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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十八話「対話をするもの、行使するもの」

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突き崩す、プライドとともに

障壁の魔術は防御魔術の中でもポピュラーな魔術の一つだ。一定空間に魔力によって壁を作り出す魔術で、工夫によっては防御だけではなく足場としても使うことができる。


多様性を秘めていると同時に突き詰めれば最強の盾ともなる。だがこの魔術の練度が低い魔術師だとほとんど壁としての意味をなさない場合もある。


「・・・はい、これで私の実力がわかるわけ?」


展開された障壁を前に、康太はじっくりと観察する。自信満々の彼女の障壁を見て康太は何度か頷きながらそれに触れていく。


「んー・・・耐久力はそこそこ・・・構成は・・・若干外側が甘いか、中心を守ろうっていう意識が強すぎるのかな?」


「・・・は?何言ってるの?」


康太が言っていることを理解できていない魔術師を前に、康太は説明するよりも実演したほうが早いなと、ナイフを取り出して障壁を斬り付ける。


横一線に振るわれたナイフは一撃で障壁を半壊させた。康太自身は両断するつもりだったのだが、まだまだ実力が足りないのか、思っていたよりも耐久力が高かったのか、どちらにせよ不完全な破壊の仕方に不満そうにため息をつく。


「・・・え・・・?なん・・・え?」


障壁を発動した魔術師はいったい何が起きたのかわからなかったのだろう。ナイフを振るったかと思えば発動していた障壁が半壊していたのだから。


「ナイフ一本かよ。お前相変わらずおかしいな」


「慣れれば結構いけるって。師匠だったらたぶん殴るだけで壊したんじゃないか?ぶっちゃけ俺はまだ弱いところがそこまで見えないからな。露骨なのだとわかりやすくてありがたいけど」


ナイフ一本でさも当たり前のように障壁を破壊した目の前の康太を見て、女性の魔術師は目を丸くして動揺している。


どんな魔術を使ったのかはわからないが、障壁があっという間に破壊されてしまったのは事実だった。


だがこのままで終わらせておけるほどこの魔術師も自尊心は低くなかった。


「待ちなさい!つ、次はこれよ!これならどうよ!」


先ほどの適当に張った障壁とは違い、今度は本気で障壁の魔術を発動し康太の目の前に出す。


康太はそれを見て目を細める。


「へぇ・・・さっきより頑丈だな・・・これが本気か?」


「そうよ。壊せるもんなら壊して見せて」


「・・・ふふん、このくらいならお茶の子さいさいよ」


康太はそういいながら障壁に触れながら弱い部分を探していく。そして持っていたナイフにエンチャントの魔術を施してそこを狙う。


康太にはうっすらとではあるが見えていた。障壁の弱い部分。感じ取れていたといったほうが正しいだろうか。


ここを攻撃すれば壊れる。ここを貫けば崩せるという場所が。


康太が勢いよく障壁に向けてナイフを突き立てると、ナイフは見事に障壁を貫通していた。


亀裂を発生させる障壁に刺さったナイフを捻ると、その障壁は完全に砕け散る。


「おぉ、やっぱナイフ一本か」


「この強度だと俺の腕じゃエンチャントを使わないと難しいな。師匠なら必要ないだろうけど」


そもそも小百合がエンチャントの魔術を使えるかも怪しいところだが、今は置いておくことにする。


二度も障壁を破壊された魔術師は驚愕と同時に、目の前にいる康太の評価を大幅に改めていた。


そして気になっていた。目の前のこの魔術師がいったい何者なのかと。


「・・・あなた何者?術師名は?こんな簡単に障壁を破壊できるなんて、ただものじゃないでしょ?」


「ただものなんだけどな・・・まぁ自己紹介をしておこうか。初めまして。デブリス・クラリスの二番弟子、ブライトビーです」


その名前を聞いた瞬間に目の前にいた魔術師の顔が引きつる。小百合の名を出したからか、それとも康太の名を出したからか、どちらにせよあまり良い表情とは言えなかった。


仮面によってその表情は見えなかったが、明らかに強張ったその体の状態を見て、一緒にいる倉敷は笑う。


「お前本当に嫌われてるのな。っていうか怖がられてるって言ったほうがいいか?」


「どっちにしろだよ。これじゃまともな知り合いもできない・・・いや、一人違うか」


康太は気づいていた。三人のうち一人だけ康太の名前を出してもその身を強張らせなかった人物を。


その魔術師は三人の中で最も小柄な女性だった。その人物の前に立つと、康太は目を細める。


「あんたは俺のことをどこで知った?さっきから随分と観察していたようだけれど」


「・・・あなたの話は師匠から聞いていました。とても強く、とても優しく、近づき難く、近づきたい魔術師だと」


「・・・師匠・・・?あんたの師匠の名は?俺が知ってる人かな・・・?」


康太はそこまで魔術師としての知り合いが多いというわけではない。康太のことを知っていて、なおかつ康太の評価が戦闘能力のみだけではないという点から知り合いの誰かではないかと考えたのだが、候補があまり思い浮かばなかった。


「私の師匠の名前はアマネ・ツキヤ。名前くらいは聞いたことがあるのではないですか?」


「・・・アマネさん!?あの人弟子いたのか・・・!いや、うちの師匠も弟子がいるんだから不思議じゃないか・・・なるほど、あの程度じゃ動じないわけだ」


康太は納得してしまう。彼の弟子であれば先ほどのやり取りを見ても動じないのも納得である。康太の姿を知っていてどのような人物かも彼は多少は知っている。驚かなくても不思議はないのだ。


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