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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十話「神の怒りは、人の恨みは」

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明の戦い方

双子の母親である真由美は、一言で言えば高い処理能力を前面に押し出した戦いを得意とするタイプだった。


文のようなタイプと言い換えればいいだろうか、同時にいくつも魔術を発動し、工夫したりして相手にぶつけることを得意とするタイプのようだった。


単純な魔術よりも扱いが難しいがその分威力がある魔術や、その分多角的な攻撃や一度に多方向からの攻撃ができたりとその魔術の扱いは手慣れた様子で文もその処理能力の高さには舌を巻いていた。


だが、文とも訓練することのある明にとってはそこまで驚くことでもない。さらに言えば小百合の攻撃速度と攻撃頻度に比べれば多少見劣りする。


その程度の攻撃を明が捌けないはずはなかった。


明ももとより処理能力が高い魔術師だ。予知の魔術を併用し、防御と回避を適度に選択しながら反撃している。


文と戦っているときのような対応に、康太は少しだけ感心しながら文の方に意識を向けた。


「すごく文との戦いに似てるな。タイプが似てるからかな?」


「そうね、扱ってる魔術こそ違うけど、戦い方は少し似てるかも。でも私よりも攻撃が的確ね。予知の力かしら?」


「そうか?文の方が的確な攻撃が多いように思うけど?」


「私の場合は素質頼りの力押しをしてるだけだからね。でもあの人はどっちかっていうと素質自体は平凡な感じがするわ。多くない魔力をうまく他の魔術と組み合わせることで立ち回ってる。努力が垣間見れるわね」


予知の魔術に加え、文も認めるほどの努力。それは今まで積み重ねたもののすべてだ。


素質、才能、向き不向き、努力、経験。そういったものをすべてぶつけるのが魔術師としての戦いだ。

相手が使う魔術やその戦い方を見るだけで、相手がどのような努力を重ねたのか、どのような道のりを進んできたのか、何となくわかる。


これが、これこそがまさに魔術師としての戦いなのだろうなと康太は普段自分が行っている、相手の都合など一切考えない戦いを思い出して苦笑する。


「双子の実力が知りたいんだから、こういう戦いの方がいいのかもな・・・文はどっちが勝つと思う?」


「あんたの予想は?」


「・・・今の戦いのままだと、明が不利だな。状況を完全にコントロールされてる」


「あら、気づいてたの?」


文は意外そうな表情をしながら康太の方を見る。


射撃系魔術を使った牽制。まだまだ互いに底を見せていない戦いの中で、明よりもその母親の真由美の方が戦いの場のコントロールができていると康太は感じていた。


「何となく、おふくろさんの想定通りに動いているって感じがするな。考える余裕ができてるっていえばいいのかな?明の方がただ対応してその合間に反撃してるのに対して、おふくろさんの方は攻撃手段が多彩だし、選択肢があるような感じがする」


普段射撃系攻撃をほとんど使わず、さらに言えば敵と射撃系攻撃での牽制をし続けることなどほとんどない康太でもわかるほどの状況の偏り。それに文が気づいていないはずはなかった。


「確かに今のままだと不利ね。でも大丈夫よ。たぶん今回のこれは明に軍配が上がるわ」


「その心は?」


「私も似たような状況になったことがあるんだけど、あの子の癖っていうのかしら、それともやり方っていうのかしら、相手の出方をうかがおうとするのよ」


「・・・守りに徹してるってことか?」


「言い方を変えればね。相手がどういう動きをするのかを把握して、どうすれば対応できるのかを考えて実行しようとする。今のこの状態はまだまだ答えを探ってる状態だと思うわ」


「・・・俺の時はそういうのなかったんだけどな・・・」


「あんたの攻撃は速すぎるし急すぎるからでしょ。のんびりした射撃系魔術の応酬なら、あの子は簡単には音を上げないわよ?」


それは文が自分の経験をもってして知っているのだろう。自信満々に言い切った。


もとより明は晴よりも処理能力が高い。だがその反面接近戦などは晴よりも劣る面が多い。


射撃系を得意とする彼女にとって、小百合や康太のような近づいてくるタイプは天敵といってもいいだろう。


だがそれでもある程度対応できるようになっているのだ。その経験は確実に彼女の血肉になっている。


そしてその血肉は、射撃系の戦闘においても発揮され始めている。


文との訓練でそれは顕著に表れた。


文の射撃系攻撃は決してぬるくない。先ほど文自身が言ったように、自らの優れた素質を前面に押し出した力押しをすることもある。


さらに言えば彼女の場合処理能力の高さも相まって威力と密度を兼ね備えた連続攻撃となる。


一見劣勢になろうと、それでも明は受けきることができるのだ。


文と同等の素質を有しているからこそできるといえなくもないが、彼女の処理能力の高さと予知の力によってそれがなされている。


この様子見の段階はすでに文と明にとっては予想通りの状態のようだった。


相手が繰り出してくる魔術に対して反撃をするだけの余裕を持つことができているということでもある。


「相手の様子を見て倒せると思ったら本気を出すか・・・嫌な感じ」


「相手の様子も見ないで潰しにかかるあんたも嫌な感じよ。戦い方に関しては人それぞれね」



どちらの戦い方が優れているのかという疑問はさておき、文の予想は的中することとなる。


相手の力量、というか相手の魔力総量と処理能力を把握した明が一気に攻勢に出たのだ。


二人の勝負がつくまで、そう時間はかからなかった。結果は明の勝利という形で締めくくられる。


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