さっさと始めよう
「とりあえず、どっちが魔術師でどっちがお前の連れの精霊術師だ?」
「こっち・・・こいつは俺の昔馴染みだから」
「了解。んじゃとりあえず動けなくしておくか」
そういって康太は適当なタオルを丸めて魔術師の口に放り込み、工具箱から釘と金槌を取り出して魔術師の足にくぎを打ち込んでいく。
その瞬間魔術師はあまりの激痛に意識を取り戻したのか、悲鳴を上げそうになる。だが康太が突っ込んだタオルのせいでまともに声を出すこともできなくなっていた。
「・・・あのさ、さらっと拷問チックなことするのやめてくれないか?」
「動けなくするにはこれが最適だろ。抜けば治療もできるし、腱を切るより優しいと思うけど?」
「康太君、血の跡が残るのでこの場でやるなら下にタオルか何か敷いていただけませんか?ここは一応表の店なので」
「あ、すいません。倉敷、ちょっとこの辺りの血を洗ってくれるか?」
注意すべき点がくぎを打ち込んだことではなく、店の地面に血の跡が残るからやめろというのはどうなのだろうかと、倉敷は頭を抱えながらもとりあえず滴っている血を洗っていく。
そんな中、康太はとりあえず魔術師の足に打ち込んだ釘の部分に乱暴に止血用のタオルを巻きつけていく。
「っていうか倉敷、お前水を操れるだろ?同じように血を操ることはできないのか?」
「あー・・・一応・・・できるはできる・・・なんで?」
「ちょうどいいから流血しないようにしてほしくてさ。こいつにいろいろ吐いてもらうんだけど、一応お前も無関係ではないし」
「・・・やるのか?」
「もちろん・・・あー・・・ただ今は神加がいるしな・・・ここじゃなくて協会に行ったほうがいいか・・・ていうかお前、こんな日中に戦ってよくほかの人に見られなかったな」
「精霊術師として会ってたからな。人目の付かないところにいたんだよ。だからここに連れてくるのに苦労したんじゃないか・・・人目につかないようにするの大変だったんだぞ・・・雨降らしたり霧作ったり・・・」
おそらく山の中や人のいない廃屋などを利用して会っていたのだろう。そんなところを狙われたというあたり運がない。
時間をかければ単独でも雨を降らせたり霧を発生させたりできるようになっているあたり、倉敷がどんどん便利になっていくなと康太は満足そうにうなずいていた。
「んじゃ協会に行く・・・んだけど・・・どうやったもんかな・・・とりあえずそっちの精霊術師起こしてくれよ。そいつも連れていく」
「わかった・・・おい、起きろって」
倉敷は呼びかけながら連れてきていた精霊術師の顔面を強めにひっぱたく。こいつもなかなか慣れてきたなと康太は満面の笑みを浮かべていた。
「・・・ぅ・・・うぅ・・・」
「ダメだな・・・ダメージが大きいみたいだ。起きそうにない」
「ダメか・・・仕方ない、ウィルに頼んで一人は人形にしよう。そっちのやつは・・・どうするかな・・・俺そういうの苦手なんだよなぁ・・・」
「鐘子に力を借りるのはダメか?あいつそういうのできないのか?」
「できないことはないだろうけど、あいつはそういうの専門じゃないからなぁ・・・んー・・・仕方ない。また段ボール輸送するか」
段ボール輸送。それは康太が以前見たことのある人間を段ボールに入れて運ぶという荒業である。
人間そのものを荷物として扱うために、荷物扱いされる側からすれば最悪の乗り心地を提供される方法である。
「でもあれだろ?こっから最寄りの教会ってそれなりに距離あるだろ?大丈夫なのか?」
「・・・それなんだよなぁ・・・車があれば荷台にでも載せておけるんだけど・・・」
「いっそのことタクシーでも使うか?多少怪しまれるかもだけど、風邪ひいてるとか言えば何とかなるんじゃね?」
「面倒くさいな・・・やっぱここでいいんじゃないかな?神加達にはちょっと席を外してもらってさ」
「雑だな扱いが。まぁ何でもいいけど・・・でも勝手に魔術師を拷問していいのかよ?協会に説明とか要らないのか?」
「別に?今までだって協会の許可を得たことなんてないぞ?こんなの個人間のやり取りなんだから。仕掛けてきたほうが悪い」
康太の理論に倉敷としては反論の余地がないのか、頭を抱えてしまっていた。
この魔術師がいったいどこの誰なのか、なぜ精霊術師である倉敷達を襲ったのか、それはわからないが何か理由があるのは明白だ。
倉敷は康太のチームメイトでもある。そんな倉敷が襲われたとあっては、康太としては力を貸すのはやぶさかではなかった。
「仕方ないからここである程度事情聴取して、なんか問題があるようであれば支部に行こう。何事も聞いてみないことには始まらん。そうしてる間にそっちの精霊術師も起きるかもしれないしな」
「・・・わかったよ・・・じゃあ地下行くか」
「おう。姉さん、神加を上に連れてきますから、俺が質問してる間下にはいかないようにお願いできますか?」
「わかりました。ある程度加減してしないとですよ?」
「わかってますって。それじゃ行ってきます」
そういって康太は魔術師の手足を手際よく縛ると足を掴んで引きずっていく。
相変わらず扱いがひどいなと思いながら、倉敷は気絶したままの精霊術師を担いで康太の後についていった。




