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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十八話「対話をするもの、行使するもの」

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綺麗ごとでは

「さて・・・情報も手に入った・・・ここから先は僕らの仕事だね」


倉敷の師匠から情報を仕入れた支部長はさっそく協会の魔術師たちに指示を出し始めていた。


すでに協会支部の専属魔術師たちは動き出して精霊術師たちへのアプローチにかかり始めている。

とはいえ今回の目的は精霊術師を攫おうとする魔術師を捕まえてその背後に何がいるのかを把握することだ。


可能な限り洗脳を受けていないような人間が好ましいのだが、そう簡単に行くとも思えなかった。


「それじゃあ俺らが手伝えることはここまでですかね?あとは人海戦術で何とかしないとどうしようもないですし」


いつどこで誰が襲われるかもわからない状態で攫おうとしてくる相手を待つのだ。康太や倉敷が一人二人いたところであまり意味がない。


ここは引き上げるべきかと考えたところで、支部長は待ったをかけた。


「いや、ブライトビーには別の仕事を頼みたいんだ。正直に言えばライリーベルにも頼みたいんだけど・・・彼女は今忙しいのかい?」


「えぇ、ちょっと手が離せない状態ですね。でもなんですか?俺らに用ってことは荒事でしょうけど」


康太と文を必要としている時点で、支部長がある程度の戦力をそろえようとしているということは何となく理解していた。


何を頼みたいのかはいまだ不明だが、康太もそれが自分と無関係ではないということは把握している。


「話が早くて助かるよ。すまないがリィルは席を外してもらえるかな?」


「・・・協会の内情でも話すつもりか?」


「似たようなものさ。普段彼らにお願いしている依頼の延長のようなものでね。部外者には聞かせられない」


「・・・わかった。精霊術師の件は頼むぞ。トゥトゥ、俺はエントランスで待っている。後で来い」


「わかったよ。逃げるなよ師匠」


「誰が逃げるか・・・じゃあな」


そういって倉敷の師匠は支部長室から出ていく。倉敷にいったいどのような話があるのか、倉敷自身も不思議そうにしていたが、今はそのことは置いておくことにして支部長に視線を向ける。


倉敷にも退室を促さなかったということは、おそらく支部長は倉敷に対しても戦力として期待をしているということになる。


「で、今度は何を倒して来いというんです?」


「君は本当に話が早くて助かるよ・・・倒して来いっていうのとは少し異なるかもしれないけどね。さっきの精霊術師の誘拐事件の続きになる」


「続き?裏にいる組織の居場所でもわかったとかですか?」


「いや、居場所はまだわかっていないよ。これからそれを特定するのさ。少しだけ面白くないやり方でね」


支部長が何やら複雑そうな声を出したことで、倉敷は目を細めていた。そして康太は何となく倉敷の師匠を部屋から出した理由について察しがついていた。


「精霊術師を囮にでも使うつもりですか?」


「・・・早い話がそういうことさ。相手の規模がどれほどなのかはわかっていないが、断片的な情報から拠点があることはわかっている。なら釣り餌を使うだけの話さ」


「・・・なるほど、師匠なら怒るでしょうね」


精霊術師を囮に使う。その内容がどのようなものなのか倉敷は予想できたようだ。だがそこまで動揺もしていなければ怒ってもいないように見える。


「君は怒らないのかい?」


「別に怒りませんよ。内容的に綺麗ごとだけじゃ解決できないってことはわかってますから。師匠とかはそういう面倒ごとにかかわったことがないでしょうから綺麗ごとばっかり言うかもしれませんけど」


倉敷の師匠もある程度面倒なことに巻き込まれているだろう。いろいろな経験をしてきているのは間違いないのだろうが倉敷のように直接かかわったりその裏側を見せられて来たりしていない。


綺麗ごとだけで片付くほど今回の件が簡単な問題ではないのは倉敷はよく理解しているようだった。


「そういってくれると助かるよ。正攻法だけで行こうと思ったら何年かかるか分かったもんじゃないからね・・・君たちに餌の回収と、相手の壊滅、捕縛を頼みたかったんだけど・・・ライリーベルが動けないとなると戦力的にはどうなのかな?」


「相手の規模にもよりますね。前みたいな攻略戦だと俺らだけじゃ手が足りません。次は確実に息の根を止めるつもりでやらないと」


僅かに声音が変化したことで、支部長と倉敷はまずいと判断して別の方向に話を進めようとしていた。


康太の精神状態が不安定になっているのは倉敷も支部長も大まかではあるが把握している。いや、不安定にならないほうがおかしいのだ。


そんな状態でもなおこうして普通に対応できている、それは康太の特異性というべきだろうか。


真の怒りを胸の内に秘めた状態。それ以外の時にその怒りを無駄に消費しないようにしているように思える。


僅かにその怒りを見え隠れさせている康太から、話題を逸らせようと倉敷は少し迷いながら話を強引に進める。


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