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ポンコツ魔術師の凶運  作者: 池金啓太
二十八話「対話をするもの、行使するもの」

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ブライト

「なるほど、あのままでは勝てんと判断したか・・・それだけの考えを持てるように変化したか・・・フミのおかげか・・・それとも別の何かか・・・?」


切っ掛けは文だ。文が来たことで康太の戦いは明らかに変化していた。


先ほどまでは縦横無尽に駆け回り、とにかく敵役の小百合に襲い掛かるという印象が強かったが、今の康太は常に文と小百合の間に入り続けている。攻撃はさせないとでもいうかのように相手に攻撃の隙を作らないことを念頭に置いた攻撃。力任せではなく、速度を優先した攻撃に移行しているようだった。


だがそれでもやはり、普段の康太の動きとは違う。隙も多く無駄も多い。そんな無駄を小百合に軽々と突かれそのたびに康太の体が後退する。


「まだだな、康太、このままではまた死ぬぞ。お前が弱いせいで、また誰かが死ぬ。今回はお前の後ろにいるやつかもな」


小百合はあえて、康太のせいで死ぬという言葉を口にした。


幸彦の死は康太のせいではないと小百合自身で言った言葉を覆し、康太を追い込むためにわざと口にした。そんなことは欠片も思っていないとしても。


小百合の言葉に反応したのか、康太はより一層強く小百合に向かって行く。


攻撃をするたび、反撃を受けるたび、康太の動きは徐々に変わっていった。


無駄な動きを少しずつ省く、生まれる隙を少しでも減らす。それは自分の動きを思い出していくかのように、少しずつ最適化されていく。


「フミは相変わらず良い仕事をするの。良い変化だ」


「私ここに来ただけなんだけど・・・でも、あの電撃弱いわよね?」


「そうだな、サユリが何度も拳を打ち付けてもほんのわずかな火傷程度しかできていなかった。相手の動きを止めるには少々弱い。多少ビリっとくる程度だの」


康太が求めたそれとは少し違うが、近接戦闘における電撃というのはもともと康太が習得したいと考えていたそれに近い。


威力がないのが何とも情けないところだが、それは精霊の力が完全に発揮されていないからだろうとアリスは言う。


これから、徐々に精霊は康太に最適化されていき、よりその力を効率よく使えるようになっていくという話だ。


「そう言えば、あの状態で電撃を撃つとどうなるのかしら」


「ん、それは試したことがなかったな・・・コータに対してわざと攻撃するわけにもいかんかったからの」


「・・・ちょっとやってみようかしら・・・小百合さん!ちょっと康太に攻撃してみるんで、離れてくれませんか?」


「なんだ、実験か?」


「そうです。弱い電撃で康太を攻撃してみます」


文は電撃を作り出すと、戦っている康太めがけて放つ。普段の康太ならば電撃を受けたところで問題なく動ける。


いや、体の動きは制限されるのだが魔術を行使することで強引に動くことができるといったほうが正しいだろう。


今の康太がどのような反応をするのか、文は少し楽しみだった。


だが、その反応は全くなかった。


康太に電撃が直撃するも、康太が纏っている電撃が文の電撃を吸収し大きくなっていく。纏うのではなく、覆うといったほうが正しいほどに、康太の体の周りにある電撃は強く、大きくなっていた。


「おっと、これは予想外・・・電撃を取り込んだか・・・あの状態では、電撃はほぼ無効化されると思っていいのかもしれんの」


「限度があると思うわよ?小百合さん!このまま康太に電撃を浴びせ続けますんで、うまく回避してくださいね」


「簡単に言ってくれるな・・・」


電撃が強くなった分、大きく回避しなければいけないが、それでも小百合ならば無理ということはない。


小百合は康太の攻撃を回避しながら、文の電撃の攻撃範囲に入らないように注意していた。


文が再び電撃を康太に浴びせていくと、どんどんその電撃は強くなっていく。そして、徐々にその形を変えていた。



「・・・これは・・・」


「・・・ふむ・・・面白い」


康太を覆う電撃は、不完全ではあるがその背中で翼のようなものを形成しつつあった。


康太が中に入れている精霊は、鳥の姿をしていた。まるでその姿を作ろうとしているかのような光景に、アリスも興味深そうに康太の方を見ている。


「アリス、あれってどういうこと?」


「さぁな。私も初めての事象だから何とも言えん。だがコータの体の中にいる精霊の作用であることは明白だ。強すぎる電撃を扱うのに、自分の体に適した形をとることで何とか抑え込もうとしているのか、はたまた自然とその形をとったのか・・・」


アリスは何やらいろいろと考えながら、目の前で起きている事象がいったい何なのかを理解しようとしていた。


その表情はまさに研究者そのものとでもいうべきか、わけのわからない事象に対して、理解しようとする魔術師の目だった。


電撃によって光輝く康太の姿に、小百合は目を細めながらため息をついていた。


ブライトビー。確かに小百合はその名を康太に与えた。ブルービーという幸運を運ぶ蜂。その真逆という意味でブライトイエローの蜂という意味を込めてブライトビーと名付けたつもりだった。


ブライトの本来の意味は『輝く』だ。目の前にいる、電撃によって輝きを放つ康太の姿に、自分のつけた名がまさかその通りになるとは思っておらず、小百合は苦笑してしまっていた。


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