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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十話「神の怒りは、人の恨みは」

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彼の最後の

障壁を食い破ろうと鉄球が一気に加速していくのと同時に、康太が放った魔術が効果を発揮していた。


康太が発動した魔術は『衝撃伝達』


物体を通じて与えた衝撃を離れた場所に放つという魔術である。


これは、康太が最後に幸彦から教わった魔術だった。


物体に事前、あるいは直前に伝達するための衝撃や物理エネルギーを放たなければいけないうえに、その距離に応じて精密なコントロールを求められる。


遠隔動作と蓄積の魔術を足したような難易度を持つ魔術だった。


それ故に使いこなすまで時間がかかってしまい、今まで使ってこなかったが、ここにきてようやく実戦に耐えるレベルになれたことは、何かがあるのではないかと思えるほどだった。


康太が鉄球の魔術に加え、真下からの攻撃である衝撃伝達の魔術を使ったのには理由がある。

それは相手の障壁の性質を知るためだった。


康太の衝撃伝達の魔術によって、魔術師に襲い掛かる衝撃は魔術師の体を貫通し、周囲を覆っている障壁にも届いた。


だが障壁は亀裂を作るだけで完全に破壊されることはなかった。


そしてこのままではまずいと判断したのか、障壁をさらに一枚追加し、襲い掛かる鉄球を防ごうとするも何個かの鉄球は障壁を貫通し魔術師の体へと襲い掛かる。


とはいえ威力そのものは減衰してしまっているために、その体に当たるだけでまともなダメージを与えられているとはいいがたかった。


とはいえ康太は相手の魔術、特に障壁に対しての性質をおおよそ把握していた。


障壁という魔術はすべて同じように見えて実は微妙に術式が異なったりしていることがある。

康太が使っている炸裂障壁も、障壁魔術の亜種のようなものだ。


その性質とでもいえばいいか、障壁の盾としての強度の問題がある。


盾として役立つ面と役に立たない面、そういった一方方向のみの防御性能を有した性能が中にはあるのである。


そういった障壁は、盾側の部分での硬さに特化しており、両面においてある程度の防御能力を持つ障壁よりも硬い場合が多い。


今回で言えば、康太の攻撃に対してもある程度持ちこたえられたために両面に防御性能を持つ障壁魔術であるということがわかる。


魔術師は康太の衝撃伝達の魔術によって多少のダメージを受けたようだったが、まだ五体満足、身動きもとれる、戦闘続行は十分可能な状態のようだった。


攻撃を受けてとっさの行動だったとはいえ、急ごしらえの障壁で康太の炸裂鉄球をほぼ無力化した。壊れかけ障壁と急ごしらえの障壁の二枚分の防御があったとはいえ、康太の炸裂鉄球の貫通力は並ではない。

相手の防御能力もそれなりにあると思うべきであると康太は考えていた。


文の話では幸彦相手に防御をするようなそぶりは一切していなかったという。相手の防御能力は未知数。であるがゆえにある程度調査したかったが、正直に言えばそれなり以上の防御を持っているという事実に康太は、少し面倒だなと内心舌打ちしていた。


幸彦と戦った時にこれだけの防御を使用しなかったのは、偏に幸彦が相手を攻撃範囲に入れていなかったからか、あるいは当時は覚えていなかったか、または単純に幸彦が防御をする暇を与えなかったかの三択だ。


攻撃されなければ防御するということはない。幸彦がたんに攻撃できなかったということであれば気にすることもないのだが、当時あまり使わなかった理由が何かしらあるのであれば、それは康太が相手に防御させるだけの選択肢を与えてしまったことに他ならない。


本来であれば防御させる暇もなく攻撃し続けたいところではあったが、そううまくいかないのが現状である。


相手の防御能力を差し引いても、康太の攻撃能力はまだ幸彦の水準には達していないのだろうかと、康太は少し悔しい思いをしていた。


とはいえ、康太の最高威力を誇る魔術の射程にまだ相手を入れていないというのもある。攻撃さえできればあの防御を崩すことは難しくはないだろう。


問題は相手に近づいた時の反応だ。


相手の連射速度はだいぶ慣れてきた。だが幸彦が深手を負ったのであればそれなりの理由がある。


とはいえこのまま射撃戦に甘んじていても状況は先に進まない。文や倉敷が敵魔術師を牽制していられるのも時間の問題だろう。


相手の防御能力は把握できた。この辺りでいったん攻勢に出る必要があるだろうと、康太は姿勢を低くして自らの体から発生している電撃を強めていく。


明らかな攻撃態勢に入ったのだと、相手も理解したのだろう、障壁を展開し、どこから攻撃が来ても良いように身構えながら康太へと攻撃を仕掛けていた。


器用に障壁の魔術に穴をあけた瞬間に光の筋の魔術を放ってくる。これに関しては何十何百と訓練したのだろう。動きに淀みがなかった。


だがまだ距離がある状態では康太も射撃攻撃に当たることはない。いかに速度があろうと直線でしか襲い掛かってこないのであれば恐れる必要はない。


康太は大きく深呼吸して身体能力を高めながら噴出の魔術を使用し彼我の距離を一気に縮めていた。


康太が近づいて攻撃してくるタイプの魔術師であると相手もようやく理解したのだろう、幸彦の時のような失敗はしないと考えているのか、徹底して康太を近づけないようにする作戦に出た。


光の筋だけではなく、単純な射撃魔術も混ぜてきている。威力の低い弾幕と、高い威力を誇る一撃を牽制として使うことで康太を近づけさせないようにするつもりのようだった。


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