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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
三十話「神の怒りは、人の恨みは」

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頼みは誰に

「へぇ・・・うちにですか」


「そうなの。可能な限り早く遠い未来を見ることができる人に協力してほしくてね。もちろんお礼はするつもりよ」


文は小百合の店に修業にやってきている土御門の双子を捕まえてさっそく依頼の話をしていた。


未来を予知できれば四分の一の確率を確定事項に変えられるかもしれないという期待感が文を駆り立てた。


「遠いって、具体的にはどれくらいですか?」


「日をまたぐレベルかしらね・・・一週間先を見てくれれば最高なんだけど」


予知の魔術というものは未来を知ったものが干渉するような形で行動を起こさなければ高い確率で同じことが起きる。


無論知った状態で何か行動をしている時点で多少なりとも未来に干渉してしまうことになるのだが、今回のように未来を見る対象が限りなく自分たちの生活と無関係な位置にいるのであれば問題は少ないはずであると文は考えていた。


とはいえ出発前にいきなりどの場所に行こうなどといっていきなり現地に飛ぶことができるはずがない。

現地の情報もなにも調べずに行けばその分不確定要素を増やす結果になってしまう。


全ての場所を調べればいいという話にもなるが、康太が直接乗り込むのであればそれ用の機材だって用意しなければならなくなるだろう。


今回の場所は街中ではない。街から離れた荒野や森の中。そんな場所に行くのに何の準備もなしというのは危険すぎる。


準備期間も合わせて一週間は余裕をみておきたかった。


「一週間かぁ・・・結構先ですね・・・うちの中でも結構限られてきますよ?」


「私未来予知の魔術って門外漢なんだけど、未来が遠いほど大変なんでしょ?」


「そうですね・・・俺らが普段使う予知は、基本的に一時間から二時間以内のものです。限定されている分精度は高いですが、細かい情報まで読み取るので若干の違いで情報量が変化します」


「一応遠い未来を読むことができる用の術式も覚えてますけど、それでも一日とか・・・頑張って三日行けるかどうか」


「その分精度も落ちますから、あんまりあてにならないんですよね」


土御門の所有する未来予知がどのようなものなのかは文もわかっていないが、少なくとも一日よりも先を見ることは不可能ではないらしい。


双子でも頑張って一日、三日行けるかどうかというレベル。


となれば一週間先、あるいはそれ以内の未来予知ではどれほどの実力が必要なのか、大まかではあるがわかってくる。


「つまり、あんたたちの親とかそのレベルの人にお願いしないとってことよね?」


「そうなります。すいません、力になれなくて」


「ごめんなさい、もっと遠くの未来が見れればよかったんですけど」


「無理を言ってるのはこっちだもの。それにそんな未来を見たところで役に立つとも思えないしね・・・宝くじとかギャンブルなら役に立つかしら?」


「あぁ、それで稼いでる人もいますよ。あんまりやりすぎると目をつけられるみたいで自重してるみたいですけど」


未来を予知して一番簡単に金を稼ぐ方法があるとすれば競馬などのすぐに結果が出るギャンブルなどが頭に浮かぶ。


とはいえ何度も何度も高額当選を繰り返していれば、当然目をつけられてしまうだろう。八百長などがあるとはいいがたいが、多少何かしらを敵に回してしまうのは間違いない。


そんな面倒を起こすくらいなら地道に働くという考えを持った人間の方が多いらしい。


いや、どちらかというと周りの人間がそれを止めているというべきか。


「とにかく、今はその人との渡りをつけてほしいの。表向きはあんたたちの訓練についてのこととかでもいいから」


「了解です。さっそく連絡してみますね。でも・・・その・・・やっぱ戦いに行くんですよね?」


「・・・そうよ。戦いに行くわ」


「私たちは、連れて行っては・・・」


何となくこの頼みをしてくる気はしていた。土御門の二人はいろいろと経験もして、実戦に出ることを望んでいる。


それだけの実力がついてきたのも認めるし、文としてもついてきてほしいというのが正直なところでもある。


だがこのことに関してはすでに答えは決まっていた。


「ごめんなさい。幸彦さんを殺すほどの力を持った魔術師が相手なのよ?二人を連れて行っても・・・守れる保証がないの」


「「・・・」」


守られなくたって自分たちで何とかして見せる。本当であれば二人はそういいたかっただろう。


未来予知と、自分たちの魔術と、そして小百合に教わった体術をもってすればたいていの魔術師相手ならば完封することだって難しくはない。


だが相手は幸彦を殺すほどの魔術師だ。そんな相手に対して何とかするといえるほど、晴も明も実力がわからないわけではなかった。


「こっちは一方的に頼んでおいて、そっちのお願いはかなえられないなんて・・・本当に悪いんだけど」


「いいえ、俺らが弱いのが悪いんです。先輩たちにはいつもお世話になってるんですから、気にしないでください」


「そうです。私たちもいつか先輩たちと一緒に行動できるように頑張りますから。その時はご一緒させてください」


土御門の二人の健気な言葉に、文は申し訳なさでいっぱいになっていた。


小さくごめんねとつぶやいてゆっくりと頭を下げた文に対して、土御門の双子はすぐに遠い未来を見ることのできる親類へ連絡を取ろうとしていた。


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