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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十一話「その有様」

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神化状態

「その姿もだいぶ安定して出せるようになってきたな」


「まだ時々失敗しますけどね。ようやく慣れてきました」


小百合との修業中、康太は時折神化の状態を発現するべく訓練を行っていた。


例の魔術師との戦闘を始める時にこの姿になった時のことを康太は覚えていない。だがその時の感覚は覚えていた。


強い怒りに支配され、体の奥底から何かが湧き上がってくるかのようなあの感覚。あれを再現することで康太は人ならざる姿になることに成功していた。


頭からは羽が生え、耳は尖り、尻尾のような毛髪ができている奇妙な姿。体はというと足の部分が鳥類のようなそれに変化している。


この姿を人間と呼ぶのは少し難しい。


「その姿になることに何か恩恵はあるのか?」


「さあ?俺もそんなに意識してないんですけど・・・前みたいに魔術に電撃が乗るのは変わらないんですけど、特にそれ以外に変化がなくて」


「・・・見掛け倒しか・・・変な状態になっているというのに全く得がないというのも変な話だな」


「それなんですよね・・・足なんてこんな形になってるのに、普通に動かせますけど」


そういいながら康太は鳥類のように変化した自分の足を動かして見せる。指の一つ一つを順番に動かし、鍵爪で軽く床をたたいて音を鳴らして見せるその姿はまさしく鳥類のそれだ。


人間状態の時はしっかりと運動靴を履いていたのにもかかわらずこのようになってしまっているあたり、本物の足ではないのはわかるのだが、ここまで精密に動かせていると、本物の足なのではないかと思えてしまう。


「まぁ足でどこかにつかまるとかそういうことはできそうですね。人間の足よりは指長いですし」


そういって康太は足を上げて適当な棚に足をかける。まるで手の指のように足の指を操ってうまく棚につかまると、体を軽く持ち上げていた。


「いっそのこと新しい武器でも持つか?そこまで足を動かせるなら検討してもいいだろう」


「えー・・・足技は割と多用しますけど、足の武器って言われても・・・槍とか握れるかな・・・?」

そういって康太は普段自分が使っている槍を掴もうと試行錯誤する。足で持つには若干細いからか苦労していたが、持てないこともなかった。


だがそうやって苦労して持ち上げていると康太の神化状態が解けてしまう。


「・・・まだある程度集中していないと維持できないようだな」


「まぁ維持したところで何が変わるのかって感じですけどね」


今のところ康太はこの姿に対してメリットを見出すことができなかった。


劇的に何かが変わるというのであればまだしも、特に変化がないのであれば小百合の言う通り見掛け倒し以外のなにものでもない。


「アリスはその見た目に対して何か言っていたのか?」


「いいえ、まぁ見た目が変わったのは俺の神としての力が均衡を破ったからだろうって言ってました。少なくともこの状態ならそこまで危険なことにはならないだろうって言ってましたけど・・・これ以上はやばそうだからやめておけって」


「これ以上か・・・つまりお前は電撃をため込み続けるとその状態になるという認識でいいのか?」


「そうみたいです。この間実験したので間違いないかと」


以前の実験のさらに先、康太が神化状態になるまで電撃を注ぎ込んだところ康太は確かに神の姿に変わった。


とはいえ不安定な状態だったのも確かだ。今のように康太が自発的に発動しないと康太の神としての姿は非常に不安定になってしまう。


これは康太としてもアリスとしても大きな発見だった。


そのことを小百合に告げると、小百合は口元に手を当てて悩み始める。


「なるほど、自発的な発動と、他人からの強制発動では安定性が異なるか・・・自分で発動するときは無意識のうちにバランスをとっているのか・・・?」


「アリスも似たようなこと言ってました。俺の人としての部分と神の部分がこう、いい感じに調整しあってるんじゃないかって」


「雑な説明だが・・・まぁどうでもいい。その姿は多少の目くらましにはなるが、それ以上の価値はないな。無駄に目立って目障りなだけだ」


「まぁおっしゃる通りなんですけどもう少しオブラートに包んでくれません?一応傷つくんですよ?」


「知るか、それで、さっきの状態でも感電はするのか?」


「たぶん、触ってみます?」


康太が少し集中し、神化状態になってから手を差し出すと、小百合は何の躊躇もなくその手を取った。


瞬間小百合の体に電撃が流れるが、小百合はわずかに顔をしかめて康太を蹴り飛ばす。


「ある程度動きを止められるな。一般的な魔術師なら普通にダメージを与えられる程度か」


「・・・あの、なんで俺蹴られたんですか・・・!」


「私が痛かったからだ」


自分から触っておいてなんてことをするんだと康太は抗議したかったが、小百合にそんなことを言っても無駄だろうと康太はあきらめがついていた。


少なくともこの状態にまで至れば、相手に多少のダメージを与えられるようになるらしい。


もっともこの状態になるには多少集中が必要であるため、まだ実戦で使えるとはいいがたかった。


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