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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十話「神の怒りは、人の恨みは」

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最高峰の二人

「ということです支部長、私とビーはロシア方面の攻略に向かいます。クラリスさんには別方面に回ってもらいます。支部長にはその準備をしていただきたいです」


「・・・うん。わかってた。君たちそういうタイプだったよね。僕がどこに行ってほしいとかそういう考えは無視なんだね」


文は土御門で情報を得た後、さっそく支部長のもとに相談にやってきていた。いや、相談というよりは申請といったほうが適切かもしれない。


何せ支部長の意見を聞く気はほぼゼロなのだから。


「支部長的には私たちを中国方面に行かせたかったんですか?」


「あれ?僕その話君たちにしたっけ・・・?まぁいいや。前回も君たちは中国方面で活動した経験があるからね。なるべく君たちの実力は大っぴらにしないほうがいいかと思ってさ」


今更感はあるが、康太たちの実力をあまり多くの支部に知らしめるのは良くないと支部長は考えているらしい。


確かにその考えも理解できる。あまりにも康太の存在を強くアピールしすぎれば、日本支部とほかの支部のパワーバランスが崩れかねない。


ただでさえ日本支部には現在小百合やアリスといった戦力があるのだから、これ以上強さをアピールすると余計な面倒ごとを引き入れる可能性もある。


「その考えはわかりますが、今回私たちはロシアに行きます。中国へはクラリスさんに行ってもらいましょうか?」


「・・・どうしようかなぁ・・・彼女が出るのは確定なんだよね?」


「この間から考えが変わっていなければ」


「・・・彼女気分屋だからなぁ・・・いかないように説得とかはできるかい?」


「・・・彼女もバズさんのことで思うところがあると思います。今回のこれを考えると、難しいかと」


「そうか・・・そうだね、確かにその通りかもしれない。となると、また中国支部から文句言われちゃうなぁ・・・」


中国支部からの文句。それがどのようなものだったのかは不明だが、どうやら支部長同士でいろいろと話をしたことがあるようだった。


「何か言われたんですか?前回のときとか」


「うん、まぁね。ちょっと派手に暴れすぎだぞ的なことは言われたよ。あの場合うちじゃなくて問題を起こしたほうに言ってほしいくらいなんだけどさ」


「確かに。あの時ビーもクラリスさんも派手に暴れましたが、それはそれ、仕方のないことだったかと・・・中国支部から二人の受け入れ拒否勧告などは出ているんですか?」


「いいや、あの二人は戦力としては最高峰だからね・・・文句を言いつつも参加してくれることはありがたいんだろうさ。複雑な気分だろうけどね」


以前支部長や康太が言っていたように、小百合や康太は劇薬の性質を持つ。副作用も大きいがその分効果は絶大だ。


毒にも似たその性質は、副作用さえ無視してしまえば爆発的な効果を及ぼすことになる。組織としてはこの力をうまく利用したいのだろうが、当の本人、特にクラリスの方が人に従うということをしない性質の人間だ。


それを従えている、というよりコントロールしている支部長に関して他支部の人間がどのような感情を抱いているのか、一介の魔術師である文には分らない。


あるいは小百合がコントロールできないタイプの人間だと知らないものの方が多いのだろうかとも思えてしまう。


関わりがない人間からすれば小百合はただの問題児。あるいは支部長が常に操っている存在と思われてもおかしくないのだ。


「クラリスさんが活動するとなると、今回の相手の拠点の情報を得ることは難しくなりますかね?」


「どうだろうね。そのあたりは彼女の機嫌次第かな。何もかも破壊しつくされると、後始末を優先しなきゃいけないから情報の回収は難しいけど、ある程度理性的に壊してくれれば、情報収集してからの後始末でも十分に余裕はある」


壊すことと後始末は前提なのだなと文は内心あきれてしまうが、確かに小百合が戦闘をした後では後始末が必要なのは仕方がないだろう。


今回の戦闘の場所は岩山、あるいは岩石地帯に近い。


そこで巨大なクレーターや岩崩れなどがあれば、当然一般人の目にもつくことになってしまう。


それらをすぐさま修復、あるいは撤収などしなければ魔術の存在が露見しかねない。


小百合がどれくらい本気で暴れるかによって、当日得られる情報が変化するといっても過言ではないだろう。


「なら、他の地点での情報収集が重要になってくるわけですね。そのあたりの手はずはどうなっているんでしょうか?」


「もともと、君たちを中国方面に行かせる予定だったからなぁ・・・それがだめになると、ちょっと調整しなきゃいけないよ・・・追加でちょっと時間が欲しいな」


「具体的には?」


「追加で五日・・・いや、三日もくれれば調整はできる。今日から数えて十日後、攻略作戦を実行に移すよ。それでいいかな?」


予知の通りの時間になりそうだなと文はひとまず自分の行動が予知に沿った行動なのだと内心安堵しながら小さくうなずく。


「構いません。では私たちはこれから準備に入ります。何かお手伝いできるようなことはありますか?」


「いいや、ここからは僕の仕事さ。君たちは現場で動いてもらう。それまでは休んで、そして戦いの準備をしてほしい」


面倒な調整は自分がやらなきゃねと支部長は苦笑しながらため息をつく。


この人に任せておけば調整は問題ないだろうと文は確信し、支部長の部屋を後にする。


自らの戦闘の準備をするために。


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