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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十話「神の怒りは、人の恨みは」

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アリス先生は励ませたい

「けど、そうなると人肌ねぇ・・・普通にくっついてるだけでもいいわけ?」


『そのあたりは個人差があるから何とも言えんな。服越しでも満足する者もいれば、肌と肌でなければ安心を得られないものもいる・・・だから裸で抱き合っておけ』


「あんたがいうとすごく面白がってるようにしか聞こえないのはなんでかしらね。結局そっちにもっていきたいだけなんじゃないの?」


先ほどまでは割とまじめに話を聞いてくれていたように思えたのだが、すべてはここに至るまでの伏線だったのではないかと思えてくるから性質が悪い。


『まぁお前たちの子を早めに見ておきたいというのも正直なところではある。だが、子をなすということが最大の楔になると思うのも事実だ』


「・・・私はあいつを縛り付けるつもりはないわよ」


『それもわかっておる。だからこそ無理強いはせん。とはいえ、このままコータを復讐だけに突き進むのもよいとは思わん』


アリスがいうことも理解はできる。理解できるからこそ複雑な気分だった。


文だって康太と結ばれた以上そういったことをしたいという欲求はあるのだ。だがこういう状況で求められてもという気持ちと、それで康太がまともな道に進んでくれるのであればそれもよいかもしれないという二つの気持ちがせめぎあっている。


この辺りは本人の考え次第だ。それ以上の答えを他人に求めたところで返ってくるはずもない。


「アリス的には、さっき言った方法が適切であると思うわけね?」


『最も自然な形での解決であるならば・・・な。不自然な形の解決でもよいのなら洗脳でも何でもすればいい。だがそれはお前も望まんだろう』


「そりゃね」


アリスの実力をもってすれば康太を洗脳することくらい容易いだろう。復讐だけに目を向けず、ほかのものにも目を向けて健康的に生きるような方向に思考を変えることくらい容易のはずだ。


だがアリスも文もそれを良しとしない。


そんなことをしても意味がないということを理解しているのだ。


『というか今のコータに精神に干渉する形の魔術が効くかどうか怪しいところだの。試していないから何とも言えんが』


「どうして?あんたなら簡単じゃないの?」


『そうは言うがの、洗脳やら暗示やらは人間に対して有効な魔術ではあるが、コータはすでに人間ではない。半分人間の部分が残っているだけだ』


「・・・それだとダメなの?」


「わからん。ハイブリット自動車のように、電気もガソリンも両方使えるのかもしれんし、そもそも別のものでしか受け付けなくなっているのかもしれん。幸い肉体強化などは効果を発揮しているようだが・・・それもあてにはならんの」


洗脳や暗示の魔術は人間用に開発された魔術だ。人間の意識、脳に働きかける魔術であるために人間をやめた康太に通じるかどうかは微妙なところであるらしい。


康太であれば効きそうな気もするが、アリスはそう考えてはいないようだった。


『そういうこともある。お前はお前の力で何とか康太を引きとめよ』


「単純に癒してやれればそれでいいんだけど・・・」


『それでもかまわん。精神的に安定させることは結果的に良い効果を及ぼすことが多い。大いに癒してやれ。精神面でも肉体面でもな。お前の肉体を使って気持ちよくしてやれ!』


「・・・完全にセクハラよね。訴えてやろうかしら」


『はっはっは。まぁどうするかはお前次第だ。私はせっかく恵まれた肉体があるのだからそれを活用しない手はないと思うがな。世の男たちならば絶対に放っておかんぞ?私が男なら間違いなく襲う』


文は同性から見ても恵まれた体形をしているように見える。長い手足に豊満な胸。運動をしているためか余計な脂肪はついていない。だが決してやせ細っているわけでもない。


アリスから見ても文の肉体は十分に魅力的だった。


「あんた幼女体形だもんね」


『失礼な。私だってしっかり成長すればお前程度にはなる。あと数百年後を楽しみにしておくがいい』


「そんな先の話されてもね、私絶対死んでるわよ」


『何ならフミも私と同じ方法で延命してみるか?封印指定に名を連ねられるぞ?時間はかかるが、おそらくお前なら使えるようにはなるだろう』


「遠慮しておくわ。私は普通の人間として生きていたいの」


まるで私が普通の人間ではないような言い草だのとアリスはぼやくが、実際アリスはすでに普通の人間とはいいがたい。


文ならできるといわれたところでそれをやろうとは思えなかった。それだけ文を評価してくれていることに関しては純粋にうれしく思うが、それ以上のことをするつもりは毛頭なかった。


「まぁ冗談はさておき、どうするかは考えておくわ。ちょっとチャレンジしてみる」


『うむ、励めよ!』


何を?とはさすがの文も聞けなかった。


これ以上アリスにセクハラをされるのはごめんだと、文は気のない返事をしながら通話を切る。

どのようにするか、どうすればいいか、文は少し自分の中で考えていた。


そしてどうしたいのか、文は考える。


康太のために自分がどうしたいのか。康太が元気になるためにはどうすればいいのか。


少し考えたうえで文は康太のいるリビングに戻ることにした。


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