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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十八話「対話をするもの、行使するもの」

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精霊の王

「きた!あった!これだ間違いない!おっさんっぽい匂いがあったぞ!」


「マジか!お前やるな。一カ月も前のことよくわかったな」


「人が来てないってのが助かった。ここが観光地みたいになってたら間違いなくわからなかった!」


精霊と語らう場ということもあって本当に知る人ぞ知るという人気のない場所だったのは幸運だった。


康太の言うように人が何人も出入りしているような場所ではきっと匂いを見つけることはできなかっただろう。


「だがコータよ、それがこやつの師匠の者である確証はないぞ?そ奴以外にも別の精霊術師が来ている可能性もあるだろうに」


「あー・・・それもそうだな・・・こればっかりは運か・・・でもいいや、とりあえずこの匂いは覚えておく。なんかありそうだし」


「勘か?」


「勘だ。こんな場所に来てる時点でなんかあるだろ」


アリスは文ほど康太の勘を信じてはいないが、康太の勘が小百合のそれと同じように洗練されていっているのはわかる。


今後どのような変化を遂げるのかはともかく、勘の精度や範囲が広がっていく可能性もある。


「とりあえずここに師匠がいないのはわかったし・・・手がかりらしい手がかりも手に入れたし・・・次いくか?」


「まて、私はまだ休むぞ。お前らのような若いものと一緒に行動していては身がもたん。ちょっとは年寄りをいたわれ」


この中で肉体年齢は二番目に若いのに何言ってるんだと康太は思っていたが、神加が再び先ほどの場所に立ったのを見て小さくため息をついてから腰を下ろす。


「少し休もうぜ。嗅覚強化使ったせいでちょっとくらくらするんだ」


「そっか。わかった・・・んじゃ小休憩するか・・・八篠、飲み物くれ」


「はいよ。アリスもいるか?」


「もらおうか・・・それにしても・・・」


神加は先ほどから少し前と同じように手を広げて何かを見つめている。傍から見れば日光浴しているように見えなくもない。だがこの場所とその説明を聞いているからこそ、神加が特別で、異質な存在であるということがよくわかる。


「コータ、今後、ミカを育てていくのであれば、やはり精霊の力は必須になる」


「そうなのか?なんでいきなり」


先ほど神加が風の力を使った時、康太はにおいをかぐのに集中していたため、吹いた風が神加が起こしたものだとは気づいていなかったのである。


その様子を見ていたアリスと倉敷からすれば納得のいく言葉なのだろうが、康太からすれば少し疑問だった。


成長した後、精霊たちが神加の体から出ていく可能性を考えて無属性をベースにしたほうがいいという話もあったはずなのに、アリスはあえて精霊を前提に置いた話をしているのだ。


康太からすれば少し疑問に思うのも無理のない話なのだが、先ほどの光景を見ていればきっと考えも異なるだろう。


「ミカはすでに精霊を使役できている。しかもかなり高度なレベルで」


「神加はもともと精霊を行使できてたんじゃないのか?魔力の引き出しくらいはできるだろ?」


「そうじゃない。精霊に術を使わせることができるんだ。お前たちはまだミカに風の魔術は教えていないだろう?」


「・・・俺は教えてないぞ」


「・・・先ほど起きた風、あれはミカが起こしたものだ」


先ほど吹いた少し強い風を康太も感じ取っていた。だがそれが神加の起こしたものだと知って康太は眉をひそめながら神加の方を向く。


確かに小百合に似たような現象の話は聞いていた。精霊が暴走に近い形で術を発動し神加を守っていたという話を。


確かにそんなこともあるのかもしれないと考えた。精霊たちが神加の身を案じるあまり、無理やりに術式を構成してその身を守るという行動。大量にいる精霊たちが力を合わせればそのくらいはできるかもしれない。


だがそれはあくまで精霊たちが自主的に行うものだ。神加がそれを意図的に操ったとなれば話は大きく変わってくる。


「神加は・・・魔術師よりも精霊術師って言ったほうがいいのかな?」


「・・・あれが精霊術師なものか・・・もっと別なものだ」


魔術師である神加だが、その性質は精霊術師のそれに近いのかもしれない。いや、精霊術師と呼ぶことは正確ではないだろう。


精霊術師は、精霊の力を借りることで術を扱う者のことだ。


だが神加は違う。精霊を使役することで術を扱っている。


似ているが全く違う、根本から違う。その力を借りることとその力を使役することはその意味も、その本質も異なるのだ。


「精霊の王・・・とでもいえばいいのか・・・いや、この場合は精霊の姫というべきか」


精霊の姫。精霊たちを使役できる特異な存在。


神加にとっての精霊がどのような存在なのか、そして一体神加が今後どのようになっていくのか。


楽しみでもあり不安でもある。そんな二つの気持ちが康太たちの中には立ち込めていた。


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