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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
五話「修業と連休のさなかに」
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魔術師の懸念

「また師匠はそういう事言って・・・大丈夫ですよ、そう言う事をする魔術師は大抵淘汰されますから」


「はっ・・・非人道的行為というのがどこまで認められるのかも決められていないんだぞ?そんなものいくらでもいいわけが立つ。あんなものあってないようなものだ」


文の言っていた法令というより決まりができてもそのあたりはどうしても穴ができてしまう。特に一般人に対しての魔術師の行動はどうしても止められないところがあるのだ。


なにせ魔術師は一般人に魔術を知られないようにしている。それはつまり一般人に対して隠蔽工作をしているのと同義だ。


一般人に魔術を行使するのを禁止すれば、やがて徐々に魔術の存在を知るものが増えていくだろう。なにせ記憶操作や暗示といった魔術がなければ魔術師は魔術の存在を完璧に隠すことなどできないのだから。


それに規制したところで必ず穴というものは存在している。どんなに法律に似た規則で縛ろうとも、たとえ周囲の魔術師たちで見張ろうともどこかしらに抜け穴や死角というものはできてしまうのだ。


そしてそう言ったものがあれば当然規則を破るものは出てきてしまう。それによって得られるリターンが大きければ大きい程、そう言う輩は出てくるのだ。


多くの人間がいればそう言うものが出てくるのは当然なのだ。昔から犯罪を犯すものがある一定存在するように、いつまで経ってもルールはあくまでルールのまま。人間の行動すべてを縛ることができるわけではない。


だが協会としても明らかにやりすぎた行為を見逃すつもりはない。そう言う意味が込められているのが先程言っていた規律なのだ。


そう言ったものがなければ魔術師はただ単に世界の平和を乱すだけの存在に成り下がってしまうだろう。


「なんか俺魔術師の印象が著しく悪化してるんだけど・・・なんかフォローあるか?」


「んー・・・まぁ魔術師って基本自分本位な連中だしね。真理さんみたいなのはむしろ珍しい部類よ?」


「・・・じゃあ師匠みたいなのが普通の魔術師の考え方なのか?」


「あの人が普通の魔術師だったら世の中の魔術師はみんな普通じゃなくなるわね。もっと柔軟に考えなさいよ」


実際文たち以外にまともな魔術師と関わってこなかったために、まだ康太の中での魔術師という存在の印象を決めかねているのだ。


それこそ秘密結社的な秘密裏に活動している隠密集団、言い方を変えればスパイや現代風忍者みたいなもののようなイメージが康太の中にあるのだが、先程の話で康太の中のイメージはどちらかというと犯罪者よりに傾いてきている。


だが朝比奈のような人間がいるのも事実なのだ。そう言う事を考えると誰もかれもが危ない考えを持っているかといわれると微妙なところである。


「お前らは真理をまともな性格だと思ってるみたいだがな、こいつだって大概ひどいぞ?私よりましだというのは認めるが」


「自分を酷いって認識してて直さないのが師匠の性質の悪いところですよ。もう少し穏和に生きようとは思わないんですか?」


「・・・ほらみろ、師匠に対してこの毒舌っぷりだ。せっかく一人前に育ててやったというのに感謝すらない」


「そりゃ感謝はしてますけどそれとこれとは話が別です。もう少し普通に魔術師やっててくれれば今回のことだって起きなかったかもしれないのに・・・」


はいはいそうだなと小百合は片耳をほじりながらため息をついている。最初から聞く耳持たないようで完全に右から左で聞き流してしまっている。


きっと先ほどの内容ももう何度も聞いていて耳にタコができているほどだろう。それでも一向に改善しないあたり小百合の性格がうかがえる。


もしかしたら敵を作るのを楽しんでいるのだろうかと思えるほどだ。


「よく見てなさいよ康太、この世の中で小百合さんよりひどい魔術師はそうそういないわ。あのひと以下はいないと思いなさい」


「そうか・・・それならたいしたことはないな。今回の奴も師匠以下ならまだ普通レベルってところか」


「・・・普通かどうかはさておいてまぁそこまでひどくはないのはたしかよ。一般人操ってもっと大きな事件を起こそうとしてた人もいるらしいしね」


魔術というのは使い方によっては完全犯罪だって可能になる。


だが魔術を犯罪に使うのは原則禁じられているのだそうだ。何故なら犯罪が起きれば当然警察が動く。警察が動けば当然魔術の存在が露呈する可能性が大きくなる。


そのため、魔術を大々的に使った事件を起こすこと自体が魔術協会の中でのタブーになってしまっている。


昔ならまだ多少ごまかしがきいたのだろうが、最近は機械的な検査も多く行われているためにどうしてもごまかしがきかない部分も出てきてしまう。


今回のように人間を操って犯罪を起こすことができればそれこそ相当面倒なことになるだろう。


なにせ自分に捜査の手は伸びない、なのに大きな犯罪や凶悪な事件を起こし放題なのだ。


もしそのようなことがあった場合は即座に魔術師が事件を起こした魔術師を捕縛する。


魔術の隠匿を第一に考えるのが魔術師の基本だ。だが中には魔術の存在をあえて公表しようとするような存在がいるのも確かである。


最近の情報伝達速度はかなり早い。それこそ数十秒もあれば世界中に広まってしまうと言っても過言ではないほどに。


だからこそ魔術師は異常に警戒するのだ。魔術によって事件が起き、その存在が周囲に認識されることを。


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