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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十九話「その手を伸ばす、奥底へと」

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度し難い

康太は支部長の許可を受けてから尋問を開始するべく、いつもの部屋のいつもの場所にやってきていた。


そこには気絶させられ、椅子に座らされている魔術師が一人。方陣術を発動させようとしていた魔術師だ。


どのような手法をもってしてかは知らないが、アリスによって気絶させられ今の今までずっと気絶したままなのだ。


康太はとりあえず日用品を次々と取り出していく。神加に手を出したのだからお前に明日はないのだというかの如く、康太の表情は喜々としていた。


「おーい、来たぞー」


康太が準備をしていると文によって呼び出されていた倉敷が顔を出す。そして部屋の中の光景を見て呼び出された原因が拷問に必要だからだったということを知ってものすごく嫌そうな顔をした。


「あのさぁ・・・一応聞いていいか?なんで俺呼ばれたんだ?」


「こいつを死なせないためだ。どんな暴力を振るおうとどんな傷を負おうと決して死なせないためにはトゥトゥ、君のような素晴らしい水を操る術師が必要なのだよ」


「・・・先生、お腹が痛いんで帰っていいですか?」


「逃がすなアリス先生。そいつの力は必要不可欠だ」


「すまんな、こちらとしても事情があるのだ。お前の力は役に立つ。誇るがよいぞ」


拷問の補助をするという行動の一体何を誇れというのか、倉敷はため息をついてしまっていた。


とはいえ康太がここまで強く拷問を意識するのも珍しい。情報を抜き出すためと言うよりは八つ当たりを目的としているように見えなくもなかった。


「で、この哀れな魔術師Aさんはいったい何をやらかしたんだ?お前の店に爆弾でも仕掛けたのか?」


「それならここまで怒らないっての。この馬鹿はうちの可愛い弟弟子を攫おうとしたんだよ。っていうか実際攫って何やらいかがわしい行為をしようとしたのだよ」


「うわぁ、お前の身内相手にそれをやっちゃったか・・・そりゃ救いようがないな・・・しかもこのご時世にロリコンかよ・・・度し難いな」


「間違ってないんだけど決定的に何かを間違えている気がするわ・・・一応言っておくけど、情報収集を目的としなさいよね?」


「わかってる。こいつの初恋から黒歴史まで全部喋らせてやるぜ」


途中からやってきた倉敷は彼らの熱意が理解できず、少し離れたところで観察していた。


といっても結局血を流させないために協力することになるのだが、そのあたりは致し方のないものだろう。


倉敷としても身内に手を出されたとあっては怒るのも理解できるだけに康太たちを止めることはなかった。


もし自分だったら同じように怒るだろうということがわかっているからこそ、倉敷は康太たちのこの行動を非難するつもりはない。


とはいえ康太たちと同類扱いされるのは非常に困るわけだが。


「さて・・・じゃあまずは何から始めようか・・・たまには苦痛だらけの話し合いでもしてみるか」


「お前は一度話し合いという言葉を辞書で調べて来い。ていうかさ・・・気のせいかもしれないけど・・・なんかお前雰囲気変わってないか?」


「・・・ほう、気づいたか」


倉敷の言葉に一番感心したのはアリスだった。どういう変化があり、どういう事情があったのか全く知らない倉敷が、康太の異変を感じ取ったことにアリスは素直に感心していたのである。


「なかなかどうして、気配的には何も変わっていないように思えるが、やはり気付くものは気づくのだな」


「え?なに?やっぱりなんか変わったのか?」


「うむ、決定的に変わったぞ。何が変わったのかと聞かれると返答に困るがな。少なくともビーは劇的に変化した」


「へぇ・・・別に髪の色も変わってないし・・・筋肉が増えてるわけでもないし・・・新しい魔術でも覚えたのか?」


「当たらずとも遠からずといったところか」


「んー・・・じゃあまた面倒ごとで、なんか変なものでも憑りついたとか?」


「これまた惜しい。だがそうだな・・・絶妙に遠い。間違っていないのだが間違っているといったところか」


倉敷とアリスの問答はさておいて、康太は着々と準備を進めていた。


苦痛のみを与えるというのは地味に難しい。痛みだけを与えるといってもその痛みにも種類がある。


康太が与えられる痛みは多種多様だが、今回は気が狂うほどの絶望を味わわせることができるようなものを与えたかった。


「ベル、ちょっと手伝ってくれるか?風を作っててほしいんだ」


「風?」


「うん、とりあえずこいつの目を開けさせて・・・っと」


今まで康太は相手に自分たちの姿を見せないようにするためにしてきたが、今回はこの姿を見てもらわないと困る。


ブライトビーの身内に手を出せばどのようになるのか、どのような結末を迎えるのかを知らしめる必要があるのである。


ある種の生贄、人柱と言えなくもない。


とはいえ死なせてしまっては意味がない。この男には語り部になってもらわなければ困るのだと、康太は仮面の下で笑みを浮かべていた。


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