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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十話「神の怒りは、人の恨みは」

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刃か、光か

相手は康太の鉄球に対して異常なまでの警戒心を抱いていた。


康太が取り出してくる鉄球が攻撃手段であるということをすでに理解しているからか、鉄球が自分の体の周囲にたどり着くよりも早く球体の障壁を複数枚展開し、鉄球がいかなる行動をしようと防ぎきれるだけの態勢を整えていた。


周囲にちりばめられた鉄球が今まさに牙をむこうとする中、康太は仮面の下で笑みを浮かべていた。


そして相手が鉄球へ意識を向けている中、康太は鉄球に込められた蓄積の魔術を解放する。


勢いよく弾ける鉄球が魔術師の障壁を砕くが、複数枚展開された障壁全てを貫通することはできなかった。


いくつかの鉄球は障壁を一枚、あるいは二枚貫通することに成功していたが、それでも魔術師のもとへと届くことはなかった。


鉄球の攻撃を防いだことで、魔術師は内心安堵の息を吐いていた。鉄球を自分の周りに近づけさせなければそれで問題ないと考えているのだろう。


確かにその通りだが、実際はその通りではない。


障壁の内側に鉄球が転がっていく中、康太は動き出す。


鉄球は防がれた。それだけで十分だった。すでに魔術師は鉄球を防いだことで安堵してしまっている。障壁全てを貫通することができなかった今、鉄球を伝って電撃が飛んでくるようなこともなく、攻撃を防ぎきることができたのだと判断しているようだった。


康太の目的はこれ見よがしに放った鉄球ではなかった。先ほど発動された蓄積の魔術の込められていない鉄球は何の力も加えられず、自由落下し続け、ちょうど魔術師の真下辺りを落ち続けている。


そしてそうやって落下していく鉄球のいくつかがその色を変え、強く発光しながら熱を発していく。

次の瞬間、康太の熱量転化の魔術が発動し、魔術師の後方で強い衝撃を放った。


その体を包む障壁を破壊しながらその体を吹き飛ばしていく。


威力の調整された熱量転化の魔術は、魔術師の体をバラバラに吹き飛ばすまでには至らなかった。


康太としてはこの熱量転化の魔術で相手を仕留めたかったのだが、未だ威力の調整がうまくできていない。


内心舌打ちをしながら、康太は前に出る。


吹き飛んできた魔術師の体に収束の魔術をかけ、自らの方向へと飛んでくるように仕向けていた。


相手が近づかれるのを嫌がるのであれば、向こうから近づくように仕向ける。相手は唐突な衝撃によって身動きがとれていない。


意識はまだあるようだが、強い衝撃を体に受けたことによっておそらくだが満足に息もできていないだろう。


康太は笹船を手に取り、噴出の魔術によって魔術師との間合いを一気に詰める。

このまま相手に剣を突き刺そうとした瞬間、魔術師は必死の抵抗をする。


障壁ではなく、相手が放ったのは衝撃波の魔術だった。


単純な射撃系の魔術であれば、康太は容易に回避できただろう。だが衝撃波という見ることのできない、何より範囲攻撃に康太は反応しきることができなかった。


体を衝撃が伝い、激痛が全身を襲う中、康太はそれでも歯を食いしばり前へと進む。


衝撃によって体が後方に押し戻されるのを、噴出の魔術を使って強引に前進する。もともと自分の体に負担をかけ続けていた康太にはさらなる負担になるが、そのようなことを気にしていられるだけの余裕は今の康太にはなかった。


鈍痛が全身に走り、うまく手足を動かすことができない。僅かに痺れる手足を強引に動かそうと噴出の魔術を器用に細かく発動しながら康太は姿勢制御を行いさらに前進する。


意識を喪失しないように歯を食いしばり、今まで受けてきた痛みに比べれば大したことはないと自分自身に言い聞かせながら目を見開く。


衝撃の魔術をその身に受けながらも接近してくる康太の姿に驚愕さえ覚えながら、それでも魔術師は攻撃の姿勢を崩さない。


衝撃に加え射撃系魔術、そして光の筋の魔術を放ってくる。

見えにくく、なおかつ広範囲攻撃である衝撃に比べれば、通常の射撃と光の筋の魔術はよけやすいことこの上ない。


衝撃によって体に激痛が走り、やや思い通りに動かなくとも大きく回避することで康太は襲い掛かる攻撃を回避し、剣を振り上げた。


もう剣を振り下ろせば相手を斬り裂けるほどの距離に近づいた。

だが相手もこのままやられるわけにはいかないようだった。


眼前に迫る康太を睨みながら、康太の腹部めがけて光の筋の魔術を放とうとする。


康太の振り下ろしが早いか、あるいは光の筋を放つのが早いか。


軍配は康太に上がった。


魔術師の肩口めがけて振り下ろされた剣は、その肩を斬り裂き、骨で止まる。


致命的とまではいかないまでも、確実なダメージを与えることに成功した康太だったが、眼前に存在する光の球体が未だ消えていないことに気付く。


相打ち覚悟。


幸彦を相手にすることで、それに並ぶ相手と戦うには相打ちを覚悟しなければいけないと魔術師は学習してしまっていた。


康太は電撃と同化し、自分の周囲に電撃を放って魔術師を硬直させようとするが、もはや止まらなかった。


そして康太の腹部めがけて光の筋が放たれた。


光の筋はウィルの鎧を容易に貫通し、突き抜ける。


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