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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十話「神の怒りは、人の恨みは」

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自己紹介は大事

「いやすまない。君のことは噂程度にしか聞いていなかったから、もっと大男かと思っていたよ。まさかまだ子供だったなんて」


「ははは、そのあたりは仕方がないです。ちなみに噂っていうと?」


「本人が聞いても面白い話じゃないさ。たぶんだけどだいぶ尾ひれがついていると思うよ。君と話してそう思った」


きっとそれはほとんどが事実なのだろうなと思いながら康太は笑う。支部内で流れている噂も大体が事実だ。若干ねじ曲がって伝わっている感は否めないが、大体康太がやってきたことがそのまま伝わっているために間違ってはいない。


他支部にまで噂が広がっているとは思わなかったが、少なくともこの魔術師は康太と直に話してそれらが他愛のない噂であると感じたらしい。


せっかく勘違いしてくれているのにそれを訂正するほど康太はお人よしではない。このまま康太が善良な魔術師であると誤解してくれれば何よりである。


もっとも、実際の戦闘を見ればその考えが間違っているということに気付くかもしれないが、そのあたりは仕方がないのかもしれない。


「君たちは戦闘時、どの位置にいるつもりなんだい?包囲?それとも・・・突入?」


「状況によります。どちらかというと突入の方に加わりたいですけど・・・狭いところで戦うのは少し苦手なので」


「なるほど、今回の場所は・・・資料で見る限り地下っぽいし・・・少し辛い戦いになるかもしれないね」


「そうですね。まぁやりようはありますよ。何とかします」


康太のことを知るものであれば、康太の何とかしますという言葉にとてつもない説得力を感じたことだろうが、目の前にいる魔術師はそれが努力しようとする若者の言葉に聞こえただろう。


実際は何とかできるという確信を持っての言葉であるということを、康太の近くに居る数人は理解していた。


「ところで、そちらの・・・精霊術師に見えるんだけど・・・彼も戦うのかい?」


「えぇ、俺のチームメイトです。状況によっては俺より強いですよ」


「またお前はそういうことを言う。初めまして、トゥトゥエル・バーツです。おっしゃる通り精霊術師です」


「初めまして。サムライジョージだ。魔術師の戦いについていけるってことは、君はかなり優秀な精霊術師なんだね」


「いいえ、俺自体はそこまでではないですよ。こいつらと一緒に行動しているうちにそういうことができないといけなくなっただけです」


「ははは、そりゃ災難だったね。そちらのお嬢さん、お名前をうかがっても?」


「ご挨拶が遅れまして申し訳ありません。ライリーベルです。ビーと一緒に行動しています」


「あぁ、君がライリーベルか。ブライトビーの相方として有名だよ。もっとがっちりとした女性かと思っていた」


康太が大男であるというイメージを持っていたため、文も同様にかなり肉体派の魔術師であると考えていたのだろう。


本人と会ったことで噂が正しいものであるかどうか判断したのだろうか、サムライジョージは笑いながら噂なんて信じるものじゃないねとつぶやいていた。


「じゃあ、そちらの女性にお名前をうかがっても?」


お嬢さんではなく、女性といったところにこのサムライジョージという男性の性格がうかがえる。


先ほど康太が年上であるといったことから、そのあたりを気遣ったのだろうか。


「私はアリシア・メリノス。名前くらいは聞いたことがあるだろう?」


「・・・おぉ・・・聞いたことがあるどころか、その名前は絶対に覚えろとうちのボスから言われているよ。まさか君が・・・いえ、あなたがアリシア・メリノスだったとは。これは大変失礼を」


どうやらアメリカの方でもアリスの名前は強く知られ、なおかつ常に動向に注意するように指示が出ているようだった。


アリスの外見はそれこそ状況によって変わる。名前だけでも覚えておいて損はない。


「気にするな。今の私は日本支部の魔術師として活動しているにすぎん。こいつらのフォローをするためにな。あとついでに言葉も翻訳してやっている」


「あぁ、会話ができているのはあなたのおかげだったのか。不思議だったけど、ようやく疑問が氷解したよ」


異国の言葉を話していて、異国の言葉が実際の耳には届いているというのにどうしてか言葉を直接理解できるという不思議な状況を作り出しているのがアリスであると理解して、サムライジョージは安心しているようだった。


自分の頭がおかしくなっているわけではないんだねと、少しずれた心配をしていたようだった。


「サムライジョージさんは」


「ジョージでかまわないよ。サムライの方でもいいけどね」


「じゃあジョージさんで。ジョージさんはチームで動いているんですか?」


「あぁ、一人乗り物酔いでやられててね。仲間が介抱してるよ」


「なんで乗り物酔いするのに飛行機に・・・」


「魔術で運ばれるよりはこっちの方が楽なんだとさ。そのあたりは本人の言だからよくわからないんだけど」


乗り物酔いなどは本人以外には分りようがないために本人の意見を最も参考にすることが多い。


魔術師に運ばれる方が飛行機に運ばれるよりもつらいというのも仕方のないことかもしれないが、どちらにせよ酔うのであれば我慢するほかないのかもしれない。



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