龍脈の数
「龍脈・・・ですか・・・?」
「あぁ、西の方・・・四法都連盟、あるいは土御門の家で把握してる龍脈の位置とか、知ってたら教えてほしいと思ってさ」
康太は小百合の訓練の合間に土御門の双子に龍脈についての質問をしていた。
エリートとして教育を受けていた彼らならば、魔術師歴一年程度の康太よりもより多くの情報を有しているのではないかと考えたのである。
「えっと・・・日本のやつしか知らないですけど、それでもいいんですか?それに、俺らが知ってるのって協会も知ってるような有名なのばっかりですよ?」
「そもそも協会が龍脈の位置を把握してるってこと自体知らないんだけど・・・まぁいいや。とりあえず教えてくれ」
土御門の家が把握しているくらいだ、魔術協会が把握していないはずはないのだが、あいにくと康太は協会のつてというと支部長と武器を作っているテータ、そして何人かの魔術師くらいなのだ。
彼らにこんなことを聞くのは違うと思い、土御門の双子にこの話を振ったのである。
「俺が知ってるのは北海道の二カ所、東北に三か所、関東に一か所、中越に二か所、俺らの管轄内に一か所、中国地方に二カ所、四国に一か所、九州に一か所だったと思います」
「あれ?日本ってそんなに龍脈あるのか?」
「龍脈があるっていうか、龍脈の集約点ですね。龍脈は基本、地面の下に、それこそ血管みたいに流れてるんです。それが集まってるポイントが今言った場所ですね」
「ほうほう・・・集まってるとより大きな力を使えると、そういうことか」
「それもありますし、力が集まってるところだとその力をすくい上げやすいっていう風に聞きました。準備もより容易になるとか」
康太は龍脈についてはほとんど知らない。大地の力、星そのものの力という印象しかなく、それ以外の知識はほぼないに等しい。
集まっているところだとか、流れているものだとか言われてもそうなのか以上の感想を抱くことは難しかった。
「でもどうして龍脈のことを?なんかでかい術でもやるんですか?」
「いや、今回の敵がどうやら龍脈を利用していろいろやろうとしてるみたいでな、一応場所だけは押さえておこうかと」
「へぇ・・・でも龍脈の力を使うってなると相当大変ですよ?広くないとまず術式もかけないし、大体でかい龍脈の集約点って都市になってるか、あるいはものすごい山奥かの二択ですもん」
「あぁ、やっぱりそういうのあるんだ。昔の人は龍脈とかそういうの理解してたんだ」
「理解してたかはともかく、何となく力の集まる場所だっていうのはわかってたんじゃないですか?それだけ土地が豊かになるとかあるでしょうし」
康太は歴史にはあまり詳しくはないが、豊かな土地に多くの人が集まるというのは理解できた。
無論それが大きな都市になるかどうかは地形の関係やその時の世情にもよるのだろうが、それも含めて最終的な都市が龍脈に関係しているというのは間違いではないらしい。
「京都なんかは、龍脈の集約点がわかりやすい位置にありますからね。そういう意味でもやっぱり龍脈は使いにくいですよ」
「そうなのか。んー・・・となると大体は海外か・・・この間日本で起きたのは本当に偶然だったのかな?」
「偶然ってことはないと思いますよ?龍脈を探すにしても、別の国じゃなくて日本で探したってことは、それなりの意味があると思います。龍脈はその国や土地によって特色があるらしいですから」
「へぇ・・・魔力の属性みたいな感じ?」
「そこまで極端かはわかりませんけど・・・似たようなもんだと思います。実際、京都とこっちの龍脈では結構違うみたいですし」
康太は何度か京都に足を運んだことがあるが、龍脈の違いなどは感じたことはなかった。
そんなに大きな違いがあるのかは不明だが、おそらく発動術式の向き不向きがあるのではないかと考える。
日本中、それどころか世界中にそんなものを利用した門があるのだから、魔術協会がそれを作るのにどれだけ時間をかけたのか、その苦労がしのばれる。
「ちなみにさ、でかい魔術を発動しようと思ったらやっぱその集約点じゃないと難しいのか?」
「大規模な魔術を発動しようとするなら、さっき言った集約点だけじゃなくても、大きな龍脈を使えばできないことはないと思いますよ?あくまで集約点は力をすくい上げやすいってだけです。でかい川から大量の水をすくい上げるのは簡単でも、小さい川じゃ・・・ってことですよ」
「なるほど、そういうことか・・・でかい龍脈・・・やっぱり今の都市とかに影響があるのかな?」
「どうでしょう・・・大きな龍脈だからってその上に常に都市があるわけじゃないですから。というか、小さい龍脈ならともかく、でかい龍脈なら協会もある程度は把握してると思いますけど・・・」
協会がどの程度龍脈の位置を把握しているのかはわからない。支部長の話を聞く限り、現地の人間に聞くのが一番だといっていた。
おそらく大きな龍脈そのものも完全には把握できていないのではないかと考えていた。
そして晴が言った日本でそれを行ったのは偶然ではないという言葉に、康太は少しだけ考えを巡らせていた。
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