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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十八話「対話をするもの、行使するもの」

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劇薬はまだ

「別のところから戦力を集められませんか?可能ならそれなりに実力がある人がいいんですけど」


「戦力かぁ・・・声をかけられる人は何人かいるけども・・・君たちの実力に合わせると少し微妙なところだよ?君たち的にはどうだい?誰か声をかけられる人は・・・例えばジョアとか」


康太の兄弟子である真理ならば確かに実力的には申し分ない。だが康太は小さく首を横に振った。


「姉さんは今表の私生活の方で忙しいんです。最近は少し余裕が出てきてますけどあまり期待しないほうがいいですね。話を聞く限り場所が判明したらすぐに駆け付けろとかそういう話になりますよね?」


「そうなるね・・・そう考えると私生活が忙しい人は難しいか・・・」


「うちの師匠であればいつでも暇してますけど?」


「君の師匠を出すのはある意味最終手段だよ。相手を潰すことだけを考えるならそれでもいいけど・・・今回は確実に捕縛してもらわなきゃいけないんだ。殺傷能力が高すぎる劇薬は使いたくない」


もはや毒物に限りなく近い扱いの小百合だが、ある意味言いえて妙だ。強すぎる薬は毒となる。薬とはもともと毒を希釈したもの、あるいは人間に有益な成分を持ったものを使ったものなのだ。


そもそもにおいて薬と毒の違いは人間に対して得られるものがメリットかデメリットかの違いしかない。


小百合の場合はその結果が極端すぎるため、毒になる可能性が非常に高いが、特定の場合においては特効薬にもなり得る。今回の場合は小百合を投入するには少々不適格な状況といえるだろう。


「となると・・・俺の周りで声をかけられそうな人間は土御門の双子程度ですね」


「あいつら連れて行って大丈夫なのか?さすがに危険じゃないか?」


「師匠相手に五分はもつようになってきたからある程度の実力はついてきたと思っていいだろ。師匠に鍛えられ始めてもう三、四カ月くらいか?俺はそのころには実戦繰り返してたし」


「そりゃお前はな・・・支部長としてはどうなんです?あんまりあの双子は連れて行きたくないみたいなこと前に言ってたような」


土御門の双子はあくまで魔術協会と四法都連盟との関係を考えて出向に来ているだけだ。そんな状態の二人を戦闘に連れていくのは支部長としては本意ではない。


それは康太もわかっている。だが声をかけて康太が連れていけそうな戦力といえばそれくらいしか思い浮かばなかったのも事実だ。


「うん、正直に言えば土御門の二人は連れて行ってほしくはないね・・・危険が多すぎる。何かあったときに土御門にいいわけができない」


「魔術師として活動している以上、その結果はほぼ自己責任でしょう?」


「そうだ。でも組織に所属している以上、自己責任とはまた別の意味での責任と問題が付きまとう。君ならそれはわかっているだろう?」


康太もよく面倒ごとに巻き込まれる。その面倒が当人同士だけのものではなくなることだってあった。


組織に所属している以上、問題があくまで個人における自己責任の範疇だったとしても、組織の体面上、どうしても個人間だけの問題にできないことだってあるのだ。


魔術協会と四法都連盟。二つの組織の関係を背負っている以上、土御門の双子には無理はさせられない。


「拠点攻略となると室内戦になる可能性が高いです。先日の男の記憶からもそれは間違いないかと・・・なら、拠点攻略の手前、索敵状態での参戦はどうでしょう?あいつらの予知ならよい情報を得られます」


「・・・確かにそれなら・・・けど引率は誰がやるんだい?攻略に参加しなくとも、多少危険は付きまとうよ?」


そこまで過保護になるべきだろうかと倉敷が目を細めたが、康太もこの話の流れは読めていたのだろう、小さくため息をつきながら話を先に進める。


「アマネさんはどうでしょう?師匠の攻撃を防ぎきるほどの実力者ならば、有象無象の攻撃はないに等しい」


「・・・確かに、そうかもしれないね。彼の実力ならば申し分はない・・・けど彼に頼めるかどうか・・・」


アマネの実力は支部長も知っているところだ。はっきり言えば声をかけたいところだが、アマネも社会人として活動している以上自由に行動できるとはいいがたい。


支部長は頭を悩ませてから少し切り口を変えることにした。


「ブライトビーの意見としては、どの程度の人数がいれば攻略できると思っているのかな?具体的な役割と人数がわかるとありがたいんだけど」


支部長の質問に康太はわずかに考える。室内戦、なおかつ拠点攻略。相手の捕縛が前提条件となっている今回、巨大な攻撃を放っての一挙制圧というのは現実的ではない。何より被害者として精霊術師もいる可能性が高いのだ。彼らを助け出すというのもマストオーダーの中に入っている。


そうなればなおさら拠点そのものを破壊するという行動はできない。


「・・・そうですね。室内での戦闘要員は俺とトゥトゥが担当するとしても、最低でもあと一人、可能なら二人近接戦を行えてある程度戦える戦力が欲しいです。あと長距離において索敵が行える人員と、土御門の双子やその調査員を守れるだけの実力を持った防御要員」


「・・・拠点の攻略自体は三、四人で行うのかい?さすがに人数が足りないんじゃ・・・」


「相手を倒すだけでいいなら室内でそんなに人がいても邪魔になるだけです。室内なら近接戦がメインになりますから、俺とトゥトゥがいればある程度は押さえます。数の利で圧殺されそうになったら強引に突破すればいいだけですから」


康太と倉敷の所有している術を使えば半ば強引な形でも相手の勢いを押し戻すことは可能だ。


あと一人は康太と倉敷ではできないことをする補助要員としての役回りが大きい。


とはいえこの二人と連携が取れそうな人員となると文以外に適任はいないのだが。


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