると言っても実際どうやるのか康太はほとんど理解していなかった。

そんな康太の難しそうな顔を見たのか、文が助け舟を出してくれるようだった。


「魔術師っていうのは大抵どの場所にいるかっていう申告を出すものなのよ。まぁ大抵は拠点付近の申請だけで細かくどこにいるとかは出さないけどね」


「へぇ・・・でも今は連休中だぞ?そんなの調べたってあてにならないんじゃ・・・」


「バカか、あれだけの人間を囲うのには恐らく相当な時間がかかっている。ゴールデンウィークどころか今年が始まるよりずっと前から用意していた可能性もある。この辺りが拠点と見て間違いないだろう」


これで用意していたのがただのゴーレムや攻撃魔術なら特定は困難だったかもしれないが今回こちらへのアプローチに用意されたのは幸か不幸か一般人だった。


あれだけの数を違和感なく自分の手中に収めるにはかなりの時間がかかっただろう。その為この近辺を拠点にしている魔術師であると小百合は予想したのだ。


「かなり前から決められていたことなのか、それとも師匠がこの場に来るから用意してあった駒を使うつもりになったのか・・・どっちかによって対応が変わりますね」


「変わるものか、どちらにしろ叩き潰す。話を聞くのはその後だ」


話を聞いてから戦うなどという選択肢は最初から小百合にはないようだった。考えてみれば当然かもしれないが彼女が言うと非常に攻撃的かつ暴力的に聞こえてしまうのは気のせいではないだろう。


今回の場合相手は先手を打ってきている。しかもこちらに何のアプローチもなくいきなり敵意丸出しの行動をとっているのだ、小百合のいうように先に戦闘不能にさせたほうが安心できるのは間違いではない。


「師匠、言っておきますけど殺しちゃだめですよ?」


「そんな面倒なことをするか。じっくりいたぶってやるだけだ。お前もちゃんと特定しておけ、その為のコネは用意してあるだろう?」


「・・・まぁそりゃそうですけど・・・」


真理が協会に出入りし、なおかつ協会の魔術師に好意的にみられているのは真理が温和な性格であり、なおかつ小百合が起こした面倒事の後始末のほとんどを彼女がやっているからに他ならない。


言ってしまえば同情からくる感情なのだ。


小百合の弟子になってしまったが為に後始末を押し付けられるという不憫な魔術師。周囲の人間から真理はそのように認識されているだろう。


実際その認識は間違っていない。もし真理が別の魔術師の弟子になっていたらこんな風にはなっていなかったかもしれない。


そうやって真理は周囲の人間から同情されながらも少しずつ支持を集めてきたのだ。


行いは品行方正、人間的にも魔術師的にも優秀で性格も当たり障りなく世話好きと嫌われる要素の方が少ないようなタイプだ。味方を作る要素には事欠かなかっただろう。


それがいま役立っているのだ。調べものをするにしても、誰かを探すにしても協会の人間に多少話を聞けばある程度は把握できる。


今回のような魔術師の所在地を確認するのだって、人間を多人数操れるだけの技術を持った魔術師を探すのもそこまで苦労しないだろう。


「私達は小百合さんと一緒に囮役ですか?」


「そうだ・・・まぁできることは少ないだろうがある程度の索敵を頼みたい。もし向こうがいれば方向くらいは把握できる」


「・・・把握できるって・・・魔術でですか?」


「いや、私の勘だ」


小百合の勘というものがどこまで信用できるのかわかったものではないが、実際彼女は何者かに見られているという事を感じ取って見せた。


恐らく普通の人間にはない第六感のようなものが備わっているのだろう。そう言う意味では魔術よりも恐ろしい勘だ。


理屈抜きで察知される。しかもその方向まである程度把握されるとなるともはや対処しようがない。


「・・・師匠、俺は何をすれば?」


「お前は私達の荷物持ちでもしていろ」


意気込んで挙手した割にできることは荷物持ちオンリー。これでは一般人とできることに違いがない。


だがはっきり言って今の康太は足手まとい以外の何物でもない。文のようにいくつも魔術が使えるわけでもなければ真理のような情報収集ができるというわけでもない。


できる事と行ったら肉体的な労働のみなのだ。こういう時未熟である自分が恨めしく思えてしまう。


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